友達
「うわあああーんっ!いいお話でしたねぇ王子ぃ」
芝居が閉幕し、眼の下に涙をいっぱいに貯めながら、アイシャはそこでようやく気付いた。
「っていねえしいいいいいいいいいいいいい!!!」
いつのまにやら、王子がいない。こんな時まで抜け出しやがったあのクソ王子。
周囲で警備についていた衛兵たちも大慌てだ。公演中、誰も気づかなかったとは……。
「ほほ、少し前に出て行ったぞい。守り役のくせにかぶりつきで見すぎじゃ」
「ラモス将軍!気づいていたんですか」
「いやはや、足音を消し周りの呼吸を読んで抜け出すあの技術。みるみるうちに腕を上げるもんじゃ」
「いやそれコソ泥のスキル!褒めないで下さい!ああ、もう最近大人しいと思ったら……王子ぃいいいい!!」
王子を探し出すため、大締めの儀礼のため、周りがバタバタと駆け回る中、ラモスはぽつんと窓際に寄りかかる。
恐らく、上階のこの位置からしか見えないスポットだ。
窓の向こうには、演劇などよりずっと面白い見世物が行われようとしている。
あの二人がガチで闘り合えば、子供の喧嘩では済まないだろう。
*
「っッ!?」
ローランの一瞬の踏み込み、間合いはつぶされ、ディムルは顔面を思い切り殴り潰される。
歯が何本も折られ、口の中に血が溢れ、息ができない。息ができない息ができない息ができないっ…………!!
「……ぶうううううううっ!!!」
血を吐き出し、せめて目つぶしを狙う。
しかし視界をふさがれながらもローランは俺の肘をつかみよせて……
「ふんっ!」
躊躇なく腕をへし折った。
「うあああああああああああああああああああああああああああああ『エルヒーリング!!』『エルヒーリング!!』『エルヒーリング!!』…ぶっ!!?」
みぞおちに蹴りが叩き込まれうずくまる。
(またっ、息ができないっ……)
けどっ……
「っッ!?」
地にこすりつく俺の頭を全力で蹴り飛ばすローラン。
しかし、ダメージを受けたのは彼の方だった。
骨にひびくらいは入ったか?
足の甲から血がにじむ。
肉体硬化魔法『メタルス』
「どうだ?石頭だろう?」
すんなり立ち上がった俺はにっと笑う。
「治癒魔法であっという間に全快かよ。ゾンビかてめえは……」
しかし、彼はひるまない。
痛めた足なんてなんでもないことかのように突っ込んでくる。
そこを……
「……『インパクト!!』」
叫ぶと同時に殴りつける。
0距離からの魔法。
カウンター気味にめり込む拳。
肩まで響くその衝撃は、確かな手ごたえを感じる。
しかし、それでもまだ彼は……
「ぶるああああああああああああああああああああ!!!」
力の限り暴れ狂う。
「………おいおいおいおい、あれを喰らってもまだ泣かないか…!!……いや、わかってる。君がそういうやつだって。いじっぱりで強情で見栄っ張りで、弱いところなんて一つも見せようとしない。君はそれでいい。そんな君を責任もって泣かせてみせる。……俺たちは、友達だからっ!!!!」




