錬金土偶VS神造要塞 ③ ――敵が合体するなら
「ブソウ、フルオープン、ジダン、スタンバイ」
頭上の王は要塞タイプよりも言葉を話せるようで、指示を飛ばす。
再度あの全方位攻撃を行おうとしていた。
今度は、錬金土偶も、クリスティーナら坑夫らも範囲に収めるつもりだろう。
「や、やっぱり何度も撃てるんですね……! な、なにか手を考えないと!」
「私はみんなを守るのに動けないし……動いたところで、攻撃が通じにくいんじゃあ……くーっ! 王級だけならワンパンできそうなんだけどなーっ!」
「も、もうお終いだ……世界は……人類は、神によって滅ぼされるんだ!」
打つ手なしの状況に追い込まれたジーノパーティ。
少女たちは戦う意思を見せていたが、ヴィリヤミら坑夫たちは、絶望に暮れていた。
「王どころか、兵士級一体だけでも、土偶より上の性能か」
性能差を語る、土偶の上のジーノ。
勝つ手段はもうないのだろうか。
そうこうしている間にも、要塞の上に立つ王が、最後通牒を下す。
「オワリダ、ニンゲン。ドグウデ、ワレラハ、トメラレナイ」
「そうだな、ただの土偶では、望み薄だ」
ジーノは、あきらめたのか。
片腕を盾にまでした土偶の快進撃は、ここで終わりを告げるのか。
――次の瞬間、ジーノは否定するように、無色のオーラを全開させる。
そして、こう言った。
「だから少々、『改造』させてもらう」
あきらめの言葉には、続きがあったのだ。
『改造』をするという、戦いの意思が。
「ムダダ、ホロビロ」
要塞の全身が赤く光り、王の目すらも赤く光る。
奇怪な音が駆け巡り、世界の終わりが告げられる。
「お前は何もかもが遅い。その魔法も同じ。大きな『欠陥』だ」
敵の攻撃には長いチャージ時間が存在していた。
ジーノは相手の欠陥を指摘し、土偶の目から魔法を発射する。
それは、土偶に残された最後の武装だ。
「ヌッ、ワレヲ、ネラッテ――」
土偶の魔法は頭上の王を狙ったもの。
王は自身の魔法で相殺するが――それが一瞬の隙となった。
ジーノが駆る錬金土偶が、一気に距離を詰める。
「もう一つ欠陥がある。結局弱点は、どのタイプも同じ、魔動コアということだ!」
「ナンダ――ソノミチノスガタハ!?」
そして距離を詰めた土偶の姿が、みるみる変化する。
盾となっていた片腕が、らせん状の物体へと変化する。
「独自製品・螺旋水晶――掘削に最適な道具だ」
それは後の世に、『ドリル』として知られる道具だった。
「な、なんかぐるぐるしてとんがったのが回ってますーっ!?」
「へ、変形だーっ!?」
ジーノは錬金土偶の片腕を、敵の砕けた魔水晶を利用した、魔水晶製の巨大なドリルに改造したのである。
ドリルの動力は、魔動コアだ。
相手の『合体』への対抗手段――それは、『変形』だった。
紫色に透ける要塞級の肌は、赤く巨大な魔動コアををよく透かす。
錬金土偶は、透けた魔水晶の先にある、要塞級の魔動コア目掛けて掘削していく。
「オノレ! フジュウブンデ、カマワン! ウテルモノカラ、ウテ!」
頭上の王は臨機応変に指示を飛ばす。
不十分なのは威力だけでなく、奇怪な音にも現れるのか、途切れたような音とともに、魔法の光線が次々射出される。
「くぅっ! やたらめったら撃ち込んで!」
「魔法・ウインド! ――細い魔法光線なら、私の魔法でもギリそらせます! お手伝いしますクリスティーナさん!」
「ありがとリリィちゃん!」
要塞は絶え間なく光りを放ち続ける。
青の空の下に瞬く、美しき赤の光。
その全てが、破壊の意思が込められた魔法光線だ。
「ぜ、全然、要塞の魔法が止まらないですっ!」
「ぐぎぎ、これじゃ動けな――っ、ご主人さま!?」
威力こそ低いものの、防ぐ手を止めたら、坑夫に被害が出てしまう。
釘付けにされたクリスティーナとリリィ。
そのとき、一発の光線が土偶上のジーノに直撃したのを、クリスティーナは見て叫んでいた。
ジーノは――
「もう少しだ錬金土偶、削り切れ!」
直撃しようが、土偶の手を止めることはしなかったのだろう。
額からさらなる出血をしながらも、ジーノはただひたすらに、魔動コアだけを狙って、戦っていた。
「コウゲキヲ、ヤツニ、シュウチュウサセロ!」
「くっ――いけっ!」
赤の光線にさらされながらも、ジーノは叫ぶ。
『ガキン』と、一際大きな破砕音が、辺り一帯に響いた。
「い、今の音はですっ!?」
「要塞のコアに届いた音! ――いけーっ、ご主人さまー!!」
「勝負ありだ、神の兵器!」
攻撃にぼろぼろになったのは、ジーノだけでなく錬金土偶もだった。
全身の各所から黒煙を上げて、限界を迎えた錬金土偶は目の輝きも失い、ドリルも止まる。
ジーノはその瞬間、土偶から手を引き抜き、『パージ』していた。
「むほおおおお! 要塞級の魔動コア、いっただきぃぃぃぃ!」
ジーノの無色のオーラが、敵の巨大なコアを掴むと――
バカ力で、要塞から引き剥がした。
「バカナ、サイキョウノヘイキガ――」
コアを失った要塞は、坑夫やクリスティーナのほうでなく、無人の山側へ崩れ落ちる。
融合していた兵士級全てが巻き添えになって、砕けた。
もちろんジーノは持ち前の身軽さで、そうなる前に離脱していた。
「カクナルウエは、コノ、オウミズカラ――」
頭部分と合体していた王も、どうにか離脱していた。
足掻きを見せようとするが――
「へへーん、名誉名誉っと!」
「キ、キサマハ、ヤツノナカマ――ゴハァァァッ!?」
名誉大好き少女・クリスティーナが、すでに目の前に立ち塞がっていた。
そして弱点なんか無視のワンパンで、巨大な王級をバラバラに滅殺するのであった。
「お、お、終わった……? 俺たちは、助かった、のか……!?」
「はい! やっぱりジーノさんは、スゴかったです!」
世界の終わりを目にした人々は――
無職の錬金術師と、その仲間たちによって、奇跡の生還を果たすのだった。




