お手伝い級
「いやーさすがですなぁジーノさん、いや、ジーノ神さま! あのモンスターを倒すだけでなく、こんなデカイ仕事までもたらしてくれるとは!」
揉み手で嬉しそうに言うのは、ドワーフのヴィリヤミだった。
それを見たクリスティーナとリリィは言う。
「これ手のひら返しってやつだ。ついたばかりのころとは全然反応が違うね!」
「そしていつの間にか私はリーダー扱いされなくなってます……」
「俺は神さまじゃなくて、無職の錬金術師なんだが」
一番まともそうだったリリィではなく、汚らしい格好だが、もっとも活躍したジーノとばかり話を進めるヴィリヤミ。
ジーノは最後に自分の肩書きを訂正するが、ヴィリヤミに聞こえているかどうか。
とにもかくにも、神造シリーズとの戦いは幕を閉じた。
魔法による火も消化し、奇跡的に大きな怪我人も出なかった。
鉱山は崩れたところもあるが、代わりに魔水晶の肌を持つ要塞級がある。
大量の魔水晶を削り出す仕事が増えたことに、ヴィリヤミは感謝を述べるくらいだった。
「そしてジーノさんも、しれっと怪我完治してますね」
「ポーションで回復した。採取活動ではよくあることだ」
ジーノの怪我も、自身で治しきっているのだった。
そんなジーノの生態に、慣れつつあるリリィなのであった。
「会議場や他の施設まで直してもらって悪いな! おまけに――」
「ゴメイレイヲドウゾ、ゴジュジンサマ」
「こんな、神造坑夫まで受け取っちまって」
「正しくは、『錬金坑夫』だがな」
ヴィリヤミの隣には、土の肌を持つ、子供サイズの人形が指示を待っていた。
そう、それは、ジーノが造った神造ならぬ、錬金坑夫なのである。
「単純作業を命じるくらいなら、俺でも造れた。『お手伝い級』として、荷物運びでもなんでも、そっちで好きに使ってくれ」
「この子、元々はご主人さまが乗ってた錬金土偶なんだよね? ずいぶんちっちゃくなっちゃったね~」
「あの戦いで土偶のコアは三つに割れてしまったからな。試しに造った程度だったが……大事にしてやってくれ」
その錬金坑夫は、元々は土偶だった。
情でも感じたのだろうか、ジーノは別の命を与えてやったのである。
「試しでこんなの造っちゃうなんて、ジーノさんスゴイ……」
「それでご主人さま、要塞級の魔動コアはどうすんの?」
「まぁ……考えてみたら、こんなデカイの持ち歩けないしなぁ。いろいろ調べられて満足もしたし、崩すか、封印だろうな」
「もったいないけど……」と、ジーノは名残惜しそうに言う。
要塞級のコアは、ジーノが引き抜いたので無事だった。
会議場をそのまま縦長にしたような巨大さで、今もまだ、かすかに赤く光りを放っていた。
「封印ってことは、この辺に封印するってこったよな? だ、大丈夫なのかい、ジーノ神さま」
「ジーノ、な。――大丈夫だ、俺の腕を信じろ」
ジーノの発言なら信じるに足りると、ヴィリヤミはほっとしていた。
「不安なら崩してしまっても構わない。資金になるかは分からないがな」
「ま、そっちについては仲間と話し合って決めるさ。ジーノ神さまにばかり手間かけさせちゃ悪いからな」
「無職の錬金術師のジーノ、な」と、ジーノのことを頑なに神さまと言い続けるヴィリヤミに、おっさんはツッコみを入れるのであった。
「これで、大体の事後処理は済んだね。あとは――」
「はい……ネイトさんの無事の確認が、まだ……」
要塞級が目覚めた直後、会議場は攻撃され、消し飛んだ。
あれから姿を見ないネイトは、そこにまだいた可能性があったのだ。
「S級冒険者ってのは、冒険者の中で最高ランクなんだろう? なら、ネイト君も無事なんじゃないか?」
「うーんでも、ねちねちネイトって、S級の割りにあんまり強そうには――」
そうやってネイトの話題を出していたとき、「ネイトって、もしかして金鎧の男かい?」と、近くを通りかかった坑夫が話に入ってきた。
男が話を続ける。
「そいつなら、会議場を出て行くところを見たぜ? 確か襲撃前で……そうそう、王都方面に歩いて行くのを見た」
「ま、マジですか! は~、それなら良かったですーっ!」
「あんなにいびられてたのに、さすがリリィちゃん! 優しいなぁ」
「だって木っ端微塵に砕け散ってたら、遺体集めるの大変じゃないですか!」
「そして黒いな」
珍しくジーノがツッコみに回ることが多くなるのであった。
クリスティーナが、もう一つ続ける。
「リリィちゃんの鞄も無事だったし、私たちの被害は皆無だったね!」
「え、と……そ、そうですね」
「なんだリリィ、なにかなくなっていたのか?」
リリィは、口元に手を当てて、ジーノとクリスティーナだけに聞こえるように耳打ちする。
「私の小説だけ、吹っ飛んでました……」
「ええーっ!? 鞄無事だったのに、どうして!?」
「そんなことあるか?」
「あるみたいです……鞄から消えてました……」
耳打ちをやめたリリィは、悲しそうな表情をしていた。
よりにもよって、一番大切なものがなくなっていたのである。
「まぁ急いでないし、出発する前に辺りを探すか。いいよな、クリスティーナ」
「もちろんだよご主人さま! うおおお探すぞー! 技術・邪竜解放!」
「ふわわわーっ! わ、私なんかのためにそこまでしなくてもーっ!?」
常に全力全開のクリスティーナは、奥の手の技術まで使って探す。
ジーノも、無色のオーラを表出させて、地面を抉ったりして探してくれていた。
やがてその行動を見たヴィリヤミや坑夫らも、仕事の手を止めて、彼女の宝を探し始めるのだった。
「み、みなさん、私なんかのために……ありがとうございます!」
リリィはうるっとしながらも、一つお辞儀をして、自分も探し始める。
ジーノとクリスティーナの背を見て、誰にも聞こえない声で、ぽつりと呟いた。
「やっぱり私……ジーノさんとクリスティーナさんと一緒に、旅がしたいで――」
「ところでジーノ神さま、いったいなにを探してるんだい?」
「ああ、彼女の小説――」
「うわわああーっ! それは言わないでくださいーっ!
「宝探しですっ!」と、恥ずかしがり屋なリリィは、自分の趣味と一緒に、その気持ちも隠してしまうのであった。




