↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/57

お手伝い級

「いやーさすがですなぁジーノさん、いや、ジーノ(しん)さま! あのモンスターを倒すだけでなく、こんなデカイ仕事までもたらしてくれるとは!」


 揉み手で嬉しそうに言うのは、ドワーフのヴィリヤミだった。

 それを見たクリスティーナとリリィは言う。


「これ手のひら返しってやつだ。ついたばかりのころとは全然反応が違うね!」

「そしていつの間にか私はリーダー扱いされなくなってます……」

「俺は神さまじゃなくて、無職の錬金術師なんだが」


 一番まともそうだったリリィではなく、汚らしい格好だが、もっとも活躍したジーノとばかり話を進めるヴィリヤミ。

 ジーノは最後に自分の肩書きを訂正するが、ヴィリヤミに聞こえているかどうか。


 とにもかくにも、神造シリーズとの戦いは幕を閉じた。

 魔法による火も消化し、奇跡的に大きな怪我人も出なかった。

 鉱山は崩れたところもあるが、代わりに魔水晶の肌を持つ要塞級がある。

 大量の魔水晶を削り出す仕事が増えたことに、ヴィリヤミは感謝を述べるくらいだった。


「そしてジーノさんも、しれっと怪我完治してますね」

「ポーションで回復した。採取活動ではよくあることだ」


 ジーノの怪我も、自身で治しきっているのだった。

 そんなジーノの生態に、慣れつつあるリリィなのであった。


「会議場や他の施設まで直してもらって悪いな! おまけに――」

「ゴメイレイ(命令)ヲドウゾ、ゴジュジン(主人)サマ」

「こんな、神造坑夫(・・)まで受け取っちまって」

「正しくは、『錬金坑夫』だがな」


 ヴィリヤミの隣には、土の肌を持つ、子供サイズの人形が指示を待っていた。

 そう、それは、ジーノが造った神造ならぬ、錬金坑夫なのである。


「単純作業を命じるくらいなら、俺でも造れた。『お手伝い級』として、荷物運びでもなんでも、そっちで好きに使ってくれ」

「この子、元々はご主人さまが乗ってた錬金土偶なんだよね? ずいぶんちっちゃくなっちゃったね~」

「あの戦いで土偶のコアは三つに割れてしまったからな。試しに造った程度だったが……大事にしてやってくれ」


 その錬金坑夫は、元々は土偶だった。

 情でも感じたのだろうか、ジーノは別の命を与えてやったのである。


「試しでこんなの造っちゃうなんて、ジーノさんスゴイ……」

「それでご主人さま、要塞級(こっち)の魔動コアはどうすんの?」

「まぁ……考えてみたら、こんなデカイの持ち歩けないしなぁ。いろいろ調べられて満足もしたし、崩すか、封印だろうな」


「もったいないけど……」と、ジーノは名残惜しそうに言う。


 要塞級のコアは、ジーノが引き抜いたので無事だった。

 会議場をそのまま縦長にしたような巨大さで、今もまだ、かすかに赤く光りを放っていた。


「封印ってことは、この辺に封印するってこったよな? だ、大丈夫なのかい、ジーノ(しん)さま」

「ジーノ、な。――大丈夫だ、俺の腕を信じろ」


 ジーノ()の発言なら信じるに足りると、ヴィリヤミはほっとしていた。


「不安なら崩してしまっても構わない。資金になるかは分からないがな」

「ま、そっちについては仲間と話し合って決めるさ。ジーノ神さまにばかり手間かけさせちゃ悪いからな」


「無職の錬金術師のジーノ、な」と、ジーノのことを頑なに神さまと言い続けるヴィリヤミに、おっさんはツッコみを入れるのであった。


「これで、大体の事後処理は済んだね。あとは――」

「はい……ネイトさんの無事の確認が、まだ……」


 要塞級が目覚めた直後、会議場は攻撃され、消し飛んだ。

 あれから姿を見ないネイトは、そこにまだいた可能性があったのだ。


「S級冒険者ってのは、冒険者の中で最高ランクなんだろう? なら、ネイト君も無事なんじゃないか?」

「うーんでも、ねちねちネイトって、S級の割りにあんまり強そうには――」


 そうやってネイトの話題を出していたとき、「ネイトって、もしかして金鎧の男かい?」と、近くを通りかかった坑夫が話に入ってきた。

 男が話を続ける。


「そいつなら、会議場を出て行くところを見たぜ? 確か襲撃前で……そうそう、王都方面に歩いて行くのを見た」

「ま、マジですか! は~、それなら良かったですーっ!」

「あんなにいびられてたのに、さすがリリィちゃん! 優しいなぁ」

「だって木っ端微塵に砕け散ってたら、遺体集めるの大変じゃないですか!」

「そして黒いな」


 珍しくジーノがツッコみに回ることが多くなるのであった。

 クリスティーナが、もう一つ続ける。


「リリィちゃんの鞄も無事だったし、私たちの被害は皆無だったね!」

「え、と……そ、そうですね」

「なんだリリィ、なにかなくなっていたのか?」


 リリィは、口元に手を当てて、ジーノとクリスティーナだけに聞こえるように耳打ちする。


「私の小説だけ、吹っ飛んでました……」

「ええーっ!? 鞄無事だったのに、どうして!?」

「そんなことあるか?」

「あるみたいです……鞄から消えてました……」


 耳打ちをやめたリリィは、悲しそうな表情をしていた。

 よりにもよって、一番大切なものがなくなっていたのである。


「まぁ急いでないし、出発する前に辺りを探すか。いいよな、クリスティーナ」

「もちろんだよご主人さま! うおおお探すぞー! 技術(スキル)邪竜解放(バハムート)!」

「ふわわわーっ! わ、私なんかのためにそこまでしなくてもーっ!?」


 常に全力全開のクリスティーナは、奥の手の技術(スキル)まで使って探す。

 ジーノも、無色のオーラを表出させて、地面を抉ったりして探してくれていた。

 やがてその行動を見たヴィリヤミや坑夫らも、仕事の手を止めて、彼女の宝を探し始めるのだった。


「み、みなさん、私なんかのために……ありがとうございます!」


 リリィはうるっとしながらも、一つお辞儀をして、自分も探し始める。

 ジーノとクリスティーナの背を見て、誰にも聞こえない声で、ぽつりと呟いた。


「やっぱり私……ジーノさんとクリスティーナさんと一緒に、旅がしたいで――」

「ところでジーノ神さま、いったいなにを探してるんだい?」

「ああ、彼女の小説――」

「うわわああーっ! それは言わないでくださいーっ!


「宝探しですっ!」と、恥ずかしがり屋なリリィは、自分の趣味と一緒に、その気持ちも隠してしまうのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。