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錬金土偶VS神造要塞 ② ――神にあらがう無職

 山と大木のぶつかり合いは、周囲の大地を激しく揺らす。

 土の肌と魔水晶の肌がぶつかり合うたび、音が波動となって辺りを駆け抜けた。


テキ()カンチ(感知)デキ(出来)ズ」

「それだけ大きいと、懐に入られたら対処できないだろ」


 要塞の懐に入り込んでいた錬金土偶。

 要塞が鈍重な動きで、一つの動作をするあいだ、錬金土偶は握った拳を三度、その腹に見舞う。

 要塞だけでなく、錬金土偶のほうも肌は削れるが、こちらが与えたダメージのほうが上だった。


「さすがはご主人さま! 大きさは負けてるけど、機動力ではこっちが圧倒してる――この調子でダメージを与え続ければ!」

「す、すごい衝撃波が……! 土偶の頭でむき出しのジーノさんは、どうして無事なんですかーっ!?」 


 機敏な動きといっても、あくまで巨体の土偶にしてはといった、鈍重な動きではあるが。

 固められた土と鉱物のぶつかり合いで、火花も散っているが、ジーノも無事。

 魔法光線が腕をかすめた出血だけが、唯一の傷だ。


 要塞は、真下に光線を放つことができず、同じように拳を振るって抵抗していたが――


テキ()ハッケン(発見)ブソウ(武装)ヲ、コブシ()ニ、()()エル」

「大振りの右フック。誰でも見切れる攻撃だ」


 ジーノが操る錬金土偶は、容易にかわしてみせた。

 凄まじい風圧にさらされながらも、土偶は反撃、またも大きなダメージを与える。

 体が削れる音が、悲鳴にも聞こえるのだった。


 そのとき――要塞がジーノに向かって倒れ込んできた。


「コノママ、ツブ()ス」

「こいつ、倒れ込んで――!」


 要塞は両腕までも使って、懐の土偶を押し潰そうとしてきたのだ。

 相手より機敏とはいえ、所詮は土偶。懐から逃げるのは間に合わない。

 ジーノは無色のオーラを一層に勢いづかせると、フルパワーで敵の両腕を掴んで、こらえてみせた。

 

「力比べ! ど、土偶で要塞のパワーに勝てるの!?」

「しかも、相手は全体重をかけてます!」


 力比べの体勢となる土偶と要塞。

 さらに要塞は、よけられない状態の土偶に向けて、魔法光線まで放ってきた。


ツブ()ス、ツブ()ス――!」

「この、負けるか!」


 真下には撃てない光線は、土偶には当たらない。

 が、ジーノをかすめる距離には放てる。


「底力を見せろ、錬金土偶!!」

()サレテ――!?」


 一筋の血が額から流れるなか、ジーノは無色のオーラを、限界を越えて放出させる。


「っ! 体勢が傾いて……!」

「敵が、押されていきます!!」


 押し潰されるギリギリのところで、錬金土偶が腕を伸ばし始める。

 少しずつ体勢を立て直していき、やがて――


 要塞を押し返してみせた。


 要塞はその山のような巨体を立て直すことはできず、押し返された勢いのまま、鉱山だった山に体を預けるように、倒れるのだった。


「やたーっ! あの巨体じゃ立ち上がることはできない、ご主人さまの勝ちだーっ!」

「で、ですね! はぁ~良かったです、坑夫のみなさんも無事ですし……」


 勝ちを確信したクリスティーナは変身を解き、リリィもほっと胸を撫で下ろす。

 そして、ジーノが戦う姿を初めて見たリリィは、こう呟く。


「やっぱりジーノさんもスゴイんだなぁ……」


 有り得ない光景を見た一同は、各々の感想を抱いていた。

 皆が勝利を確信するなかで――


 それは起こった。


「――えっ、地震!?」

「す、すごい揺れですっ! 山が崩れた影響でしょうか、要塞が目覚めたときよりかは小規模ですがっ――」


 地震だ。

 それはまるで、要塞が目覚めた時と同じような。

 瞬間、奇怪な高音が――魔法光線が発射される音が周囲に響く。


 いくつも、同時にだ。


「クリスティーナ、全力で防げ! この鉱山には、まだ別の神造シリーズが――!」


 一番から七番まで、全ての坑道から光線が放たれた。

 まるで差し込む日差しのように、乱れ舞う赤き魔法の光。

 ジーノはそれを――


独自製品(オリジナルアイテム)・土偶(シールド)!」


 なんと、土偶の拳を盾に変えて防ぎきっていた。

 威力はさほど大したことがないようで、光線は盾に弾かれる。

 黒煙がいくつか、盾の表面でくすぶっていた。


「でぇぇいっ! ――大丈夫、要塞に比べれば全然軽い!」

「た、助かりましたクリスティーナさんっ! ジーノさんは!?」


 クリスティーナの変身(バハムート)は間に合わなかったが、彼女もその全てを軽く弾き返していた。

 少なくとも、放たれた光線は要塞級ではなかったようだ。

 一同は、勝者だったはずのジーノに視線を向ける。


「俺も錬金土偶も問題ないが――要塞(あちら)側にトラブル発生だ」


 そしてそのジーノが視線を送る先には、立ち上がっていた要塞級と。

 王冠のようなものを被っている別の神造人形――


「王級に兵士級か。どうやらこの鉱山は――」


 さらに各部位には、まるで要塞の防備を固める兵隊かのように、別種の神造シリーズが乗り込んで、守りについていた。


「魔動コアの宝庫だったらしい」

「い、いっぱい神造モンスターが、要塞に乗り込んでますーっ!?」

「が、合体だーっ!?」


 エルナント鉱山に眠る遺跡。

 それは、神々の兵器だったのである。


 兵士級も体は大きい方で、乗り込むというより、同化していると言ったほうがいいだろう。

 そして要塞の頭に乗るのは、王冠をかぶった王級だ。

 王だけあって土偶よりも体が大きいわけだが、それが要塞と完全に合体している。

 胴の半分くらいが要塞の頭頂部と合体し、王の足はなくなっていた。


ワレ()ラガ、ヨウサイ(要塞)ヲ、シンリャク(侵略)セシ、ムホウ(無法)モノ()ニ、サバ()キヲ」


 王級は手に杖を持ち、要塞各部と合体した兵士に指示を飛ばした。


ブソウ(武装)、フルオープン」


 奇怪な音が辺りを駆け巡る。


「先ほどの一斉魔法は、威力的に王や兵士が単体で放ったものだ。だが、これは――」

「よ、要塞の至るところが、赤く光って――」

「まっずい気がするっ! 技術(スキル)邪竜解放(バハムート)!」


 放つ間際は、美しい赤光に包まれた幻想的な光景。

 だがそれは、紛れもなく破壊の意思が込められた魔法である。

 要塞級から、三六〇度、角度も対象も問わずに魔法が放たれた。

 

「くっ! 今のはこっち飛んでこなかったけど――あいつ、世界でも壊すつもり!?」

「あ、あわわわわ……あ、あんなのに、勝てるんですかーっ!?」


 今のは挨拶とでもいうのか。ジーノも含めて全員対象に含まれていなかった。

 要塞が、王が。錬金土偶に目を向ける。

 要塞を攻め落とさんとする危険因子に狙いを定める。

 

「それはそうか。要塞には指揮官に、兵士がいて当然。そしてそれらがいて初めて、真価を発揮すると」


 腕から額から、血を流すジーノ。

 形勢は一気に逆転した。

 誰もが危機を感じるなか、ジーノは言う。


「俺は今、興奮している」


 そして、少しだけ無表情な顔が揺れた。


「魔動コアを、一度にこんなにもお目にかかったんだからな」


 それは、喜びの感情だった。

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