錬金土偶VS神造要塞 ① ――歴然の性能差
土の肌を持ち、木よりも高いところに頭を持つ神造――いや、錬金土偶。
対する神造要塞は、山にも迫る巨大さで、太陽は覆い隠されている。
あちらは一つ手足を動かすだけで、地面は大きく揺さぶられていた。
「体格差は、こっちの倍どころじゃないな」
S級相当のモンスターとはいえ、こちらは所詮土偶だ。
神造シリーズには王、城、要塞とあり、相手はその最上級である要塞級。
性能差は歴然だろう。
「だ、大丈夫なんでしょうかっ。神造土偶はモンスターで、人間に対して攻撃的なはずです。最悪敵が増えるだけになるかも……!」
「うーん、見た感じ、あんまり大丈夫じゃなさそうっ……!」
坑夫たちを残らず回収し終えたリリィとクリスティーナは、土偶のてっぺん。頭にいるジーノを見る。
彼は膝立ちの状態で、土偶の頭に手を埋めている。
きっとそれで、土偶を操縦しているのだ。
「さすがにこんなことは初めてだ、なかなか難しいな。生命体でもなければ意思があるわけでもないから、コイツが抵抗をしているわけじゃないんだが」
「生きたままの生き物を素材にはしない」とは、かつてジーノが真祖戦で語ったこと。
〝人の道を外れる〟ことはしない彼は、このモンスターが生物でも意思があるわけでもないから、迷わず操ったわけだ。
だが、土偶は一つも動かない。
「これは、腕の見せどころだな」
単純に自分の力不足。
だったら、この場で慣れるのみ。
洞窟内でリリィが見せたようなことを、ジーノは極限の状況で実行するのだった。
「テキ、ハッケン。ハイジョ、カイシ」
要塞級が、どこからか音声を発する。
奇妙なイントネーションの言葉の後――続いて、奇怪な音を周囲に響かせる。
「っ! 嫌な音ですっ!?」
「ご主人さま、来るよ!」
奇怪な高音は、敵の魔法攻撃の前兆。
要塞級は一つ目を赤く光らせる。
間もなくして、致死級の光線が飛んでくる。
「ハッシャ」
「――動け、錬金土偶!」
ジーノの両腕を纏う無色のオーラが、最高潮の揺らめきを見せた。
土偶の両目が、目覚めるように赤く輝き――
似たような高音とともに光線を発射。
敵の光線にぶつかり、どうにか相殺していた。
「っぶなーい! ほ、本当にギリギリのタイミングだったよご主人さま!」
「で、でも、完全には防げてはいないみたいです!」
直撃を免れたものの、そこには土偶と要塞という格差がある。
要塞は無傷だったが、土偶の土の肌は、四散した光線でわずかに削られたあとが残っていた。
「――まいったな、こちらの光線は、あと一発が限界か」
膝立ちで頭に乗るジーノにも、ダメージが入っていた。
腕から、わずかながらだが出血している。
土偶の光線はあれが限界なのか、少しだけ顔を出していた『魔動コア』の輝きが、一気に弱まっていた。
こちらの武装は何一つない。
性能差は歴然。
だが、頭上のジーノは――
「だがなるほど。動かしかたは、今ので理解した」
自信をみなぎらせて、そう言う。
そして、次のときには、土偶の片足が一歩前に踏み出していた。
「う、動きましたですっ!」
「待って、また高音っ! 要塞は、何回でも連続で魔法撃てるんだ!」
再び奇怪な高音が辺りを駆け巡る。
赤い一つ目は、一歩、一歩と歩き出す土偶を射貫くが――
なんと土偶は、次の一歩で走り出していた。
「こっちは土偶だ、武器もしょぼい」
そして、その体格からは信じられないような機敏さで、魔法をよけていた。
「けどお前は、動きがしょぼいな!」
土偶が勢いのまま、要塞の腹部分にタックルを決める。
要塞は魔水晶の一部を飛び散らしながら、鈍重な動きで体を傾かせていた。
「お前は別に、硬いだけで、魔法しか効かないわけじゃないからな」
「ふわわーっ! も、もしかしてもしかしたら……勝てるかもです!?」
「おしゃーっ! やれやれご主人さまーっ! 私の名誉のためにがんばれーっ!」
リリィとクリスティーナは、その様子を見て勝機を見出す。
凄まじい振動で地面は揺れ、クリスティーナらと一緒に避難していた坑夫たちは、立ってはいられなかった。
巨大な怪物のぶつかり合いを見た彼らは、口を揃えてこう言った。
「お、俺たちは……神々の戦いを見せられているのか……!?」
歴然の性能差を持つ、錬金土偶と神造要塞。
それを覆すのに必要なのは、ジーノの腕である。




