ジーノパーティVS神造要塞 ① ――『神』が造りし怪物
「技術・邪竜武装――斬! ……って、硬ー! 物理攻撃が全然通らないよご主人さま!」
力を解放したクリスティーナは、飛び上がって一つ目のゴーレムに攻撃を見舞ったが――
表面の肌がわずかに削れただけで、ダメージになっているとはいえない。
真祖を倒したクリスティーナを持ってしても、攻撃はまるで通らなかった。
「く、クリスティーナさんの攻撃を弾くなんて……!」
「奴隷の嬢ちゃんがどんな実力者か知らんが、そりゃそうだろう! アイツの肌は魔水晶でできてるんだ、鉱物だぞ!」
腰を抜かしたヴィリヤミはそう言った。
そして、同様な体勢である隣のジーノは――
「な、な、な、なんてことだ……なんてことだ……!」
「ジーノさんっ……! さすがのジーノさんも、あの巨大なモンスターの前では――」
「さらなる『魔動コア』が、手に入るなんて!!」
「やっぱそっちなんですかーっ!?」
素材バカを披露する余裕があるのだった。
きっちりツッコむあたり、リリィもまだ平静さを保っているといえよう。
「と、とはいえ……あの巨大さで、頑丈さじゃあ……!」
「あれは、間違いなく要塞級だな」
「よっと」と、尻餅をついていたジーノは立ち上がる。
リリィは、ジーノの声を耳にしながら、はるか高みにあるゴーレムの頭を見上げる。
「よ、要塞級……神造要塞、ということですかっ」
「神造系モンスターの頂点。王級が一〇〇年、城級が一〇〇〇年としたら、要塞級は、数千年か、数万年に一度しか目覚めないなんて嘯かれているモンスターだな」
「数万年!? ……神造――神さまが造った人形、スケールが大きすぎます!」
水浴び中に遭遇した神造土偶は、背の高い木よりも高いくらいの巨大さで、リリィが不意に遭遇したときは、山かと見間違えたくらいだった。
だが今目の前にいる神造要塞は、紛れもなく――山だ。
上背だけなら山にも迫る高さで、厚みは、セントクロヴィスの城門より何倍と厚いだろう。
自重を支えるため、長い両腕を地面につけて、四つ脚の獣のようにして立っている。
透ける紫色の肌は魔水晶でできており、非常に硬度が高い。
そして一つ目の赤い眼光からは――
「ま、また目が光って――うう、この嫌な音!」
「『魔法』が来るぞクリスティーナ!」
「っぶなー! な、なんなのこの魔法! 発動前に嫌な音もするし――これが、神さまの魔法だっていうの!?」
一筋の光線が放たれて、光の通った場所は業火に包まれるのだった。
光線の発動前には、奇怪な音も辺りに響いていた。
「じ、ジーノさん、あれは魔法、なんですよねっ?」
「さあ、そっちには詳しくないもんでな。――ただ、技術の一種だということは分かる。俺たちが使うものとは、違う気もするが」
ジーノは相手の力量を見極める。
いかに彼とて、どこまでが正しいかは分からないが――
この場でもっとも信頼に足る男だ。
この場では彼にならって、ゴーレムのそれを魔法と呼んでいた。
「ど、どちらでもいいやい……終わりだ、俺たちは――い、いや、この世の終わりだ!」
そんなことなどどうでもいいヴィリヤミは、尻餅をついたまま絶望していた。
彼だけではない。
この広場に退避していた坑夫たちは、みなパニックに陥り、逃げ出す者も現れ始めるのだった。
「あっ、みなさん下手に動いてはダメです! ジーノさんがいるこの場が一番安全で――」
「リリィ、鎮静剤を作っておいた。君はどうにかこれを坑夫に飲ませろ。落ちついたヤツから、安全な場所に退避させるんだ」
ジーノはいつの間にか鎮静剤を作っていて、すでにヴィリヤミと、逃げずに立ちすくんでいた坑夫数人に処置していた。
リリィは薬を受け取る。
「で、でも、安全な場所なんて……! 会議場も、もう……!」
会議場は一番にあの光線で破壊されていた。
この攻撃範囲を前に、安全な場所などあるのだろうかと。
そして――あの会議場には、大事なものを置いたままだった。
「あの場所にはまだネイトさんがいました。……私の小説も……」
いつも肩からかけている鞄には、少女の宝が入っていた。
だがそれは、置き忘れたまま。
ネイトはあれでもS級冒険者だ、彼は逃げ延びているかもしれないが――
書きためた小説はもう、粉々になっていることだろうと、リリィはうつむいた。
「クリスティーナ! 君は坑夫たちと会議場跡へ行け!」
するとそのとき、ジーノは、巨大な体に掴まりながら戦っていたクリスティーナに指示を飛ばした。
変身中のクリスティーナは、ジーノの声に気づいて下を見る。
「ふえ!? コイツは!?」
「俺がやる」
相性の問題とはいえ、クリスティーナでも抑えきれなかった驚異的な魔物。
そんな敵を、ジーノはたった一人で相手するつもりだった。




