遺跡の正体
「一番坑道異常なーし! リリィちゃーん、そっちはどーお?」
「二番坑道も大丈夫ですーっ、坑夫のみなさんもちゃんと退避したみたいですっ!」
ここエルナント鉱山は、小規模な鉱山だ。
崖に沿うように、簡素な穴が開けられただけの鉱山だったが、それでも働き手の数は多い。
五〇人以上の様々な種族の働き手が、坑道から出て、作業道具などが置いてある広場まで退避していた。
「――よし、全員いるな。はぁ~ったく、地震の度にこんなことせにゃならんとは、面倒くせぇ時代になったもんだぜ」
「あはは……って、ふわわ、また地震です」
ドワーフのヴィリヤミがぼやくと、それに返事するように、二度目の地震が起きる。
「な、なんだぁ? 案外揺れ……あ、いや、収まった――」
「ううん、またまたまた、揺れ始めたよっ! なにこの変てこな地震!?」
収まっては揺れ、収まっては揺れ。
そんな奇妙な現象を繰り返す。
確かに言えることは――
「この地震、ゆ、揺れが、どんどん大きくなってます!?」
揺れが、強まってきていることだ。
そのときジーノが、ふと、こんなことを口にする。
「そもそもこれは、地震なのか?」
「えっ――」
その言葉に、クリスティーナもリリィも、そしてヴィリヤミも、はっとなって振り返る。
ジーノは敏感に揺れの方向を感じ取り――
五番坑道に視線を投げた。
「みんな、気をつけろ。五番坑道からなにか来る!」
最大震度を感じたと思った次の瞬間――
鉱山内の水晶が、爆発するかのような勢いで噴出し、退避した人間たちに襲いかかる。
「壁建築!」
「邪竜解放!」
飛礫のような水晶は、ジーノの技術と、クリスティーナの技術の副次的効果――自身を中心とした突風で弾き返した。
「な、なんだ、ありゃあ……!?」
坑夫たちは無事。
しかし、五番坑道から出てきた異物に、ヴィリヤミは腰を抜かして驚いた。
「魔水晶の……手ですっ!?」
紫色に透けた巨大な手が、五番坑道から伸びていたのだ。
「も、モンスター!? で、でも、五番坑道は私たちがさっき行って帰ってきたところだよねぇ!? あんなモンスター、いなかっと思うんだけど!」
「で、ですです! あんな大きくて、紫色の魔水晶なんて――」
クリスティーナとリリィは、自分でそう口にしたとき、気づいた。
少女二人の声が重なる。
「も、もしかして、あれ遺跡なのーっ!?」
「も、もしかして、あれ遺跡ですかーっ!?」
それが答えだった。
洞窟内で見かけたあれは、遺跡ではなく――とあるモンスターの一部。
この巨大なモンスターが地下でうごめく振動が、地震となって地表まで伝わっていたのである。
すると、この非常事態でジーノは尻餅をついた。
「こ、こ、こ、鉱物の肌を持ち、手だけでもあれだけのサイズ……ま、ま、ま、まさか、コイツは――」
洞窟から伸びた腕が――指が、ぐっと力を込める。
掴んだ地面がひび割れる。
そして洞窟を――一つの山を破壊して、立ち上がる。
「神造兵器の、上位種か!?」
立ち上がった神造兵器――ゴーレムは、山の一部を破壊するほどに、巨大だった。
直後、目覚めたばかりのゴーレムの一つ目が、赤く光る。
次の瞬間には、強烈な光線が放たれて、背後にあった施設を襲っていた。
「か、会議場がっ!」
ヴィリヤミが叫ぶ。
そこは、先ほどまでジーノらと共にいた、会議場。
そして――
「わ、私の、小説……!」
リリィが鞄を――宝である小説を、置いてきてしまった場所でもあった。




