魔動コアの『ランク』
「――というわけで、クリスティーナさんがワンパンで倒したんです」
「突然すごい風が吹いたと思ったら、君だったのかクリスティーナ」
「ぐすん……えっちなことされた、お嫁にいけない……」
水浴びを終えたメンバーは、神造土偶を倒した現場に集まっていた。
今はもちろん服を着ているので恥ずかしがったりしてはいないのだが――
クリスティーナだけは、涙目のままだった。
「ま、まぁまぁクリスティーナさん、おっぱい触られたといっても、相手はモンスター、それも意思のない土偶なんですから、そんなに気になさらなくても」
「ぐすん、穢された……こんなこと初めてなのに……」
「ほ、ほら、名誉を得ないといけないんでしょ? こんなことすぐに忘れましょうっ!」
「名誉っ! うんそうだね、もう忘れた!!」
バカみたいに前向きなのが、クリスティーナという少女なのである。
リリィはほっとしつつ、ジーノの背中に声をかけた。
「それとジーノさんも、もうちょっとこっちに興味持ってくださいね!?」
「うおおおおあったぞ魔動コアぁぁぁぁ!!!」
そしてこちらの素材バカは、最初に一言だけ声をかけたあと、猛然と素材にダッシュしていたのである。
「それにしても……めっちゃくちゃ巨大ですね……」
リリィはジーノが立つ、その足元を見る。
そこには巨大な神造土偶――通称ゴーレムが横たわっていた。
多くの木々を薙ぎ倒して倒れた体は、塗り固められた土でできていた。
「神造系モンスターは、その名にあるとおり、神が造ったなんて言われているからな、巨大なんだよ。コイツは土偶級だから、これでも小さいほうさ」
そこらの木よりも倍近くはある巨体に、固く塗り固められた土の体。
厚みも相当なもので、一番分厚い胸の辺りは、横たわっているというのに、リリィの背丈では到底届かず、肩車でもしてもらえないと、登ることすら難しそうな大きさだった。
「神さまってすごいんですね~……」
「それに間違われちゃうご主人さまも、すごいけどねっ、エッヘン!」
「ゴーレムを素手で倒しちゃうほうがすごい気もしますです……」
元気になったクリスティーナは、ツンとした胸を張って鼻高々だ。
土偶の胸の辺りから素材を採ったジーノは、リリィたちの元へ飛んで戻る。
「ふわぁ、これが魔動コア……赤色で、すごくキレイですっ」
「宝石みたいだね~。私はそういうの興味ないけど……けけけ、結婚式のときとかにこういうのプレゼントされたら、えっちだねっ!」
取り出した魔動コアは、石のような材質で、赤く輝いていた。
あの巨大な体を動かすだけあって、拳よりも大きく、細長い形をしていた。
「ゴーレムには人形級や土偶級、兵士級に王級といるが――土偶は下から二番目のタイプだから、サイズもこの程度だな」
「こ、これより大きなサイズもいるんですかっ」
リリィは驚く。
ジーノは素材のことだからか、少し声色をうわずらせて解説を続ける。
「まだまだいるぞ、俺だって見たことないが、城級に要塞級なんてのもある。数千年に一度目覚めるとかそういうレベルだ、ぜひ会って素材をいただきたいものだよな」
「ぜ、絶対会いたくないです……」
「そいつ倒したら名誉すごそうだねっ!」と、クリスティーナもはしゃぐ。
ただ一人の常識人リリィだけは、断固拒否するのだった。
「とりあえず、これでついでのほうの目的は果たせたな」
「あとは、F級の洞窟スライム退治だけだね!」
「リリィ、忘れ物はないか? 風でいろいろ飛ばされてたからな」
「はい、大丈夫ですっ。……ちゃんと私の『宝』も、この中にしまってますっ」
リリィは肩掛け鞄に手を触れる。
飛ばされたものはなにもなさそうだ。
「よーし、それじゃあF級の洞窟スライム退治、がんばろう、オーっ!」
「だな、油断するなよ二人とも」
「う、うーん……扱いが逆転してますです……」
気勢を上げるクリスティーナとジーノ。
残る依頼は最低ランクのF級だけ。
メインとオードブルが逆な気がしてならないリリィなのであった。




