水浴びしたい! ――VSのぞき魔モンスター?
「あ、この池なら水浴びできそうじゃないです? クリスティーナさん」
「ほほほ、本当にこんなお外で水浴びするの……?」
今はまだ朝の時間。
出発の前に体を洗おうと、リリィとクリスティーナは水浴びできる場所を探していた。
「ジーノさんじゃないですけど、体洗わないと私たちも臭いなんて言われちゃいますよ! これから依頼主のドワーフさんにも会うんです、身だしなみは整えないとっ」
「ぼ、冒険者も大変なんだね……」
小川の先の小さな池の前で、クリスティーナは冒険者の仕事をそう評した。
リリィは、鞄を近くの木にかけて、白のローブを脱ぎ始める。
「ふにゃあっ、リリィちゃんの変態っ、えっちー!」
「大丈夫ですよ、辺りに私たち以外の人はいませんでしたから、誰にも見られることはありません――ジーノさんが、変態さんでなければですけど」
「で、でも、リリィちゃんがいるしっ」
「えっ、私ですか? ……そうですね、私、女の子とは思えない体してますもんね……男の人と入ってる気分になっちゃいますよね……」
素っ裸になったリリィは、凹凸の少ない自身の体を触り、へこんでいた。
もちろんクリスティーナはそういう意味で言ったわけではないので、すぐに言い直した。
「女の子に見られるのも恥ずかしぃ……」
「……すっごい強いのに、すっごい照れ屋さんなんですね……」
未だ服を脱がずにもじもじしているクリスティーナを見て、リリィはそう述べた。
反面、リリィはクリスティーナと違ってあまり恥ずかしがっている様子はない。
同性に見られるくらいなら、そこまで抵抗はないのだろう。
クリスティーナが過敏なだけで、リリィは至って普通の少女なのだった。
「両手の包帯も取ってと……ふわぁ、本当に傷跡もなく治ってますっ。さぁさ、クリスティーナさんも、首の包帯取って――」
「はいっ! 首の包帯取ったよ! 水浴び終わりっ」
「首に水かけただけじゃないですか! ええいまどろっこしいですねっ! もう何日も体洗ってないのでしょう? 観念して一緒にゴシゴシしますよ!」
「あっ、いやっ、ちょ……にゃぁぁぁっ! リリィちゃんのえっちーっ!」
すっかり傷の治ったリリィとクリスティーナ。これなら、水浴びで痛むこともない。
リリィは裸のままクリスティーナに近づくと、すぽーんと奴隷の服を脱がした。
脱いだ服を近くの木にかけて、一緒に池に入る。
顔をぽっぽさせて体を必死に隠すクリスティーナだが、彼女の肉付きの良い体は、それだけでは隠せるものではなかった。
「……なんでそんな立派な体してるのに、恥ずかしがるんですかっ! チクショー!」
リリィは体こそ貧相かもしれないが、できものなどが一切ない、美しい肌をしている。
栗色で肩当たりの長さの髪を洗いつつ、体の汚れも落とす。
「ふぇーん、リリィちゃんがこんなにえっちな子だったなんて知らなかったー!」
リリィとさほど年の差がないクリスティーナはというと、対照的に肉感的な体をしていた。
服の上からでも張っていた胸は、つや形大きさと三拍子揃っていて、両腕だけではこぼれてしまうほどだ。
大きさこそ、あの勇者リュッカよりかは劣るものの、いわゆるほどよいサイズをしていた。
「ほらほら、これで早く洗いましょう」
「う、うん……ご主人さま、石鹸なんてものも作れるんだね」
植物を原料とした石鹸をジーノから受け取っていた二人は、それで体を洗う。
池を汚さず、体の汚れは落とす、隠れた優れものだった。
――ちなみにジーノもどこかで水浴びしているみたいだが、若い女子チームに配慮してか、はるか遠くのほうで水浴びをしているのだった。
「はぁ~、ジーノさんの石鹸に感謝ですね、宿の石鹸よりはるかに汚れがとれますっ!」
「は、早く洗わなきゃ……誰かに見られたら死んじゃう!」
「んもうクリスティーナさん、ソコもちゃんと洗わないと……私が洗いますから、手をどかしてください!」
「ひぃんっ、そこは……っ!」
リリィがクリスティーナの体を洗う。
クリスティーナは手で隠そうと抵抗するが、非力なはずのリリィに、されるがままに洗われるのであった。
「んもう、死ぬなんて大げさなんですから。ちょっと裸見られたくらいで、クリスティーナさんが死ぬわけないですっ」
「そ、そりゃあ私は死なないよっ、名誉を稼がないといけないしっ。そうじゃなくて、のぞきをした人を本気パンチしちゃって、のぞきが死んじゃうってこと!」
「こわっ!? だ、大丈夫ですよ、この辺りにはジーノさんくらいしかいないじゃないですか。人は、ですけど――」
下手したら殺されていたかもと冷や汗をかくリリィ。
クリスティーナは、思い切り目をつぶり、リリィに洗ってもらっている。
――そのとき、ズズ、と、地鳴りがした。
「あれ、なんでしょう? 地震で、しょう、か――!!??」
「えっ、なになにリリィちゃんっ、目の前が真っ暗でなにも見えないよーっ!」
目の前が暗いのは目をつぶっているからだが、『えっちなこと』で軽くパニックのクリスティーナは目を開けることを忘れていた。
一方、リリィはというと――
「の……き……すっ……」
「ふぇっ!? な、なになにリリィちゃん!?」
「のぞき魔モンスターさんですーっ!?」
「ふえぇぇぇっ!?」
山のような背の巨大モンスターに、思い切り裸を見られていたのである。
「うしろ、うしろですっ!」と、クリスティーナの後ろを指さすリリィ。
そのモンスターの太い腕には、リリィやクリスティーナの服がかかっている。
どうやら、服をかけたのは木ではなく、この巨大モンスターの腕だったらしい。
土の肌を持つ巨大なモンスターは、鈍重な動きで、腕を伸ばす。
その指先が、ちょうど振り返ったクリスティーナの胸をプルンっと揺らした。
「っ……!!?? こ、この――」
突如――彼女を中心として突風が巻き起こった。
池の水は飛沫をあげ、モンスターの腕にかかっていた着替えは、今度こそちゃんとした木へ引っかかる。
『邪竜解放』
〝黒い血管〟が走る彼女の体は、一瞬で竜をかたどった姿に変身していた。
そして――
「のぞき魔どすけべえっち変態淫猥淫乱どえっちモンスター野郎の、えっちモンスター!!!」
支離滅裂な言葉を並べて、目をくるくると回しながらも、モンスターの顔面に全力パンチを見舞っていたのである。
「ふわわわーっ、一撃で倒して!? ……って、このモンスター――!?」
岩につかまって凄まじい突風を耐えるリリィ。
裸のリリィは、倒れゆく巨大モンスターを見上げて、その名を口にする。
「S級モンスターの、神造土偶じゃないですかーっ!?」
こうして、『のぞき魔どすけべえっち変態淫猥淫乱どえっちモンスター野郎の、えっちモンスター』こと、神造土偶は――
クリスティーナのワンパンで、倒されてしまうのである。
第二章・完!
というわけではもちろんありません。
ネタバレになるので詳しく言えませんが、まだまだ続きますよ~!




