衣装チェンジしたい! ②
ほぼ無一文状態のジーノ。
奴隷商から逃げ出して来たクリスティーナも同じだろう。
リリィは頬をぷくっと膨らませて、ちょこっとだけ怒る。
「んもうジーノさん、それだけしかお金持っていないなら、どうしてヴァンパイアの灰とかいろいろ全部村に渡してきちゃったんですかっ!」
「どうしてって、せっかくの素材を、必要とする人のために使わなくてどうするんだ?」
ジーノはさも当然といった風に言ってみせる。
「……もうっ、ジーノさんは」と呆れるリリィだったが、その声色は、嬉しそうにも聞こえた。
「じゃあさじゃあさ、今回の依頼の報酬で新しい服買おうよ! 衣装チェンジしたい!」
「素材以外にお金も出るんでしょ?」と、依頼内容を確認するクリスティーナ。
受けたのはF級だけなので大した額ではないが、今よりはマシな服が買えそうではあった。
「うーんでも、このお金で一式買えるか怪しいです。ただでさえF級の少ない報酬を、三等分にわけますし」
「全部私にちょーだい!」
「……ええーっ!? 私たちタダ働きですかーっ!? い、いいんですかジーノさん!?」
「金のほうはどうでもいいが、洞窟薬草二〇束はダメだぞ」
「さすがはご主人さま!」
「つまり私は完全にタダ働きです……」
あのネイトのパーティにいたときだってこんな扱いはさすがにされなかった。
戦力的な格差から文句も言えなかったリリィだったが――
次のクリスティーナの言葉で、表情が変わった。
「大丈夫! ずっと一緒にいれば、すぐにランクも報酬も爆上げだから!」
「ずっと、一緒に――」
いろいろ不足している自分と、過剰気味な二人。
クリスティーナやジーノとは、ここで別れると思っていた。
けれど、鑑定待ちなどもあって今も一緒にいる。
それがもし、この先もずっと、一緒にいてもいいのなら――
「――や、やっぱダメです、私にもちょっとください! ……私なんかが、お二人と一緒にいても……」
「んえーリリィちゃんのけちーっ! まぁでも仕方ないか、やっぱタダ働きは嫌だもんね!」
「ち、違います! タダ働きがいやなわけじゃなくて……ああいえ、もちろんそれも嫌ですけど、私なんかがお二人とずっと一緒にはいられないから、そのお金は思い出に――」
「どうでもいいけど城門に着いたぞ。忘れ物はないな?」
歩き出していた三人は、城門に着く。
リリィは、ツッコんだ。
「………………さっき戻ったばかりなのに、もう出発するんですかー!?」
「ああ。おかしいか?」
「ハイ……スゴイバイタリティデス……」
ついさっき戻って来たのに、早速出発をする一行。
最後に、リリィは正論を言う。
「あのぅ、思ったんですけど、お二人は服より前に宿代を考えたほうが……」
「私は冒険者の宿舎に部屋借りてるのでいいんですけど……」と、自分の身の上を説明したが、ジーノは――
「野宿でいいだろ」
野生児に常識は通じないのである。




