ジーノVS真祖 ③ ――古城での決着
「技術・時間停止!」
時にまで干渉する真祖は、その技術で時を止める。
ジーノは『確実』に止まっている。
だが、爪の攻撃は『確実』に回避していた。
「なぜだ、なぜ当たらぬ! 貴様、道具を作った!」
「お前、永い間この城を根城にしていただろ。この城にある物にまで、時の影響は現れていた。だからそれらを素材に、お前の技術に合わせた道具を作った」
ジーノは砕けた石材から出た粉と、こけを混ぜ合わせてアイテムを作製していた。
それは小さな時計だった。
「貴様は攻撃を受ける直前まで、確実に動きを止めている! 余の技術は効いているのではないのか!?」
「お前が時を止めている間の俺は、止まって見えているんだな。俺はその時に、たぶん動いている。お前と同じように、時間から隔絶された空間で。お前のいる空間とも別の異空間みたいだが」
ジーノは手にした時計を見せながらいう。
見かけは時計だが、針は動いていない側だけのオモチャだった。
「き、貴様も時を止めているとでもいうのか!?」
「違う。お前の技術がなければ、俺もその『時間のない空間』には行けない。そういうアイテムを作っただけで、それ以上のものは作れない」
「わけが分からん! つまり、どういう――」
ジーノは当然、時を止められない。
あくまで作ったのは、真祖の技術に反応するアイテム。
堂々巡りの議論に、ジーノはこう結論づけた
「気合い」
「き、気合いで……異次元跳躍……四次元の先、五次元へ到達した!? はっ、貴様のそのみすぼらしい格好――それに、裸足の姿! 貴様、まさか――」
真祖は腰を抜かす。
「神なのか!」
「人違いだ」
ジーノのみすぼらしい姿を見て真祖はそう勘違いしたが――そんなわけはなく。
ただの無職の錬金術師は、とどめの石の杭を放った。
「技術・時間停止! ――き、気合いだと……こんな下等な人間に、余が敗れるはずがない! 次に時が動き出したとき、そのときが貴様の最期だ!」
「死ぬがいい!」と、爪を振るう真祖だが。
時を止めているとき、ジーノも別の空間で動いているわけで――
「言ったろ、俺も動いていると。独自製品――『次元の城杭』」
「ガ、ハァっ!?」
再び通常の空間に戻ったジーノは真祖の攻撃をかわしていた。
古城を丸ごと杭に変えていたジーノは、杭を一度天高くに放ち――
地に急転直下。真祖の腹に、遂に直撃させるのだった。
「余から見える貴様が止まっているということは、貴様から見える余も止まっているはず、な、なぜこうも的確に――!」
「以前の採取活動では二秒間隔で襲われた。お前の動きを予測することなど、わけないことだ」
「そもそも二秒とゼロ秒の差なんて、わずかだし」とも言うジーノは、真祖の時間停止を、そう評すのであった。
「フ、ハハハ……よもや、この真祖が敗れるときがこようとは……それも、人間ごときに」
上から下に振り下ろすかのように放たれた、一本の巨大な杭。
その杭に真祖は体を貫かれ、宙ぶらりんな状態で虫の息となっていた。
「まだ生きているのか。普段なら苦しまないようにしてやるところだが……しかたないな、手加減もしていたし」
「き、貴様、時すら超越せし真祖を相手にしながら、て、手加減をしていただと……!?」
「うん」と、 ジーノは首肯して、こう答えた。
「本気出して完全消滅なんてさせちゃったら、素材が取れないだろ?」
貫かれた部分から灰となっていく真祖は、乾いた表情となるしかなかったのだった。
「さて――採取の時間だああああああ!!!!」
ジーノはその灰を、今しがた作った瓶に詰め始めるのだった。
「フ……余の時間を操る技術が――止めるだけと思ったか?」
そして、次に真祖が使った技術は――
「技術・時間逆行――過去へ行くスキルも、余は使えるのだ!」
真祖の体が異次元に吸い込まれるように消えていく。
少しの時間戻すことなら、戦闘の最中でも見せていたが、これは違う。
もっともっと、〝昔〟に戻る技術。
「残念ながら未来に行く技術は持たぬが、過去に行く技術なら使える! いろいろと副作用のある技術なもので機をうかがっていたが……油断したな、人間!」
「ん、なんだ、灰の供給が止まって――」
「もう遅い!」と、真祖は言い、こう告げる。
「今から限界まで戻るとなると――フハハハ、コルトン村を襲った時期か! 貴様は間に合うかな、一瞬で辿り着く余よりも早く、フハハハ!」
ジーノが気づいたころには、真祖は灰をいくらか残し、消えていた。
「しまった、素材に夢中で逃げられた。……反省だな。とどめはきちんと刺せ、さもなくば素材は逃げるか、無駄に苦しませる。旅先でよく会う人によく言われていた」
ジーノは己の失態を反省しつつ、真祖の行き先にあたりをつける。
「コルトン村に行くって言ってたが……今の時間軸の話か? それとも、自分の体だけ過去に戻して、時間軸は今のままとか、そういう技術か? ――もう、ややこしいなアイツ」
ジーノはがしがしと頭をかいて、真祖をそう評した。
がたがたになった城から、茜の色が溶けていく。
夕陽がもう、沈む手前まで来ていた。
「どちらにしても、急いで村に戻らないとな。クリスティーナならきっと大丈夫だろうが」
今ある分で、少女を治療する素材は足りる。
しかし取り逃がした真祖を止められるかどうかは、村に残るクリスティーナにかかっていた。
真祖のスキルの関係上、今回は能力バトルっぽくなっちゃいました。
バトルについては、ジャンルにとらわれずに、自由にやろうと思っています。




