21 魔力量
ライオネル様に色々と打ち明けたせいか、気分が物凄く晴れている。こんな心が軽いのは久しぶりだった。
私は魔力強化訓練の為に、 フェリシティ様と輝石の間に来ていた。
手のひらに魔力を集中させ聖魔石に注ぎ込むと、透明な石は白く輝き始めた。
「ぐぅっ、はぁ、はぁ……、はぁ」
私は力を出し切り、へたりとその場に座り込む。
聖魔石の輝きは半分を優に超えていた。
(やった! 魔力が増えてるわ!)
実践練習の成果が出始めたのかもしれない。
「フェリシティ様、どうでしょうか?」
私は訓練を手伝ってくれているフェリシティ様に声をかける。
「……」
返事が無かったのでフェリシティ様の方に振り返ると、彼女の顔が硬直しているように見えた。
「フェリシティ様?」
「え? あ、あぁ、そうね。六……割……といったところかしら。すごいわ」
彼女はいつも通りの柔和な笑顔で、聖魔石を調べてくれた。
「六割ですか!? ありがとうございます!」
目標の十割まであと少し。私は喜びで顔が緩んでしまう。
「でも……、この魔力量、急にどうしたの?」
「えっと、それは、自主訓練を増やしまして」
ライオネル様の治療で実践練習しているとは言えなかった。二人が元婚約者だっていうのもあるけど、誰にも言いたくない。秘密にしたいと思った。
「……そう、自主訓練ね……。偉いわ。身体の調子はどう? 大丈夫?」
まだ座り込んでいる私を、フェリシティ様は心配してくれているようだ。
「そうですね……、まだちょっと力が入らなくて」
「わかったわ。じゃあ、今からたっぷりと回復魔法をかけてあげるわ」
そう言ったフェリシティ様の魔法に包まれると、身体が回復してくる。
「私も早くフェリシティ様のように、魔法を使えるようになりたいです……」
「ふふ、そう? でも私、正直言うと回復魔法はあまり得意ではないのよ」
「え? そうなんですか!?」
驚いて声を上げた。
こんなに魔力が強くて、回復力抜群なのに。
「……私の生家ゴードン伯爵家は代々魔術師の家系なのだけど、ここ何代かは魔力が弱くて、魔術師になることも叶わなかったらしいの」
フェリシティ様が静かに語り始めたので、私は耳を傾ける。彼女が自身のことを話してくれたのは初めてだった。
「そこに全属性で膨大な魔力を持った私が生まれたのだけど、女であるが故に、父からは何も期待されなかった。父が私に望んだのは、ただ強大な魔力を持った嗣子を産むことだけ」
「そんな……」
「でもね。私はあるきっかけから、聖女になりたいと思ったの」
フェリシティ様の横顔は、懐かしげに目を細めている。
「父の猛反対を押し切って神殿にやってきたのよ、聖女になる為にね。……でも、やはり、……まがい物は本物には敵わないのかしら……」
「……?」
フェリシティ様は真っ直ぐに私の目を見つめた。その表情からは、何も感情が読み取ることができない。
(フェリシティ様……?)
「……ねぇ、アイリス。あなたは、魔術の術式は知っているかしら?」
「術式……?」
たしか、魔法について学んだ時に、魔術や、術式についても少し勉強した。
魔術は私たちの使う属性による魔法とは違い、術式を使うことで無属性の特殊な魔法を出現させることができる。魔術師団に伝わるもので、魔術師しかできない高度な技だという。
「私は、その術式の緻密な構造や、配置を見るのが好きなの。……術によってその模様は様々で、とても美しいのよ……」
フェリシティ様はうっとりとしたように、目を細める。
なぜだろうか。背中がゾクッと冷えるような感覚がした。
「フェリシティ様……?」
「ふふっ、ちょっと話し過ぎてしまったわ。中断してごめんなさい。訓練に戻りましょう」
フェリシティ様はいつものように優しく微笑む。
「あ、はい……」
さっきのフェリシティ様の瞳は、どこか悲しげで、でもどこかに怖さを感じた。
(……この違和感はなんだろう?)
気になったけど、私はこの感情を消すように首を振り訓練に戻った。




