↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜  作者: 滝里シエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/40

20 王立魔術師団研究所(3)

 魔術師団の研究所を出た私達は、迎えに来てくれた騎士団所有の馬車に乗り、神殿へと帰路を急ぐ。


 私はガタガタと揺られながら、窓に映る景色をぼんやりと眺めている。そして、さっき棺の中で見た夢を思い出していた。



 どうして、私だけ生き残ってしまったの? 

 それは私が神殿に来た頃、幾度となく思っていたことだった。


 知らない場所に連れてこられ、周りは誰も知らない人達ばかり。先代の大聖女様は優しく接してくださったけど、私を蔑むように見る人達もいた。勉強をして、雑用をこなす日々。

 私は毎晩、淋しくて、切なくて、泣いていた。


 そして月日が経つにつれ、その気持ちは次第に薄れていき、立派な聖女になることだけを目標に生きてきた。


  

「……まだ体調が優れないか?」


 私が静かに外を見ていたせいか、向かいに座るライオネル様が気遣って声をかけてくれた。


「あ……、いえ。全然平気です」


 どうにか笑顔を返すが、どうも頭の中が夢に引きずられているようで上手くいかない。


「そうか……」


 ライオネル様もそれ以上聞いては来なかった。

 再び沈黙が流れ、ガタガタと車輪の音だけが響いている。段々と日が傾いてきて、街並みが朱色に染まりはじめた。



「……棺で君は……」

「え?」


 独り言のような呟きが聞こえたのでライオネル様の方を見ると、彼も窓の外の景色を見つめていた。その横顔は夕日に照らされている。


「置いていかないでと……」

「!」


 私は息を呑む。

(そんなこと言ってたんだ……)


 こちらを向いたライオネル様と視線がぶつかる。全てを見透かしてしまいそうなその瞳を受け止められず、私は顔を伏せた。


「……そ、それは……」


 声が震える。どうにか誤魔化さないとと考えていたが、まだ夢の余韻が残っている私にはこれ以上平静を保つのは難しく、涙が溢れ出してくる。

 私は慌てて涙を指で擦った。


「無理に擦ってはいけない。これを」

 ライオネル様が白いハンカチを差し出してくれる。


「すみませっ、ありがとう……ございます……」

「そこまで踏み込むつもりはなかったのだが……、悪かった」

「いえ、だいじょう……ぶ……です……。すみま……せ……」


 差し出してくれたハンカチを受け取り首を振った。目をぎゅっとつぶり息を止め、これ以上泣かないようにじっと耐える。


「……我慢しなくていい」

 ライオネル様の口調はとても優しい。


 ずっと我慢していた思いが溢れ、涙は一向に止まらない。私がしばらく泣いている間、ライオネル様は何も言わなかった。



 家族や村人達、多くの人が命を落とした中、どうして私は生き残ってしまったのか、そう自分に問いかけながら、ずっと心の奥に感じていたのは罪悪感だった。


(本当に私が生き残って良かったの? 私が生きていて意味があるの?)


 もし聖女になって人々を救うことができたら、私は生きていてもいいと許されるのではと思った。


 少し落ち着いてきた私は、ぽつりぽつりと語り始める。


「……前に、聖女になれば人々を救えて、私のように辛い思いをする人を減らしたいとお話ししたことは、覚えていますか?」


「……あぁ、覚えている」


「立派なこと言いましたけど、実はあれは嘘なんです。自分だけが生き残ってしまった罪悪感を消すために、ただ人助けの真似事をしてただけなんです。……だからずっと見習いのままなのかな。ふふっ、情けないですよね」

 私は自虐的に笑う。


「……それは違う。自分を卑下するな。俺は君の言ったことが全て偽りだとは思わない。それは君の行動を見てきて分かっている」


「そんなことは……」


「君がどうして罪悪感を抱いているのかは分からないが、君が生きていて良かったと思っている人達がいることを忘れるな」


「……私が生きていて……?」


 ライオネル様を見つめると、金色の瞳が優しく揺れている。


「少なくとも、俺は君に出会えて良かった。それにきっとエリゼもそうだ」


 胸がぎゅっと締め付けられて、また泣きそうになった。私が顔を歪めたので、ライオネル様はうろたえている。


「どうした? やはりまだ具合が悪いのか!?」

 私は慌てて首を振る。


「いえ、いえ、違うんです。嬉しくて……。ありがとうございます……」


 ずっと心の奥にあったしこりのようなものが、スッと解けていくようだ。


 

『幸せになってほしいのですわ』


 エリゼが涙ながらに語ってくれたことを思い出した。


「私も……」


「え?」


「……ライオネル様が……生きていて……、出会えて良かった……です」


 ライオネル様が一瞬目を見開いたがすぐに目を伏せ、


「……そう……か……」


 消え入りそうな声で呟いて、また窓の外を見つめた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。