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第8話 村に防衛力をつけましょう


かなりの量の食事を作ったが全て綺麗さっぱり無くなっている。ここまで綺麗に食べてもらえると思わずにやけてしまう。食事を終えた村人の顔は食べる前に比べ生気がみなぎっているように感じた。体力回復能力もそこそこ高かったはずなのでそれのおかげかもしれない。


ちなみに食後のデザートは大好評だった。数人の子供達がお代わりを欲しそうにしていたので特別に追加で作ったら大人たちまで欲しがってしまって少し混乱が起きた。収集がつかなくなりそうだったので全員分追加で作ることにした。


食事を終えたあとは村人全員からお礼を言われている。ただ泣きじゃくるものが多くて阿鼻叫喚となっている。それからなんとか落ち着かせなんとか手伝いをしたいと名乗り出てくれた人たちには片付けを任せている。


俺はその後この村の村長という人と村の重役達と一同にこの村の今後について話し合いを行なっている。まだ聞いていなかった現状を色々聞いていくにつれてもうどうしようもないところまで来ていることを知れた。


「えっと…つまり今までのことをまとめるとこの村には食料も水もなく衛生状況にも問題が出て来ていて病人が出始めている。モンスターの防衛も村を取り囲む柵はボロボロで侵入も簡単。戦うにも武器は木の槍と棍棒くらいでまともに戦える男は10人にも満たない。本国も連絡がこないから救援も難しいし逃げようにも道中が危険…ということですね?」


「あ、ああ…」

「改めてそう言われると…」

「も、もうおしまいか……」


あ、せっかく元気が出てたのにまた落ち込んじゃった。けどどれも真実だし慰めても意味はなさそうだし。


「このままではあなたに受けた恩を返すこともできません。」


「いや別に恩なんて…」


いやまてよ。こういうのは無償で施すとあとあと面倒なことになりそうだな。だからと言ってこのまま放っておくのも何か違うし。その本国も気になるから行って見たいし。けどこの人たちから何をしてもらうんだ?金なんて持ってなさそうだし見合うだけの対価はなさそうだぞ。


その本国がピンチだというのならそっちに行って何か恩を打っておいた方が確実に受ける恩恵は大きいはずだ。けど俺は金なんかのためにやったというわけでもないし。かと言って…

どうしようかなぁ。


「本国もピンチ…モンスターによる被害だとしたら怪我人も大量に…ん?」


怪我人が大量にいる?これって悪い出来事ではあるけどビジネスとしてはチャンスじゃないか?怪我人が多いと言うことは回復薬も足りていない。つまり回復薬を作ればその本国で売れるし恩も売れる。二重に売れてかなり美味しいのでは?自分の懐を痛めない方法を取るとしたら…


「恩返しをしてもらうために私もこの村のために一肌脱ぎましょう。ありとあらゆる手でなんとかしてみせましょう。」


「本当ですか!し、しかし私たちには恩返ししようにも金も食料も…」


「ええ、もちろんわかっています。ですからあなた達には恩返しとなることをやってもらいます。」


「やる?い、一体何をすれば…」


全員が不安な表情でこちらを見つめている。まあ何をさせられるかわからない状況でこんなことを言われたら不安でしょうがないだろう。


「あなた達にはこの村で薬草を栽培してもらいます。その薬草で私は一儲けすることによってあなた方から恩を返してもらうことにします。」


「や、薬草ですと!?し、しかし薬草には特別な土地が…」


確かに。薬草には魔力を含んだ特殊な土地が必要だ。そういった土壌作成は農業職しか本来できない。しかし所詮は薬草である。そんなランクの低い植物の土壌ならば俺の職業でも無理やり作ることは可能だ。


薬草の栽培自体は俺には厳しいがこの村には農家職が多い。最初にあったガルも農家職を持っていた。ちょこちょここの村の人々の鑑定をしていたら半分以上が農家職を持っていた。それなら栽培を任せてもなんら問題はない。だったら薬草を栽培させて俺は一儲けさせてもらおう。


「俺に任せてください。それよりも早いとこ行動しましょう。ついて来てください。」




俺は力のある村人達を集め村の柵の前にいる。しかし近くで見るとその酷さが良くわかる。無理やり結びつけただけで軽く押しただけで壊れてしまいそうだ。早いところ治してしまおう。


「ではみなさん。早速ですがこの柵を取り払ってください。それと何人かは周囲の木を切り倒してください。」


「さ、柵を取り払って危険はないのですか?」


「あってもなくても変わりないような柵ですから問題ありません。むしろ早く作り直すためにも急いで取り払ってください。」


そう言って不安そうにしていた村人の前で軽く柵を押してみる。すると空気を読んだかのようにボロボロと壊れる柵。それを指差しながら「ゴブリンでも同じことになりますよ」と言ってやったら顔を青ざめさせながら急いで解体を始めた。


そういえばこの村の人はレッサーゴブリンとゴブリンをまとめてゴブリンと言っていた。上位種と下位種の違いがあるのだが説明するのも面倒だし今はいいだろう。そんなことを思っていると一人の村人が手を挙げた。


「あ、あのぉ…木を斬り倒そうにも斧がなくて……」


「そうでした!今作るので少々お待ちを」


鉄製品の一切がないと言うことを忘れていた。俺は自分の持ち物から鉄を取り出してすぐに斧を生成する。その様子を初めて見た村人は大口を開けて驚いている。まあそうだろうなぁと思っていると俺を村まで案内してくれたガル達もその光景を見て驚いていた。お前達は一度見ているだろうが。


「これでお願いします。今はモンスターが近くにいないので安心してやってください。」


「あ…は、はい。」


斧を受け取った3人は急いで木を切り倒しに向かう。鉄を使ったのは勿体無い気もしたがまあ鉄なら腐る程あるしこの世界にも確実にあるからいいだろう。今斧を渡した3人は木こり職についていた。この職業は少し特殊な職業で生産職でもあるが戦闘職でもあるのだ。


木を切ることに特化していて木材生産力が高いのだが同様に植物タイプモンスターの中でも樹木タイプに攻撃特化した能力を持つ。さらに斧に対する補正値が高く斧を扱うプレイヤーの多くがこの職業についていた。


他の職業でも木は切れるし正直生産職としては外れ職業の一つである。しかし戦闘職としては木を切ることによっても経験値が入るのでなかなか美味しい職業である。彼らもこの辺り一帯の木を切り倒したら数レベルは上がりそうだ。


俺は村人達が働いている間に村長と少し話をする。サボっているように思われるかもしれないがこれは重要なことなのだ。


「それで…この辺りに現れた強力なモンスターというのはかなりの大きさだったとか?」


「わしも見ていないのでよくわからん。しかしそのモンスターに襲われたという男から死の間際に聞いた話では見上げるほど巨大なそのモンスターは頭にツノがあったとか…腕は丸太のように太くその雄叫びは聞いただけで震えが止まらなかったとか。」


それほどの巨躯で頭からツノ。この辺りでは突出したレベル。村人達の生存状況、俺が見た崩壊した村などの情報を考えてレベルは50以下だろう。それ以上になると魔法を行使するものが多いから村は跡形もなく消えているはずだ。


そうなると考えられるのはオーガ系統。魔法を使わない身体強化系だろう。ごく一般的なオーガのタイプだ。確か大きさは3m前後ほど。そうなると塀の高さは5mは欲しいだろう。防衛力もなるべく高い方がいい。あの手のタイプは初期のプレイヤーがよく返り討ちにあう。


防御と攻撃に特化しているせいで武器による攻撃が効きにくく生半可な防御力ではいともたやすくやられてしまう。しかしそのぶん魔法防御が低いので魔法を使えるプレイヤーにはちょうどいいカモだった。まあこの村の人々は魔法が使えないので物理でいくしかないだろう。


そんなことを考えているとある程度柵が取り払えた。俺は装備を変更する。まあこのくらいならば武器のみで平気だろう。作成専門武器『万里の千璧』。ゲーム時代に拠点を防衛するタイプの特殊なクエストがあった。そういったクエストや大規模なレイドボスと戦う際に作成職が補助として活躍できるように作られた武器である。


作成職が戦闘でも活躍できるようになったとして有名な武器だが、実はこれの発見者は俺だ。この発見で俺は特許料が格段に増えたし名も知られるようになった。おかげで色々なプレイヤーと知り合えるようになった俺の思い入れのある武器だ。


名前に千璧と入っているのは1,000種類の異なる壁を作れるという意味を込めたのだが実際のところ1,000種類の壁ではない。確か2700…といくつかだったと思うがそこまでは覚えていない。まあ名前にそんな細かい数字を入れても格好がつかないのできりの良いところで止めておいた。

まあ実際に作るのは10種類とかその程度なのでいいだろう。


木製タイプの壁だが一体何を作ろうか。実はこのレベルの木製タイプの壁はあまり作ったことがない。熟練度はマックスなのだが普段使うことがないのでお蔵入りしている。なんせもっと良い壁を作れるし材料だってもっと良いものがあった。


どうせなので珍しいのをと思ったが材料も少ないので厳しい。反撃などをるつけても良いがここは長く守ってもらえるように再生系にしよう。再生系とは破壊されない限り壊れた部分を自動修復するものである。ただし他のものと比べ耐久度が少ない。なのである程度強い攻撃をされてしまうと一撃で破壊されてしまう。


しかし今回はオーガだ。まあこの材料でも無理やり耐久度を上げてやれば30発ほどは持つだろう。それに破壊される前になんとかすれば良いだろう。まあ俺もいることだしいくらでも方法はある。早速作業に取り掛かろう。


「危ないから離れといてくださいね。では…ほい。」


木槌である『万里の千璧』を地面に向かって振り下ろす。地面に叩きつけられた瞬間に魔法陣が発生する。別に急いで作ることもないので品質優先でゆっくりと作る。『万里の千璧』は戦闘中に壁を作ることを目的に考えられて設計されているので品質を無視して瞬時に作ることも可能だ。


今は急ぐ必要もないので耐久度を今作れる最高値で作る。壁は1分ほどで完成した。品質も何もかも完璧だ。我ながら良い仕事をしたものだ。それとどうせなので少し村の面積を広くするためにもともとあった柵よりも外側に設置した。まだ取り壊しと木の伐採量が少なかったため幅は20mほどだ。


「こ、これは…なんという…」


「どうです村長殿?『再生の断璧』と言いまして外側から手で登ろうにも手のかかるところがないため破壊することでしか突破できない壁です。刃物を刺して登ろうにも小さな傷ならば瞬時に治るためそうそう登れない代物です。」


村長がまるで餌を欲しがる金魚のように口をパクパクさせているので目の前で軽く傷をつけてみる。傷ついて剥がれた木は瞬時に消えて元のように壁に張り付いている。再生速度は0.1秒といったところか。まあこのレベル帯ならこんなものだろう。


俺が作った壁を見て他の村人たちは笑みを綻ばせ先ほどまでより作業を急いでいる。どうやら俺が作る壁を見て納得してくれたのであろう。今までどんなものを作ってくれるか不安でしょうがなかったであろうがこれを見たら安心したのであろう。


それからは作業効率も上がり、周りで見ていた村人も多少ならば力になれると作業に加わってくれた。作業は順調に進み太陽が沈む少し前に終えることができた。




そして森の奥で一体のモンスターが俺たちの動きを感じ取り目を覚ました。




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