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第7話 ようこそハンガ村へ

村へたどり着いたのは良いのだが泣きじゃくる俺たちを見た村の若い男が何事かと慌てている。俺はなんとかなんの異常も問題もないことを伝えたいのだが泣いているせいで声がうまく出ない。墓のみんなも声を出そうとしているがみんなも声が出せない。


そんな様子村の男はさらに怪しく思ったのか人を集め出す。必死に止めようとするが声が出せなくて止められない。すると村の門へたどり着いた頃には村人全員がなんらかの武装をして集まっていた。


子供から年寄りまでその手には簡単に折れてしまいそうな木の棒から木を尖らせただけの槍などさまざまだ。ただ一つだけ統一されているのはどの武器も武器と呼べないほど貧弱だ。俺はその様子を見てこんな状況でも必死に村を守ろうとしていたんだと思い再び涙が溢れてくる。


もういい大人がみっともないのでいい加減泣き止みたいのだがおっさんになると涙が簡単には止まらなくなってしまうのだ。それから泣きじゃくる俺たちはなんとか落ち着くまでよくわからない問答を繰り返し、ようやく落ち着いたところで何も問題がないと言うことを理解してもらえた。


「それで?この人が命の恩人ということだね?」


「ああ。その通りだ。この人がいなかったら俺たちは間違いなく死んでいた。」

「ほぼ死んでいるような状態から助けてくれたんだ。」

「あの回復の魔法はすごかったぞ。もげた手足が繋がったんだから」

「武器をその場で作ってくれたあれもすごかったな。」


それぞれが思い思いのことを語っている。村人達は一同に彼らの無事を喜んでいる。なんて仲の良い村人達なんだろう。そう思いまた泣きそうになっていると一人の子供がガルと呼ばれている男の元へ走り寄ってくる。


「お父さん無事でよかったね!それでご飯は取れた?」


子供の無邪気な一言、村人達が触れていなかったであろうことに触れてしまった。その言葉を聞いた途端あれほど喜んでいた村人達から一切の声が聞こえなくなった。俺も道中でその話はきいていた。


逃げるための囮としてやっとの思いで取れた鹿を捨ててきたこと、山菜や薬草などもゴブリンの襲撃によって全てダメになってしまったこと。村人達も彼らが何も持っていないのを見て薄々感づいていたのだろうがあえて触れなかったのだろう。


「すまない…今日は「大丈夫だよ。今日はお腹いっぱい食べ物があるから。」」


ガルの言葉にかぶせるように俺は言葉を発した。村人達は一斉に俺の方へ振り向く。一体この男は何を言っているのだろう。そう思っているだろう。しかし俺は彼らに会うまでの5日間。ただ森を歩いていたわけではない。


時折むやみにマジックアイテム『働き蜂の奉仕』を使用していたため無駄に食料を確保している。ある程度は自分で消費していたがもっと美味しいものを食べたかったので正直無駄なアイテムだ。しかし彼らにとっては最高の食材だろう。


俺は未だ何を言っているんだと不思議そうな顔をしている村人達の前でアイテム欄から食材を出す。別に出す必要はないが村人達を喜ばせ、安心させるためにも一度見せたほうがいいだろう。ついでにインパクトがあったほうがいいし少し多めに出して見る。


すると俺の目の前に山のように積み重ねられた食材が出現する。正直やりすぎた感はある。村人達は驚いているのか大口を開けて上を向いている。子供はというと目を輝かせ食材を見ている。


「いっぱいのご飯だぁ!!」

「うわぁ!すっげぇぇ!!」

「はぁ〜〜…」


どこからともなく子供達が集まってきた。意外とこの村には子供がたくさんいたみたいだ。


「食材はふんだんにありますから今日はパーっといきましょう!」


俺の言葉に割れんばかりの歓声をあげる。皆喜び、食材を一箇所に運んで食事の準備を始めるようだ。俺もどうせなので調理に参加することにしよう。そう思い村人達についていこうとするとふと音が聞こえた。


それは俺にしか聞こえなかったであろう。まだ遠いがモンスターが集まってきている。先ほどの歓声、食材の匂い。モンスターが集まる条件は揃っている。ここでモンスターを蹴散らすのはやっておくべきことかもしれないがせっかくのこの雰囲気に水をさしたくない。


ならば俺がこの森を彷徨うこと5日間。その間に習得した必殺技を使おう。夜な夜な寝る前になるといつのまにか集まってくるモンスターへの対抗策として編み出した。それは殺気。わざわざ雑魚モンスター相手に戦うのが面倒だったのでなんとか試行錯誤していたらできたこの殺気を操る方法。


それを使いこちらに近づいてくるモンスターを追い払う。

ちなみにうまくいくかは半々なのでもしもうまく言っていないようだったらまあ仕方ないのでその時はその時だ。


なんとなくやって見たがモンスターの動く音は聞こえなくなった。成功したのかそれともこちらに気がつかず離れて言ったかだがまあ来ないのなら問題はないだろう。

さてとっととみんなに合流しよう。




合流するとみんなが一斉に食材の処理を始めるのだが何かおかしい。何がおかしいのかずっと見ていると何がおかしいか気がついた。全員が作業を手作業で行っているのだ。手作業ならおかしく無いではないかと思うだろう。しかしこの手作業はおかしい。肉の解体もナイフも使わず手で引きちぎっているのだ。


「え…え?あの…包丁なんかはないんですか?」


「ご、ごめんなさい。刃物の類や鉄製品は全てモンスターと戦う時に使ってしまって…」


な、なるほど。そんな身近なものまで全て使っていたのか。周りを見ても全て手で引きちぎっている。さすがに見るに耐えない。しかも調理方法が木の串に刺して焼くだけみたいだ。今も串に刺そうとしている。

さすがにこの状況を放っておくわけにはいかないだろう。


「み、みなさん一度止まってください!」


俺が急に大きな声を出すものだから村人全員が一斉にこちらを振り向く。これだけの視線を集めるとなんというかおじげついてしまう。しかしここで縮こまっているわけにはいかない。小さく咳払いをしてから話し始める。


「私は調理道具を一式持っているので今回は私がみなさんに料理を提供したいと思います。みなさんのその疲れ切っている状態に焼いただけの料理では力が出ません。ここはひとつ私にやらせてはもらえませんか?」


村人達は皆お互いに顔を合わせながら相談しあっている。そんな中ガルが俺の元によってきた。


「任せても構わないんだがこれだけの大人数をまかないきれるのか?ご馳走を目の前にして待たされるのは今の俺たちには…」


「大丈夫です。みなさんの状態は分かっているつもりです。すぐに料理を提供して見せるので俺に任せてください。」


「…分かった。この食材はあんたが持ってきてくれたものだ。貰う俺たちが文句を言う筋合いはない。あんたの好きにしてくれ。」


ガルの言葉に皆食材を手放し俺に任せてくれた。かなり不安そうにしているがまあなんとかしてみせよう。ここまで大見得を切ったのだ。やってやるしかない。俺はもう少し離れるように村人たちに言う。離れてもらったので早速準備を始める。


まずは装備を変更させる。装備は建築系装備シリーズ『建築の大王』。これは個々のアイテム作成には向いていない。しかしこの装備は一度に大量に作成するのに向いている。俺はかつて作成したものから今回使えそうなフォーマットを呼び起こしそれを目の前の空き地に当てはめる。


人数も多いし100人以上が座れる席を作れるようにする。まあこんなもので良いだろう。設定が終わったところで作成を開始する。


「さあ来い。出番だぞ。」


俺は両腕に装備されている防具の魔法を発動させる。召喚魔法『建築精霊の行進』。俺の両手から発動されている魔法陣からなんとも可愛らしい小人たちが出てくる。彼らはピクト。建築専門の精霊だ。本来は妖精としてそこらへんにいるのだがこいつらに関しては魔法によって魔力で形を生成されているため精霊化されている。


彼らは目的のためだけに行動する。しかも数が多いので仕事が早い。材料は道中邪魔で切り倒した丸太と俺の私物から少し鉱石と魔石を出した。まあこの程度ならこの世界でもきっと回収できすはずだ。


それからほんの数分で村人全員が食事のできる机と椅子、料理をするのに申し分ないキッチンを作り上げた。雨のことを考えると屋根や壁もつけたかったが今は降ってもいないしまあ後にしよう。俺は再び装備を料理用装備に変更する。


「みなさん。立ちっぱなしだと疲れると思いますので座ってください。これから料理を作るので少々お待ちくださいね。」


「お、お前さんは…一体何者だ……」

「こんなの見たこともねぇ……」


俺はその質問に微笑みで答える。と言うよりその答えをまだ考えていなかった。いや、いくつか考えたのだがしっくりくるものがなかったのだ。本名で名乗るかゲームの時の名前で答えるか、もしくは全く関係ない名前をつけるか。それの答えがまだ出なくて答えることができないのだ。


まあ今は気にせずに料理を再開しよう。九州の良いものにしたいが食材の問題で難しいだろう。まあそこは付与魔法でなんとかしよう。そうなると料理はなんでも良いわけか。じゃあどうせだし見た目だけでも豪華な料理にするか。


俺は魔法を発動させる。この職業にのみできる調理をする空間。包丁も鍋もフライパンも手に持たなくても魔力で操れる。これも初めて使ったがなんとかなりそうだ。では早速調理を始めよう。


まずは肉の処理を行おう。これだけの人数だからな。熊を4頭捌いて鍋用にしよう。鹿も同時に…と思ったが予想以上にこの作業は難しい。熊を同時に4頭裁くだけでも頭が痛くなってくる。まあ初めてだししょうがない。やれる範囲からやっていこう。


熊の解体と鹿の解体、ウサギの解体まできたところでようやく慣れてきた。子供達がこちらを楽しげにワクワクしながら見ている。これはもう少し見ていて楽しい調理風景にしたほうがいいな。慣れてきたしもう少し綺麗にやってみよう。


山菜を切り分け食材によってアク取りや筋を取る。香辛料は乾燥させるもの、生のまま少し刻むものとそれぞれにあった処理をしていく。その時も美しく、華麗におこなっていく。正直美的センスはないが子供達や大人の受けは割といいみたいだ。


「すごいすごいすごいすごい!」

「お父さん見て見て!くるくるってしてる!!」

「きれぇ……」


「す、凄すぎる…」

「もしかしてかなり高明の魔術師?」

「だろうな…あれほどの大魔法をいともたやすく…」


たやすくはないんだよなぁ。さっきから頭痛が鳴り止まないし変な脂汗かいてきたし。だからと言ってやめる気はないけどな。なぜかって?見栄だよ見栄!

子供達があんなに楽しく見ているのにやめるわけには行かないだろ。


食材の切り分けが終わったら具材ごとに煮込み、焼いていく。鍋には早く作れるように圧力をかける。焼き物には中まで火が通るようにオーブンのように火で囲み全体をムラなく焼いていく。そしてそこまでできたら加速魔法をかけて時間経過を早める。


あとはその間にデザートも作っておく。子供達なんかは甘いものに飢えているだろうしな。冷たいのはお腹に良くないかもしれないな。いやしかし熱いものを食べた後には冷たいシャーベットでも…

回復魔法を付与しておけば平気かな。うんきっと平気だ。じゃあそうしよう。あれ?けど材料が…まあそのくらい私物から出すか。


「あ、皿とか何もない…」


ついそんなことを忘れて作っていたけどどうしよう。ゲームの時は並行して作れたけど今はかなり脳に負担が…

や、やるしかないかぁ…


「練成スキル発動…」


本当はこんなこと言わなくても良いのだが同時に魔法を使う時は口に出さないと頭の中で考えることができない。なんとかそこらへんの土から皿を作り出すが頭が割れるように痛い。本当に割れそうだ。一度手を止めてやるべきだった。もう取り返しつかないけど。


そこからあまりの痛みにあまり記憶に残っていないが俺はなんとか食器を作り皿の上に料理を盛り付け村人全員に振る舞うことに成功した。


俺は別に食べなくても問題なかったのだが俺だけ食べないと言うわけにはいかない雰囲気になったのでとりあえず席に着きみんな一緒に食事をはじめる。

正直意識も朦朧としていてとっとと横になって休みたかったのだがそう言うわけにもいかず食事をしていた。ただ村人たちの喜ぶ顔は見ていてこちらも嬉しくなってしまった。


感涙にむせぶもの、あまりのうまさにかぶりついたまま動きを止めているもの。大声で何かを叫び生きていることを喜ぶもの。無邪気に喜ぶ子供たち。それさえ見られただけで料理人冥利につきると言うものだ。


ここでこうしてこの人たちと会えたことはどこか運命のように感じた。




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