第6話 人発見しました。
読者増やすために2話投稿します。
森の中を彷徨うこと5日目。今日ようやくこの世界の人に会うことができた。思えば長かった。村を見つけたと喜んで見たら既に廃村で人っ子一人いなかった。そんな思いを何度も味わいながらやっとの思いで今日人を見つけた。
ゴブリン達の楽しそうな声が遠くから聞こえてきてそちらに向かってみるとゴブリンと戦っている人がいた。ようやく人に会えたと言うのになんとも運が悪い。
どうやら彼らはゴブリン達の群れに突っ込んで無茶なレベル上げをしているようだ。こう言った際には介入するのはご法度なのだがかなりボロボロだし手足のない死体まである。ここまできたら介入しないわけにはいかないだろう。
しかし介入するにしてもゴブリンを倒すわけにはいかないだろう。だから俺は装備武器『神殿の世界樹』を使ってゴブリン達の動きのみを封じた。これならばいざこざは起きないだろう。
それから意思疎通の確認をして見たがボロボロにやられすぎて言葉が通じているか全くわからない。とりあえず頷いているようだったので通じているのかと思い話ができるように回復だけする。
まだ怪我をしていなかったので回復魔法を使うのは初めてだ。どれが回復用のマジックアイテムだったかも忘れかけていた。確かこの指輪がそうだったと思い発動させてみる。
発動させた瞬間神々しく光り輝き始めたのでもしかして別の攻撃魔法系かと思ったのだが目の前にいた男が回復していくのを見てホッと一安心した。ただ横の完全に死体だろって思った奴らまで生き返ったときはあまりの驚きで悲鳴をあげるところだった。
その後男達が治ったことに喜んでいるのを聞いて、あ、言葉わかるし通じるんだなと一安心した。
「あ、ありが…ありがとう。」
目の前にいた男がこちらを向いて礼を言っている。どうやら介入しやがってふざけんなと怒ってくるタイプのやつではなかったようだ。これなら一安心であるがなぜか男達は怪我が治ったことに喜んで一向にレッサーゴブリンに攻撃をしようとしない。あれ?ゴブリンも混ざっているじゃん。
「あー…いえいえ。それよりもこの周りのゴブリンの処理お願いしますね?」
俺の言葉に男はぽかんとしながらこちらを見ていた。何を驚いているのかと思ったら男の手に握られているものが見えた。刀身のない剣の柄のみを握っているのだ。なるほど、無茶な突撃のせいで武器までボロボロと言うわけか。
自分の装備を大切にしない奴は好きではないが状況が状況だ。仕方ないので武器を作ってやろう。ただし適当な武器だ。俺は地面に手を当て武器を錬成する。
どこぞの錬金術師のように思われるかもしれないがあながち間違ってはいないので訂正はできない。この周囲の地面には鉱物が少ないのでまともな武器が作れないがまあ数多く作っておけば足りるだろう。
俺は数十本ほどの短剣を作る。これは俺の職業の一つ錬金術のスキルの一つである。まあスキルといっても魔法が加わっているので若干種別が怪しいところではあるがスキルである。このように素材さえあれば即席で武器を作れるのだ。
ただし鍛治職と比べて品質も低いし脆いので使い捨ての武器だ。まあ今の彼らにはちょうどいいだろう。これを使って武器のありがたさと言うものを少しは知るといい。
「ほら、これでお願いします。私はこれを使っているのに集中しているので。」
「あ、ああ…」
ふふふ。もっともらしいことを言って逃れてやったぜ。レッサーゴブリン達の数は50を優に超えているからな。そんな武器じゃあ一苦労するだろ。さあ!武器のありがたみを知るがいい!
「お、おい…みんなこれを持て。あの人が俺たちにチャンスをくれたぞ。」
「こ、これで少しは仲間の仇が打てるのか…」
「本当は奴にしてやりたいところだがゴブリン達にも多くの仲間をやられたからな。」
「今までまともな武器がなかったからな。これでやっと…」
ん?なんだか様子がものすごくおかしいぞ。レッサーゴブリン達に罵詈雑言を浴びせながら倒しているし。そういえば他の仲間が持っていたのは棍棒だったような…
もしかして少ない武器で仲間の仇を討ちにきたのか?
「畜生!アイルの仇だ!」
「俺のばあちゃんとじいちゃんの仇だ…そしていとこの仇だ!」
「お前達に殺されて言った子供達の…う、うぅ…仇だぁ!」
あ、確定ですわ。なんとか仇を討ちに来た人たちですわ。それなのに俺って奴は武器のありがたみだとかなんだとかそんなことを言っていたのか。やばい。ものすごくいたたまれなくなって来た。
な、なんとかこの気持ちを晴らす方法は…あ、あれは!
「そ、そこの人。足元のその折れた鉄剣を持って来てくれますか?」
「こ、これですか?わかりました。」
男は破片から何から全て持って来てくれた。折れている鉄剣はかなりボロボロだがなんとか持たせようと手を加えられた跡がある。正直意味のないことばかりされているのだがそこまでこの武器を大切にしていたのかと思うと先ほどまでの俺の考えが恥ずかしくなってくる。先ほどまでの自分をぶん殴ってやりたいくらいだ。
これには詫びとして何かしなくてはならない。まずはこの鉄剣を元に武器を作り直そう。ただこのままではこの鉄剣の元となっている鉄の質があまりにも悪いので素材そのものから作り直す。素材そのものを変質させるのは容易だ。錬金術のスキルを用いればすぐにできる。
余分なものは取れたのであとは近くの木の枝から炭素のみを抽出し鉄に加える。配合は何と無くだが良いものに仕上がっているだろう。軟鉄と鋼鉄を組み合わせる必要があるがそこは鍛治スキルで行う。
鍛治は本来専用の場所で行う必要があるがこの程度ならば問題はないだろう。鍛治師専用のマジックアイテム『精霊の鍛冶場』を使い空中で剣を生成する。ただし材料が少ないので大きなものは作れない。材料的にも日本刀の小太刀のようになるだろう。ここの人たちに使いこなせるかわからないがまあ丈夫に作っておけばそのうち慣れるだろう。
この『精霊の鍛冶場』もこの世界で初めて使ったが意外と使いこなせる。なんというかマジックアイテムの使い方は基本的に感覚だ。熟練度の問題などもあるのかもしれないが比較対象がいないのでよくわからない。ただ頭の中で作っている最中のことを思い浮かべるとその通りに作成される。
1分も経たないうちに作り終えた。品質はもちろん最上級。それにアイテム欄から焚き火用に集めておいた木々で持ち手と鞘を作る。オシャレにしたかったがこれ以上は材料がないので諦めた。まあこう言った無骨な感じも嫌いじゃない。
「誰か一人はこれを使うといい。他の武器に比べて断然切れ味もいいはずだから。」
「え?あ、ああ…ありがとう…」
目の前にいた男に渡すとその刀身を抜きはなち光に当てる。やっぱり日本刀っていいなぁ。というより刃物ってなんかいいよなぁ。こう…ゾクゾクってするわ。
「す、すげぇ…こんなにすごいものをあっという間に…」
男も満足げな様子だ。まあそうだろうそうだろう。なんせこの材料から作れる武器の最高峰だからな。ちなみに強固と状態維持の魔法をかけておいたから手入れしなくても無茶をしても安心な最高の武器になっているぞ。
男はすぐに周囲のレッサーゴブリン達にトドメを刺しに行った。先ほどまでとは違いあっという間にトドメを刺していく。その切れ味に驚いたのか他の仲間にも武器を貸している。まあ一人で倒すよりみんなで使いまわして倒した方がレベルは上がるからな。
いやまてよ?そもそも彼らにレベルの概念はあるのだろうか。俺はゲームの時のままだからステータスも存在する。しかし彼らはゲームなど関係ない。この世界の住人だ。職業なんてつく必要性はないのではないか?
あまり褒められたことではないがこっそりと鑑定してみよう。常に装着しておいた鑑定用マジックアイテム『ソロモンの瞳』を使用する。もちろん使用しているのを気がつかれないようにスキルで隠蔽を施す。隠蔽は作成系職業と一部職業の固有スキルである。これが意外と便利なんだよな。
ガル=ハンガ レベル13
職業
剣士、農民、弓使い
ほほう。ちゃんとレベルどころか職業まで持っていたよ。それにしてもなんというか無難な感じの職業だな。職業はレベル10から取得することができ、レベル20になるともう2つ取得できる。あとは職業のくみ合わせや限定クエストによって上位職業の取得が変化している。その組み合わせは何百通りもあると言われプレイヤーによって全く違う変化が起こる。
ステータスなんかもあるのかと気になるがこの『ソロモンの瞳』はアイテム鑑定に特化しておりプレイヤーの情報は詳しく見れない。それ専用のアイテムも持って来てはいるがまあ今はいいだろう。もうすぐ全てのゴブリン達にトドメを刺し終える頃だ。
それから数分後全てのゴブリンにトドメを刺し終えるとこちらに集まってきた。
「ありがとうございます。あなた様のおかげで命を救われただけでなく仲間の仇を打つことができました。」
「これで…これで少しはみんなの無念を晴らせました…」
「本当に…本当にありがとう…」
「い、いえいえ。お気になさらずに。少し待ってくださいね。今魔法ときますので」
俺はそう言ってから『神殿の世界樹』の魔法を解く。するとすぐにゴブリン達に絡みついていた蔦が地面へと消えて行った。このマジックアイテムは世界樹を召喚し操る類の武器で世界に7つあると言われる世界樹の一つ、ゲームの時の法国の聖樹として神殿にあった世界樹…のレプリカを召喚できるものだ。
俺も当初は法国にあるものと契約して召喚していたのだが距離によって消費魔力が違っていたり、契約の更新に時間と金がかかるのでサブキャラで世界樹を育ててそれを召喚することにしている。ちなみに今は5本の世界樹を育てている。俺の大事な大事なコレクションの一つである。
育てているのは俺の『異次元の夢の国』の中なので消費魔力も最低限で済む。だが出しっ放しにしておくとそのぶん魔力を食うし世界樹そのものに悪影響が出かねない。だから必要がなくなったらすぐにしまうようにしている。
「さて、これでいいでしょう。実は私はこの辺りに詳しくないので何が起きているかお聞きしたいのですがここは血の匂いが酷い。移動しながら説明できる範囲で良いので教えてくれませんか?」
「もちろんです。とりあえず我々の村へお越しください。道中にご説明しましょう。」
道中に今まで何が起きていたか事細かく説明してくれた。モンスターの大量発生について、救援が来ないことについて、村の状況について。そして彼らが今存亡の危機に瀕していることがよくわかった。俺があそこで助けに入らなかったら彼らだけでなく防衛力を欠いた村そのものの危機だと言うことも。
「う…うぐぅ…よく…よくぞご無事で……」
「あ、ありがとうな。こんな俺たちのことを思ってそこまで悲しんでくれるなんて…」
「う、うぅ…なんていい人なんだ……」
そして今の状況を聞いた俺は号泣していた。それにつられて村人達も号泣していた。おっさん8人が仲良く号泣しているのだ。見た目だけで言えばなんとも言えないものだろう。
ただわかってほしい。人間20代あたりから涙もろくなり30代にもなるとすぐに泣けてくるのだ。子供の頃は涙ひとつでなかった映画でも今見ると号泣しすぎて翌日具合が悪くなるのだ。これも大人になったと思うことの一つであるかもしれない。
おっさん達が泣いていると徐々に人の形跡らしきものが見えてくる。村に近づいているようだ。そのまま歩き続けていると話に聞いていた村を覆う塀が見えてきた。
これが彼らの住む村。ハンガ村だ。




