第2話 やることないし飯を作る
本日2話目投稿です。第1話の文量が少ないので近い時間で投稿しました。
もう1話は21時に投稿します。
「この後どうしよっかなぁ…やることねぇなぁ……」
鑑定もしてやることのなくなった俺は現在ベッドの上でゴロゴロしている。異常事態の割にずいぶんゆったりしているように思われるだろう。しかし考えても見てくれ。何やら訳のわからないところに来た。ログアウトはできない。外はよくわからない場所。家の中、『異次元の夢の国』の中はまず安全。だったらやることは一つ。家の中でゴロゴロするだけだ。
「やること…あ、腹減ったな。夕飯まだだった。」
ゴロゴロすること以外にやることが見つかった。俺はダラダラしたがる自分の体に喝を入れて早速厨房に向かう。起き上がりドアまで歩いていく姿は見る人が見ればなんとも哀愁の漂う後ろ姿だったろう。
「……こういうとき面倒だなここ。」
厨房までの移動はすぐにできた。俺のこの家の中のドアならどこにでも移動できるアイテム『どこにでもドア』をすべての部屋のドアにつけている。ちなみにこのアイテムを初めて作ったのは俺だったため名付け親も俺だ。完全なパクリは運営に止められたので少しだけ変えてある。
このようにこのゲームはアイテムが大量にありすぎて運営も名付けが面倒だったため名無しアイテムを大量に作り、初めて作った人間に名前を決めてもらうという設定にしてある。俺が名付けたものも結構あるため意外と俺の名前は有名らしい。
また話が脱線したようだ。厨房にたどり着いたのは良いのだが俺が無駄に凝ったため無駄にでかい厨房になっている。100人くらい入っても問題なさそうだ。こんなことになるならもっと小さくすればよかった…
とりあえず料理を作るため全身の装備を変更する。装備はいくつか設定してあるため変更するのもすぐにできてしまう。これに関しては楽チンでありがたい。装備を変更した俺は料理をしながら一応現状を考える。
ログアウトができない。触れるものすべての感触がゲームの頃と違う。この感触は明らかに現実のものだ。匂いも音も全てが今までのゲームの頃とはまるで違う。アイテムを作成する時の操作するコマンドも出てこない。
ゲームの時は目の前にアイコンが現れそれをなぞるようにコマンドを入力していく。それだけでよかったのだが今はそんなアイコンなどでてこない。その代わり頭の中でどうするのかというのが本能的にわかり感覚で作業をこなすことができる。
まるで俺がこの作業を何千回と行っており頭で理解している以前に体が覚えているといった具合だ。あまりにもこの感覚が面白いため思わず料理を作りすぎてしまう。これは随分と豪勢な夕食ができそうだ。
「いや…豪華すぎるな。どうしよこれ…」
俺の目の前には満漢全席も真っ青になりそうな超豪華な料理の数々が所狭しと並んでいる。50人前くらいは軽くありそうだ。調子に乗ってどこまでの素材ならいけるのだろうとか考えるべきではなかった。エンシェントドラゴンの酢豚(いやこの場合酢龍だな)にリヴァイアサンの舟盛りはやりすぎた。というか和食、洋食、中華、ネパール料理、ロシア料理など各国揃い踏みではないか。
「とりあえず運ぶか…自動人形使えるかな?」
自動人形はこの家を管理するためのマジックアイテムであり、掃除やアイテム運搬などなんでもやってくれる。とは言ってもゲームの時は特にこれといって仕事を見たことはない。ただ家を建てた際に家の大きさに対する数の自動人形を一定数以上設置しないと汚れてしまい、家の中のアイテムが全て汚れたアイテムとなってしまうのだ。家の外観も悪くなるので一部のプレイヤーを除き自動人形を設定している。
そんなわけで掃除している風景は見ることは家に引きこもっていない限りないのでほとんど見たことがない。いや、引きこもってアイテム作成をしているのだが基本的にプレイヤーがいるところには現れない。家中を歩き回らなければそうそう会わないだろう。
せいぜい運搬を命令した際に見るくらいだがそのまま倉庫に放り込むため運搬も滅多にしない。メイドとして常時動かす命令もできるのだがエネルギーコストがかかるため俺は用がない限りスリープモードにしている。
「しかしどうやって命令するんだろ?自動人形よ、この料理を運べでいいのかな?」
なんとなく声に出してみたら扉が開きそこから自動人形が数体現れ料理を手に持ち出した。自動人形は顔などを設定しない限りただの木偶なのだが、それでは味気ないと思いプレイヤー名「メイドは正義」と「執事萌え」という狂ったプレイヤーにいくつかのアイテムとキャラクター設定のアイテムを交換してもらうことにした。あの時は交渉することに何の疑問も抱かなかったけど後でものすごく後悔したなぁ。
「メイドが欲しいだと!?貴様のような男に俺の嫁は渡さ……こ、これは中世時代のメイド服!?しかも再現度が高い上に品質も最上級……いやその上のゴットだと!こっちは近年のメイドっぽい服装…これはこれで良いものが……ふっ…そうか貴様も同士ということか。仕方ない…貴様に俺の一部を与えよう。」
「し、執事が欲しいんですか!?それってもしかして…は、はぁはぁ……。こ、これはそそります!あなたは受けっぽいので攻めようの執事を…いやあえての受けですか。そうですか!そうですね!!これは止まりません!待っていてください!今あなたのために秘蔵の一品を…いや新しいアイデアを…ああ、アイデアが浮かぶ…浮かぶぅぅ!!」
あの時ばかりはどうしてこんな奴らに依頼したのかと思ったけど出来上がったものはかなり良いものでひどい思いをしたけど依頼してよかったかなとは思ったね。ただ一部設定は変更させてもらったけど。あの設定はひどすぎるだろ…
その上その後も奴らの同類だと思われて一部のプレイヤーからはドン引きされるし。代わりに変な奴らが寄ってくるようになった。まぁその際に面白いアイテムを色々と入手できたからよかったのか?未だにこの問題は良かったのか悪かったのか決着がつかない。
「ご主人様。お料理はどちらにお運びしましょうか?」
「ん?ああ、そっか…そうだなぁ…量が量だし広い部屋がいいかな?和室…いやここは会食の場にしよう。ついてきてくれ。」
俺はメイドたちの横を通りドアの前に行く。一人のメイドが扉を開こうとするがそれを止め自分で開けることにする。会食の場というのはいくつか同じ名前の部屋が存在しているためメイドが開けるとどこに行くかわからない。場所の名前をつけるのが面倒で同じ名前の場所が多いのだが以前は名前の横に映像が出ていたため問題はなかった。だが今となると面倒なことが多い。いずれ諸々の設定を変更しなければならないのかもしれない。
俺はドアノブに手をかけ行きたい場所を想像しながらドアを開ける。
そこは中世時代を思わせるような洋室で中央にアホみたいに長い机が置かれている。俺自身こういったデザインを設計することが苦手なので現存するものを忠実に再現したようなものが多い。まるっきり同じなものもそれはそれで良いのだがそれでは個性というものがなく、つまらないので少しずつ手を加えてオリジナリティを加えている。
そこへ続々と自動人形たちが入り、料理の数々を並べていく。並べられていきながら絶対に食べきれないと確信するのだが余ったものを捨てるのも勿体無いのでどうするか考える。アイテムボックスに保存しても良いのだが調理されたものは期限が設定されてしまい、それを過ぎると自動的に廃棄される。
食事は食べることによって体力の回復、ステータス上昇などがある。ぶっちゃけ魔法薬でステータス上昇をすればいいので基本的に食事はそこまで気遣わなくても良い。強いて言うなら満腹ゲージというものがあり一定以上まで減るとステータスがダウンする。それを防ぐために食事をする…のだがそれも魔法薬で解決できる。……なんとかしていいところをアピールしようとしたのだが無理だ。
なんとなくわかるだろうが料理人は不遇職というものの一つである。何度か上方修正されたのだがそれでも人気がない。料理人の最上位職にあたる『神の料理人』まで至ったプレイヤーはおそらく5000人もいない。多いようにも思えるがこの『クリエイトワールド』を遊んでいると言われるプレイヤーは7000万人に及ぶと言われる。一人のプレイヤーが複数の職につけるというのにここまで少ないというのは他の職業に比べて異例中の異例である。
ちなみに俺はこの『神の料理人』という職業を持っている。なんでこの職業を持っているかというとこの職業のみにしかできないクエストがありそれで手に入るアイテムが欲しかったのと、とある職業の開放条件にこの職業が必要だったからである。
また話がずれた。とりあえず今はこの料理をどうするかであるがとりあえず今は食べるしかないだろう。残ったら残った時に考えればいいだろう。
「ご主人様。用意ができました。」
「あ、うん。ありがとうございます。」
つい、かしこまってしまった。自分の方が主人であるため偉いはずなのだがこんな風にされることなどなかったため、こんな対応になってしまった。とりあえず席に着き食事を始める。
おっといけない。いつまでもシェフの格好のままではいかんだろ。ここは食事用の服に着替えるか。
「よし!これでいいな。では、いただきます……こ、これは!」
今食べたのはエンシェントドラゴンのステーキなのだが何これ!何なのこれ!!
「なんだこの食感は…柔らかすぎず硬すぎず絶妙な歯応えだ。しかも噛んだ瞬間に肉汁が溢れ出てくる。最近は油っぽいのはきつかったんだけどこれはさっぱりしていてきつくならない。高温の火炎を吹くから油っぽいとダメなのか?けど極寒の冷気も放つから低温でも凍らないような成分も必要。それがこの肉汁の秘密か…肉も硬すぎず柔軟性を持つことによって防御とともに攻撃にも向くそんな肉体が必要。それがこの食感の秘密なのか?」
グルメレポートはできないが分析っぽいことならできる。しかしこの肉は美味い。ん?味を感じる?これもゲームの頃には決してなかった感覚。やはりこれはゲームではなくて現実ということか。異世界転生…この場合は転移か?まあそんなことはどうでも良いか。今はこの美味い飯を食うことだけに集中しよう。
「ん!リヴァイアサンもなかなかいけるな。感覚的に言うと馬刺しに近いか。しかし魚類のような風味もある。マンドラゴラは癖がすごいな…しかし薬膳料理みたいになっているおかげで嫌にならない。むしろ癖になる味だな。この禁断のリンゴパイもなんとも言えないな。ほのかな酸味が食欲をそそる。これはこれで…お!これもいいなぁ…」
目の前にある食事が消えていくのにいつまでたっても食欲が収まらない。遠くにある料理を自動人形たちが近くまで運んできてくれる。俺は運ばれてきた品々を一心不乱に食べ進める。しかしここまで食べてもまだ食べられるというのには驚いた。昔と違ってだいぶ食が細くなってきたと思っていたのだがうまいものの前では関係ないらしい。
食事を開始してから数十分が経ったと思われた時、俺の食事の手が止まった。いや…これは止まったというより
「…おいおいまじかよ。あの量全部食べきったのかよ。なんなの俺。どうしちゃったの?」
もしかしたらこういったアイテムは食べた量よりも少ない物質として換算されているのか?魔力が見せかけの物体を作っているとか。もしもそうなのだとしたら食料が足りなくなる恐れがある。どんな料理を大皿いっぱいに作ったとしても実は本来の物質としては小さい小皿にちょこんとのるくらいという可能性も…
いやいや流石にそんなわけのわからない法則があるはずがない。もしそうだとしたらこの世界の人間はみんな餓死してしまうぞ。しかしここは異世界だ。そんな訳のわからない法則がある可能性もないとは言い切れない…
「あ、今『暴食の指輪』つけてるじゃん。これの影響か。」
今気がついたが俺の右手の小指になんとも禍々しい指輪が装着されている。これは『暴食の指輪』と呼ばれ通常満腹ゲージが一杯になればそれ以上食べても換算されない。しかしこの『暴食の指輪』をつけていると一定量までその満腹量をこの指輪に封じ込め、自身の満腹ゲージが減った際に自動的に補充されていくという優れものでほとんどのプレイヤーが所持している。ちなみに料理人衰退の影響のひとつと言えるアイテムでもある。
しかし『暴食の指輪』さえあれば美味しいものを食べ放題ということか。今だけは料理人の職業についていて良かったと本気で思えるな。時間のあるときに美味いものを食べまくって他の時間はやりたいことをやりまくる。飯のことを気にしなくていいとは異世界はなんて素晴らしいんだ!
飯も食べたことだしこの後は残っている熟練度の低いものを上げていくかな。そうなると素材がそのうち足らなくなるかもなぁ。まあその時はその時ということでこの世界で探せばいいか。じゃあ素材がなくなるまで引きこもるとするかな。
ゲームの時と違って今は実体もあるわけだし、ゲームの時には不成功となってゴミになったものも今作ればまた違うものができるかもしれないな。合成の際に素材のレベル差によって合成できないと表記されていたものもシステムに干渉されない今ならできる。もしかしたら新素材の開発もできちゃうかもしれないぞ!異世界素晴らしいな!
「あ、異世界だし未知の素材もそこらへんにあったりして、なんて。」
あれ?そんなこと全く考えていなかったけど普通に考えて異世界だぞ?ゲームの時の世界とは違う…いや外見てないからよくわからないな。普通にゲームの世界かも。けど何かしらありそうじゃね?
今ある素材の合成方法の変化はいつでもできる。俺並みの生産職はそうそういないし俺以外にプレイヤーがいたとしても先を越される確率は少ない。だけど外の世界の素材の新発見は誰でもできるから早い者勝ちだ。俺以外にも誰かしらプレイヤーがいるかもしれない。そうなったら先を越される。せっかくの新発見のチャンスを先に越されたくはない。
それに新素材だけじゃないな。未発見モンスターもいるかもしれない。この世界には運営なんてものもいないかもしれない。だとしたら新モンスターだらけかもしれない。日本にだってまだまだ未発見の動植物があるくらいなんだぞ。こうして家に引きこもっている場合じゃないな!
「よし!急いで外に行こう!」
こうしちゃいられない。さっきまでの引き篭ろうなんていうくだらない発想はとっとと捨てて、急いで準備して急いで行こう。世紀の大発見が俺を待っているんだ!
さてさて人気が出るのかどうか…
人気を気にせずに書けるようになりたいですがやはり書く時のモチベーションが変わるので人気は欲しいです。
なので色々と登録だったり評価だったりお待ちしています。




