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第16話 ハンガ村との別れ

「こんなもんだな。じゃあ準備はいいか?」


「「「はい!」」」


ポーション作りから1週間が経過した。ポーションを作っていた彼女たちの職業レベルが上がったおかげもあり上級品薬草ポーションは2000本以上作成できた。これだけ在庫があれば十分なので彼女たちにはあとは好きな時に作ってくれて構わないと言ったら鼻で笑われた。


なぜかと思ったら作りすぎたせいでもう普通の感覚がわからなくなりポーションを作っていないと落ち着かなくなってしまったらしい。何か悟りを開いた表情をしていた。


さすがにこのまま放っておくとまた俺が村のみんなから責められそうなので村で手に入る材料から作れる薬品の作成方法をいくつか教えておいたら若干笑顔が戻ってきた。


この村だけかもしれないがこの世界の人は新しいものが好きらしい。色々と教えると興味深く聞いてくれるので教えるこちらとしても嬉しい。ただ調子に乗ってやりすぎると目が死に始める。これだけは気をつけなければ…


そして今はとうとうこの街を出発することになり、ポーションを運んでくれる村人と護衛のための村人数人がついてきてくれている。


俺一人でもよかったのだがポーションの数が多すぎて俺では持ちきれなかったのだ。家に持ち帰っておけば良いのだが売る時にどこから持ってきたかと怪しまれるのを防ぐためもある。ちなみに運ぶ方法は人力だ。馬などの馬車を引いてくれる動物がいないのでこれに関してはしょうがない。


それと今後のことを考えて村から町までの街道の整備も多少しておく。護衛の中にあの木こり3人集がいるので彼らに木を切り倒してもらい俺が地面を平坦にして変性し硬質化させる。


最後の地面の作業も村人にやらせれば良いのだが、変性させるのは錬金術のスキルか土系のマジックアイテムを使うしかない。ただ錬金術の職業は上位職で村人たちのレベルでは獲得不可能。土系のマジックアイテムは俺のコレクションを渡せば良いが勿体無いので却下。マジックアイテムを作るにも素材がない。


だからこういった作業分担になっている。道を作りながらだと時間がかかってしまうが、暇がある時にある程度道を作っておいたのでそこまで時間はかからないだろう。


街の近くまで行くとモンスターを討伐するための冒険者や兵隊のための街道があるのでその街道まで道を整備してやれば良い。残り半日ほど作業をすればおそらくその道に開通するとの予想なのでそのまま出発しようということになったのだ。


昨晩は別れの前日ということで俺の送別会が行われた。せっかくなのでいくつかの自前の酒を振る舞い大いに騒いだ。久しぶりの酒ということで村人全員が喜びと俺への別れからか涙を流していた。そんな様子を見て俺も思わずもらい泣きをしてしまった。


本当は今朝早くに出る予定だったのが久しぶりの酒ということで村人たちは二日酔いで起きることができず結局出発は昼になってしまった。


メンバーは俺を含め8人。荷物は収納箱3箱だけなので荷物はそこまでではない。3人が交代で持ち直すことにしておいた。


通常でも街までは1週間はかかる距離あるらしいので今回は道を作りながらだとおそらく倍の2週間以上はかかるだろう。


しかしそのあたりはすでに織り込み積みだ。この移動の最中に俺は少しでも自分の扱えるマジックアイテムを増やすつもりだ。


俺はあの探知系マジックアイテム『蝙蝠の音を拾う者』を使った時のことを忘れてはいない。マジックアイテムによっては俺に何らかの悪影響を与えるものがある。下手をすれば死んでもおかしくはないレベルだ。


しかしこの先何があるかわからない。この村の周囲にはゴブリン程度の雑魚モンスターしかいなかったがこの先レベルが100を超えるようなモンスターと出くわした場合俺は何もできずにただやられるだろう。


そもそも俺は戦いには向いていない。これは俺の性格とかそういう問題ではなく単純に戦闘職でないから戦いに向いていないのだ。それでもなんとか戦うにはマジックアイテムが必要不可欠である。


しかしそのマジックアイテムも使えるかどうかわからないとなったら俺はどうしたらいいかわからない。


俺が今までこの村に滞在している間に使用したマジックアイテムは全て起動術式が内蔵されているもので操作も特定の動きを命じれば良いだけのものだった。


世界樹系のマジックアイテムも世界樹を召喚し命令して動かすだけで倒せるレベルのモンスターならば問題はないがレベル100を超えてくると自ら操作しなければ倒すことは難しい。


一度操作しようと試して見たが全くできなかった。ゲームの時はコマンドを入力すれば動いたが今は動かそうと思っても動かすことができない。料理をしている時のようなあの感覚がないのだ。


おそらく俺のスキルと職業の問題だろう。職業及び準ずるスキルを持っていないとあの感覚は起こらない。だから俺が戦闘をする場合それに関連するスキルも何もないのでうまく力が働かないのだ。


しかし絶対にできないということはないだろう。なんせ武器自体は元々装備ができるものだ。ならば扱うことも可能なはずだ。このあたりの問題はおそらくゲームと現実が同時に存在し混在していることが原因だろう。


この肉体は地球にいた時のものだ。それをゲームのステータスを無理やり反映させたためバグが起きている。音で周囲のエコーロケーションをしようとしても本来そんなことをやったこともない肉体と脳で行えば急激な情報量で暴走や障害により問題が起きる。だから以前の俺は失敗したわけだ。


しかしステータスを反映させているということは本来それをすることは可能なことなのだ。ステータスと肉体が合わさっていない。肉体が追いついていないのだ。だから思いっきり走ろうとすると足を動かした際に空回りを起こし転ぶ。前にやった時は村人に見られていて恥ずかしかった…


まあどこまでできるかわからないがせめてある程度戦えるようにしてアイテム作成に何の問題も起こらない程度にはしておこう。究極とも呼べるマジックアイテムの作成には膨大な量の情報量が常に頭に入ってくる上に並列処理をいくつも行わなければならない。スキルによる補正などがあっても正直不安なので当分の間は作成不可能だろう。


今作ることのできるマジックアイテムはレベル100くらいの特殊作成アイテム以外のものくらいだろう。まあ当面作る予定はないので問題はない。


「村長殿。今までお世話になりました。とは言っても当分隣の街で商売をするので時折商品の仕入れに伺います。」


「いつでもいらしてください。この村のものにあなたを嫌うものなどおりません。ここをあなたの故郷のように思ってもらえれば幸いです。」


「故郷…そうですね。ここは大事な私の故郷の一つです。また必ず伺います。それとこれを渡しておきましょう。」


俺はポケットからあらかじめ作っておいた首飾りを村長に手渡す。村長も初めて見たもののようで珍しそうによく眺めている。


「…これは?」


「御守りですよ。大事にいつも身につけておいてください。きっと何かあったときに役に立ってくれると思いますから。」


「そうですか。あなたからの頂き物なら大切にさせてもらいます。」


村長が首に下げ、可愛らしい木彫りの人形が見えたのを確認して俺たちは出発した。

村の子供達は俺たちの姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。




出発してからは順調に進んで行った。途中でモンスターとも遭遇したがレッサーゴブリンが数体なので何の問題もない。道もあらかじめ作っておいたものがだいぶあるので今日と明日歩き続けて明日の夜に道の終わりに着く頃だろう。


作られた道を歩いていたとしても護衛の村人は全員黙ったままである。下手に物音を立てると周囲のモンスターにここにいることがバレて無駄な戦闘が起きかねないからだ。静かにしていて俺もちょうどよかったのでマジックアイテムの練習を始める。


使うのは『蝙蝠の音を拾う者』だ。これの起動を最小限にして半径10mのエコーロケーションから始めることにする。一定の周波数で周囲を感知するため通常の生物には感じることもできない。こっそりやるにはちょうど良いだろう。


試しに一度使ってみる。使用した瞬間に情報が入り込んでくる。正直少し目が眩んだがこの程度なら何の問題もなさそうだ。しかしここで焦る必要はない。まずはこれを10秒ごとにやることから始める。


1時間ほど経った頃だろうか。周囲の環境を目を開けた状態でも視覚と聴覚の両方で観ても何の違和感もなくなった。むしろより鮮明に見えるようになったため視覚そのものが強化されたようなそんな印象さえ受ける。


ここで刻んでも良いがこの調子なら20mでも問題ないかもしれない。ちょうど良いことにこの『蝙蝠の音を拾う者』というマジックアイテムは魔力の消費が少ない。しかもそれを最小限の能力で使っているので使用量よりも自然回復量の方が高いのでいくら使っても問題はない。


移動を始めてから6時間ほど立った頃に今日の野営地に到着した。もうだいぶ日も沈んでいたため急いで薪を集め必要な準備を始める。


俺も今日の練習はここまでにして食事を作る。食料は村から持ってきたものを使うので現地調達はしない。まあ何日もあるわけではなく明日のぶんまでがかろうじてある程度なのでそれ以降は現地調達になる。


ちなみに今日の練習で半径50mの感知は可能になった。50mを超えた段階で他のことも同時にやってみようと思い錬金術でガラスを作り色々と小物を作ってみた。


これが意外にも難易度が高くなかなかうまくいかなかった。歩きながら目と耳で周囲を見てアイテムを作る。この3つの全く違うことを同時に行うと言うのはなかなかの高難易度だ。料理を並列化して行った時とはレベルが違う。


料理の並列化は特定の命令を与えれば勝手にやってくれた。しかし今回は全て自分で考えてその時その時に行わなければならない。脳への負担が多いのだ。しかも今までにやったことのないことだと尚更難しい。しかしこれはなかなかやりがいもあって面白い。


とりあえず明日は半径100mの感知と同時にもう2つほど新しい作業を同時にできるようにしよう。



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