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第13話 閑話 誰も知らないもう一つの危機


「ハジメタナ…デハ、ワレラモイコウ。」


村人達が戦いを始めた頃。戦っている場所とは真逆の方向。そこに今村人達が戦っているゴブリン達を超える数のゴブリン達が集結している。それらを統率するのはゴブリンオーガ。しかも1体ではない5体ものゴブリンオーガが指揮をとっている。


しかもその実力は村人達側のゴブリンオーガを上回る。今村人達と戦っているゴブリンオーガは一番の下っぱである。奴の目的は村人達を殺すことではない。村人達を追い出すことだ。


正面から派手に村を襲い村人達を村から追い出す。そして村から追い出された人間達を食らうのだ。もしも人間達が強く戦いが均衡していた場合は戦力の集まっている反対側から一気に村を襲い村人達の背を強襲するのだ。一人でも多くの人間を殺し力をつける。それが我らの使命なのだから。


村へ近づきしばらく待っていたがどうやらこの村の人間はやるようだ。未だに突破できていないようだ。ならば仕方ない。我らが村へと突撃しようではないか。


「ミナ、ワレニツヅケ。ニンゲンドモヲクイニイクゾ。」


彼らの侵攻は気がつかれないようにゆっくりと物音を立てずに進む。たとえ敵が何者であろうと油断はしない。強者としての誇りはあるがそれ以上にこんなつまらぬところで死ぬ気は無いからだ。


しばらく進むと村を守る壁が見えた。かなりの防衛だ。しかし我らならなんの問題もない。すぐにでも突破できる。しかしそのリーダー格のゴブリンオーガの前に一つのおかしなものが現れる。


それは葉が生えていない一本の小さな木。その先端は丸くなっており一つの穴が空いている。妙におかしなものの前にゴブリン達の動きを止めさせる。


「ナンダ…」


「お?興味を持ってくれたかな?しかも言葉が話せるのか。これはすごい。オーガは普通言葉なんて話せないのに。これは亜種ということでいいのかな?」


ゴブリンオーガは驚きのあまり動きが止まる。今喋ったのはなんだ。声はあの変な木の先の部分から聞こえた気がした。いや間違いない。あれが喋ったのだ。なんなんだあれは…


「ナニモノダ…」


「何者か、か…すまないね。この世界で名乗る名をまだ決めていない。まあ君達が襲いかかっている村人の一人だよ。これで十分だろ?」


やはりあの木の先端から声が出た。しかも動物と同じように穴の開いた部分を口のように動かして話しているのだ。あれは明らかな異常種だ。しかしここまで来て引くつもりは更々ない。


「ダレガテキデアロウト、クラウダケダ」


「片言でわかりにくいけどちゃんと聞こえてるよ。いい敵意だ。残念なことにこれは音が聞こえるのと言葉を伝えることしかできなくて見ることはできないんだ。君のような勇猛なモンスターは是非とも見ておきたかったけどしょうがない。敵は倒すだけだ。」


これはわかるぞ。俺は今挑発されているんだ。あんな木に何ができるというのだ。相手をしてやる必要もない。避けて回り込めば良いだけだ。無駄に時間を使う必要などない。ゴブリンオーガは指示を出す。全軍に再び進行する命令を。


「ふむ。もう少し話していたかったけどそっちがその気ならしょうがない。こっちももうすぐ忙しくなりそうだしね。とっとと済ませよう。」


何をするのかと笑いながら見ていた。しかしその笑みは一瞬で引き攣ることになる。今まさに進行していた方向に突如空をも覆い隠すほどの壁が現れたのだ。ありえない。こんな魔法などありえない。そもそも魔法なのかも怪しい。こいつが人間なのかも怪しい。全てが…全てが怪しく、恐ろしい。


「『侵略の世界樹』と言ってね。魔界で育つ世界樹なんだけどその性質は周囲にいる魔物を全て自分の養分に変えてしまうんだ。自動で追尾してくれるし吸い取るのは養分だけだから骨と皮とカラッカラの肉は残るから君の素材は無駄にはならない。今回の戦いにまさに最適な武器だと思わないかい?」


恐怖のあまり足が動かない。こんな時に自分の頭の良さを恨む。もうどうしようもないことがわかってしまったのだ。逃げることはできない。生き延びることはできない。希望なんてない。ただ、ただ死を待つことしかできない。


「タ、タスケ…」


「それは無理だ。それじゃあね。」


男の声が聞こえ終わるとともに攻撃が開始された。走馬灯のごとく殺されるまでのことがひどく長く感じた。周囲のゴブリン達が一瞬にして小枝のように搾り取られていく。自分の兄弟分だったゴブリンオーガも一瞬で干上がる。ナンバー2だと思っていたゴブリンオーガもなすすべもなく死んでいく。


戦うべきではなかった。ここに来るべきではなかったのだ。しかしそんな後悔をしてももう遅い。もう何もかもが遅いのだ。全てが遅すぎたのだ。


「モウシワケアリマセン…ヘイカ……」


そしてゴブリンオーガは息絶えた。後に残っているのは元が何か判別もできないほどに干からびた物体だけである。その数は1000を軽く超えている。それほどの数のゴブリン軍団が一瞬にして消え去ったのだ。


「そういえばこのまま放って置いたらまずいか。土の中に埋めておこう。あのオーガみたいなのは後で土の中から取り出して持って帰る事にして。おっと…もう終わったなら話す必要はないか。それにしてもこの使い方便利だな。今後も活用しよう。」


そう言って木は消える。周囲にあったはずのゴブリン達の死体とともに。




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