第12話 決着とその後
ゴブリン達との激闘の翌日。今日は朝からゴブリン達の死体を回収して耳を切り取り山のように積み重ねていく。なぜ耳を切り取ったかというとゴブリンの討伐証明として耳を提出すれば幾らかの金が入るとのことだ。
まあその金を払ってくれる国はどうなっているか全く連絡がつかないので耳を切り取る意味はあるのか疑問だがまあ彼らの自由にさせてやろう。ちなみにゴブリンは後で全て燃やしてしまう。
ゴブリンは素材にもならないし肉も食えない。魔石もないのではっきり言って邪魔なだけのモンスターだ。とはいえ放置しておいても腐敗し別のモンスターがよってくる原因となったり病気の原因にもなりそうだ。
今日はこの作業だけで丸一日潰れてしまいそうだ。俺も村人達に混ざってゴブリンの耳の回収…ということにはならず別行動をすることになった。
恩人の俺にこんな雑務をさせるわけにはいかないとのことらしい。その代わり食事はお願いしますとのことなのでそういうところはしっかりしている。そういうことなので俺はどうせなので別行動を取っている。
俺は別行動をとるにあたり3人の村人を連れてきた。俺の手伝いという名目が強いが村人たちは護衛のつもりらしい。結局俺は直接ゴブリンを倒さなかったので俺自身にはモンスターを倒す力はないということになったみたいだ。
実際のところあのゴブリンオーガの攻撃を防ぎ転ばせたりと色々やったのだが防御や妨害が得意なだけと思われたらしい。ゴブリンと戦う前に木々を切り倒したのはそういったことに特化した魔法があるといったらすんなり信じた。もともと魔法に対する知識量が少ないので騙しやすいのだろう。
そういうことで俺はやることをやっている。今は手伝いとして連れてきたこの村の木こり3人集を使って村の周囲の木々を切り倒している。まだ村の全域に櫓を建てていないのでその材料が必要なのだ。それに昨日一晩村長の家に泊めて貰ったがどの家もボロボロでひどい状態だ。家もどうせなので綺麗にしてやろう。
「旦那ぁ。まだ足りませんかぁ?」
「俺たちいりますか?旦那の魔法で一発じゃないですか。」
「こんなことならゴブリンの片付けの方が何倍もマシだ…」
「まだまだ足りないから頑張れ。弱音吐くんじゃないよ。レベルも上がって切るの早くなっているんだから。」
3人は腰に手を当ててため息ばかりついている。こいつら髭もじゃでみそぼらしい格好をしていたので爺さんかと思ったのだが今朝髭を剃ってきたら意外にも若かった。おそらく…30代じゃないだろうか。ほぼ俺と同い年くらいだ。いや…俺より若そうだな。
それに一晩たち朝食を作って待っていると村人全員が集まってきたのだが全員見違えるように変わっていたため一瞬思考が停止した。全員昼の食事でだいぶ体つきが良くなったと思ったら一晩のうちにもうごく普通のレベルまで体つきが回復していた。
異世界の人間恐ろしいと思っていたのだがどうやら村人たちも驚いたらしい。考えられるのはレベルアップだがレベルの上がっていない幼い子どもまでも肌がツヤツヤしている。なので原因は確実に俺の作った飯だろう。俺恐るべし……
「それにしても木が簡単に切り倒せるな。これも旦那の飯のおかげだな」
「旦那も言っていたがレベルアップのおかげじゃないか?」
「どのくらい上がったんだろうな?かなり強いんじゃないか俺たち。」
「ん?なんだ確認してないのか?結構上がってるぞ。」
「「「え!?なんでわかるんですかい?」」」
どういうことだ?レベルなんてステータス画面でいくらでも見られるじゃないか。
……そういえば俺この世界に来てからステータス画面開いてないな。ログアウトの画面が出ないから確認もしてなかったけど。
「ステータスオープン……って出ないのか。じゃあ確認のしようもないのか。」
「旦那?何ごにょごにょ言ってるんですかい?」
「なんでもない。気にしないでくれ。村では普段どうやってステータスを確認していたんだ?」
「ステータスの確認はでかい街に行ってどっかのギルドに金払って確認してもらってました。冒険者ギルドか商業ギルド…あと場所によっては教会だったり国や領主に頼んでましたよ。」
なるほどね。おそらくだがステータス鑑定用のマジックアイテムを持っているのは金持ちだけなのだろう。確かに鑑定系のマジックアイテムはなかなか金がかかる。ただ鑑定はかなり重要な魔法だからな。誰もが必ず持っている魔法だろう。金をかける価値はある。
「なんだったら今鑑定してその結果教えてやるよ。ちょっとこっち来い。」
「え!?本当ですかい?」
「旦那鑑定のできる魔法具まで持っているんですかい?」
「まあ旦那なら持っていても驚くことじゃないか…」
そう言って全員こちらに集合してくる。俺は紙とペンを出して鑑定結果を書いてやる。鑑定はすでに終わっていたのですぐにすむ作業だ。
「ほら、これだ。」
「か、紙なんて高級品ですよ!?」
「しかもこの紙真っ白でスベスベだ…」
「だけどこの文字はなんて読むんだ?さっぱりわからん。」
しまった。つい日本語で書いてしまった。言葉はゲームの頃の自動翻訳機能が作動したらしくごく普通に通じた。普通に通じてしまったからつい日本語で書いてしまった。それにこの国の言葉なんて全くわからないぞ。読むぶんにはおそらく自動翻訳機能が作動する可能性があるが書くのは勉強しない限り不可能だ。
「すまん…それは俺がいた国の言葉だ。それじゃあ読めないだろうし返してくれ。」
「か、返すんですかい?」
「せっかく旦那から貰ったものだから大事にとっておきたいです!」
「読み方を教えてください!旦那の言葉に興味があります!」
「そ、そうかじゃあ一人一人読んでやるよ。」
なんか返してくれって言ったら本気で嫌がったので返してもらうのはやめる。元からあげるものだったので別に良いのだがこの世界には存在しない言葉だし覚えてもしょうがないだろう。まあそれでも本人たちが知りたがっているのであれば簡単に教えてやろう。
「まずはお前からな。キノス=リィル。職業は木こり、農民、拳士。腕っ節は強いみたいだな。職業の組み合わせはイマイチだけど武器がなくても戦えそうだ。」
「そ、そうっすか?へへへ…」
「次にボウ=リィル。職業は木こり、釣り人、拳士。なんかキノスと似ている職業だな。それで最後はハッス=リィル。職業は木こり、大工、拳士。全員リィルってつくけど兄弟かなんかか?それにしては似てないけど。それに全員拳士持ちって…面白いな。」
「リィルってのは俺たちの故郷の村の名前ですよ。貴族じゃないんで家名なんて立派なものはありませんよ。」
「拳士ってのは腕っぷしで戦うんでしょう?多分昔っから俺たちは殴り合いをしていたもんだからきっと神様がそうしてくれたんでしょう。」
なるほど村の名前か。確かに家名は街に住んでいたり何かない限りなさそうだな。それに必要ないのかもしれないな。小さい村みたいだし同じ名前になることはなかったんだろう。それにしても少し気になることがあった。
「神様がそうしてくれたって…職業を選べないのか?」
「選べませんよ。そんなことは聞いたこともありませんね。」
「俺たちは親父が村で木こりをしていたんで職業に木こりがついたのかなぁ?」
「職業は神の気まぐれってやつですよ。貴族になると職業によって跡取りが決まるらしいですよ。」
そうなのか。ゲームの時は自分のなりたい職業ごとに自由に選択できた。この世界では職業はランダムで勝手に付与される。どうなるか全くわからないから下手をすれば全く自分の仕事に関係ない職業の付与をもらうことになるかもしれないのか。下手をすれば職業によって人生が決まる世界か。楽なようで自分の人生を決められてしまうという不自由の中で生きていくのか。
「そういや旦那。レベルは聞いてませんよ?」
「そうだったな。だいたい全員同じだ。昨日初めて会った時はレベル12。今はだいぶ上がって18だ。木を切りまくれば今日中にレベル20になるかもな。」
「本当ですかい!たった1日でそんなに強くなったのか…」
「木を切るとレベルが上がるんですかい?そんなの聞いたことありませんけど…」
「もしかして職業が関係しているんですかい?」
「その通りだ。木こりは木を切ることによって経験値が発生するからな。普通はモンスターを倒すしかないんだけどな。自分の職業に合ったことをするとそれに応じてレベルが上がる。だからキノスの場合畑を耕してもレベルは上がるぞ。」
そんな事実を教えてやると目玉が飛び出るほど驚いていた。そのくらい常識な気もするんだけどな。意外と知らない新事実だったみたいだ。ちなみに職業を受け取る前のレベル10以下はそういった制限はなく料理をしても畑を耕してもモンスターを倒してもレベルは上がる。
ただしモンスターを倒すよりも経験値がかなり少ない。料理によっては経験値が入らないこともある。おそらく20代でもレベルが10に満たなかった村人は村の食糧事情からまともな料理を作れずまともに経験値が入ることがほとんどなかったのだろう。モンスターも日頃から倒しているわけでもないのでレベルは上がりにくいのだろう。
この3人については普段、木こりとして木を切っていたので知らず識らずのうちにレベルが上がっていたのだろう。
3人ともなんとも嬉しそうに喜びながら自分の職業について話している。なんとも幸せそうだ。
「ほら。聞いたらとっとと作業に戻ってくれ。今日中にある程度はこなしておきたいんだ。」
「「「へーい」」」
全く気の抜ける返事だ。まあ仕事はしっかりやってくれるので問題はないのだが。
作業をしていると3人はまたおしゃべりを始めた。さっきからくだらない話ばかりなのでわざわざ聞くような野暮なことはしていない。仕事さえしてくれればそれで良いのだ。
「それにしても俺たちって運がいいよな。」
「何がだよ?」
「いや…確かに運がいいな。あれだけのモンスターと戦って生きている。」
「それもあるけどよ。旦那に会えたことの方だよ。」
「確かにな。旦那のおかげで村の危機は去ってうまい飯が食える。」
「それもそうだ!そういやもう一つ運の良いことがあったぞ。」
「もう一つ?鑑定してもらったことか?」
「お前の嫁さんが元気になって激しかったことか?こっちまで聞こえてきたぞ。」
「そうじゃねぇよ。いや、まあそれもあるけど…そうじゃなくて昨日のゴブリンの件だよ。」
「「昨日のゴブリン?」」
「ああ。ガルも言っていたけどゴブリン達がまとまって攻撃してきたおかげであそこの防衛だけで済んだだろ?もしもあれが村の周り全部に散らばっていたらまた状況が変わってくるぜ?」
「確かに…バラバラに来られたら対処しきれなかったな。」
「あんだけまとまって来てくれたからな。あそこに全部の戦力をまとめるだけで済んだから確かに運が良いな。」
「ま!所詮はゴブリンってことよ!頭の回らないモンスターだからそんなもんなのよ!」
「おーいお前ら。いつまでも喋っていないでちゃっちゃと動けよ。俺は一旦戻って飯作ってるからしばらくしたら飯くいにこいよ。」
「「「へーい」」」




