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第10話 決戦!その2


村人たちによる攻撃が始まる。手数はそこまで多くはないが確実にゴブリンを倒していく。しかしゴブリンの数が多すぎる。倒しても倒してもむしろ数が増えているようにさえ思えてくる。しかしゴブリンたちでは俺の作った『再生の断璧』を突破することはできない。必死に壊そうと壁を殴りつけている。


しかしそれは格好の獲物だ。真下にいるのならば狙いが甘くても簡単に倒せる。ただバリスタではそこまでしたの位置を狙えないので壁までたどり着いているゴブリンは全て投げ槍によって仕留めてる。あまりの数に当初補助にまわっていた村人も投げ槍に参加している。


力がなく遠くまで飛ばすことが難しい村人でも真下にいるのであれば簡単に倒せる。投げ槍もバリスタの矢弾もどんどん無くなっていく。まだなんとか材料は足りているがこのままでは足りなくなる恐れまで出てきた。


しかしそんな状況でもまだ敵の親玉であるモンスターが出てこない。正直近くまで来たことは音によって判断したのだがそれ以上は戦闘が始まってしまって音が混ざり合ってしまいわからなくなってしまった。


もしもその親玉がこの状況を観察しているとしたら厄介な相手である。観察をするというのはそれだけの智力があるということである。俺の知る限りオーガはそんな智力を持ち合わせていないはずだ。ゲーム時代のオーガは突進するしか能のない脳筋野郎として知られていた。


もしかしたら俺の見立てが間違っている可能性もあるが今の所得られた状況から考えられる可能性はオーガのみである。俺の見立てが違う場合。それは一定の智力を持った全く俺の知らない種類。つまり新種のモンスターということだ。それを思うと思わずにやけてしまう。


是非ともそいつを見て見たい。できることなら飼って見たいが俺にはテイマーの力はない。こんな時あいつがいたらよかったが仕方ないだろう。しょうがないので今回に限っては血の一滴たりとも無駄にせず俺のコレクションに加えさせてもらおう。


そんな時ふと目の端に一人の村人が入った。木にもたれかかっているその女は先ほど櫓から逃げようと飛び降りた女だ。その目には涙が浮かび唇から血が滴るほど噛み締めている。先ほどのモンスターの侵攻を見て心が折れたと思ったがまだやる気はあるようだ。





私の目の前を村のみんながせわしなく走り去っていく。みんなが一丸となりモンスターたちと戦っている。いや…みんなではない。そのみんなの中に私は含まれない。私は逃げたのだ。慌てふためき逃げて無様に櫓から飛び降りた。


飛び降りた際に私の両足は折れ、右手からは血が滴っている。村の何人かが私をこの木の横まで連れて来てくれた。本当だったら家まで運ばなくちゃいけないけど今は時間がないからごめんねと言って自分たちの作業に戻って行った。


謝るのは私の方だ。みんなで一丸となって戦うはずの中から逃げてこんなことになって…私はなんの役にも立っていない。私はみんなの足を引っ張っただけだ。みんなの気持ちに水を差しただけだ。


涙が止まらない。不甲斐なくて、悔しくて、情けなくて、惨めで、こんなにも弱くてちっぽけな自分が嫌いになる。こんな自分は大嫌いだ。こんなことになるならあのモンスターの中に飛び込んで死んだほうがマシだ。こんなことになるなら…こんなことになるなら故郷が襲われたときにみんなと一緒に死んだほうがマシだった。


「いつまで泣いているんだ?」


泣きじゃくる私に誰かが声をかけて来た。涙のせいで前が全く見えない。しかしこの声はおそらくこの村を助けてくださったあの男の人だろう。私は涙を拭き声のした方を見る。


「悔しいか?まだ戦う意思は残っているか?」


「た……たた…戦いだいでず!」


「もう逃げないか?死ぬかもしれない恐怖からもう逃げずに立ち上がって立ち向かうことができるか?」


「はい!もう逃げません!」


「じゃあもう泣くな。今治してやるからじっとしていろ。」


そういうとその人のつけていた指輪が光りだす。その光は温かく優しい光だった。その光はすぐに消えてしまった。何が起きたのか全くわからない。


「もう大丈夫だな。じゃあ行ってこい。」


「え?どういう…」


何を言っているのかと思ったがすぐにどういうことかわかった。先ほどまで噛み締めていた唇の痛みが消えたのだ。擦れて確かめると傷跡も残っていない。そして私は今唇に触れた手を見る。その手は先ほどまで血が滴るほどの怪我を負っていた右手だったからだ。


足を見ると折れ曲がっていた両足は元の通り傷ひとつない綺麗な状態に戻っている。これで私は戦える。これで私は今日のことを一生背負わずに生きていくことができる。

私はお礼を言おうと顔を上げる。すると彼は私を見ずに私の隣を見ている。どうしたのかと声をかけようとすると彼のほうが先に口を開いた。


「すまない。君にお願いがある。」





「奴ら倒しても倒してもきりがねぇ!」

「おい!こっちの槍が少なくなって来た誰か補充に来てくれ!」

「すまん!一旦交代してくれ!」


皆槍を投げる腕にも限界が近づいて来ている。すでに数人が交代している。かなりの数のゴブリンを倒したがまだ湧いて出てくる。しかし誰一人として諦めようと思う者はいない。なんせ今までここまでゴブリンを倒したことなどなかったからだ。せいぜい1、2体。それ以上はこちらの村人にも死人が出た。


しかし今はどうだ。誰一人やられることなくこれだけの数のゴブリンどもを倒している。ここまでくると疲れどころかむしろ力が湧いてくる。そんなことを思っていると森の中から一回りでかいゴブリンが出て来た。


今まで後ろで隠れていたがこの状況にたまらず飛び出して来たってことか。どうだゴブリンども!人間様をなめるなよ!


「が、ガル!なんか今出て来た奴らおかしくないか?」

「あ、ああ…何か奴ら…仲間の死体を持っている?」


キリーとスッカに言われてよく見るとあの後から出て来たゴブリンたちは仲間の死体を担いでこちらに向かって来ている。何が目的なんだ?

いや関係ない!こちらが優勢なのには変わりないんだ。どんな奴が来ようと倒せば良いだけだ。


「あのでかいのを狙ってやれ!何を考えているかわからんが倒せば関係ない!」


俺の言葉を聞いて二人はでかいゴブリンを狙い始める。だがちょこまかと動いてなかなか当たらない。ここは無視してすぐそこにいるゴブリン達を倒すことを優先するべきか?


そう思った時二人の槍がでかゴブリンの前に落ちてでかゴブリンの足を止めた。するとそれを狙っていたようですかさずバリスタの矢が飛んでくる。そのバリスタの矢が見事でかゴブリンに命中…したかに見えた。


「お、おい…あれって…」

「仲間の死体を盾にしやがった。」


「それが目的だったのか…くそ…」


たかがゴブリンだと思っていた。奴らには知能なんてものは存在せずただそこにいる生物に向かって攻撃しているだけだと。しかし奴らは頭がキレる。まさかこんな手があるとは思いにも寄らなかった。


そこからは俺たちは今いる確実に倒せるゴブリンに標的を変える。あのでかゴブリンはバリスタ組に任せよう。見ていると何体かのでかゴブリンを仲間の死体を担ごうと動きを止めた瞬間を狙って倒していた。さらに死体の担ぎ方が甘いでかゴブリンを狙ってバリスタで倒していた。


しかしそれでもバリスタをかいくぐり壁付近まで来ているでかゴブリンが増えて来た。そんな奴らが何をやるかと見ていたらこちらに向かって仲間のゴブリンの死体を投げて来た。しかしそんなに重いものが壁を超えるほど高く上がることはない。壁にぶち当たりおしまいだ。


しかし時折投げつけてくる俺たちが投げている槍やバリスタの矢弾を投げつけてくるときは少し危ない。何本かに1本は壁を超えてくるのだ。しかしゴブリン達はうまく投げることはできておらず木片を投げているのと何ら変わりない。当たってもかすり傷で済む程度だ。


そんなことを繰り返しているとようやくゴブリン達の増加が落ち着いて来たように思えて来た。かなりの数を倒し目の前はゴブリン達の流した血の海となっている。死体をゴブリン達が投げまくっているので真下くらいにしかゴブリンの死体がない。


いや待て、これはおかしい。俺は思わず槍を投げる手が止まる。そうだ、これは明らかにおかしい。俺は再び真下をみるゴブリン達が明らかに…近くに見える。


「いかん!ゴブリン達に死体を集めさせるな!!奴らは…奴らは仲間の死体を積み重ねてこの壁を越えるつもりだぞ!!!」


俺の声に仲間達の顔色が一斉に青ざめる。奴らは初めからこのつもりで死体を集めていたのだ。仲間の命なんてどうでも良い。死んでもそれを道具として俺たちを食うことだけを考えて動いている。しかしゴブリンにここまでの知恵があるなど聞いたこともない。おそらく…いや間違いなく奴らに指示を出している知恵の回るモンスターがいるはずだ。


絶対にこの壁だけは超えさせない。越えさせた瞬間俺たちの勝ち目が無くなる。なんとしてでも防がなくてはならない。


しかしその瞬間は思いの外早く、あっという間に訪れた。でかゴブリン達の突進。正面のでかゴブリンに数本の投げやりを当てても倒れずに突っ込んでくる。そして奴らは仲間の死体と、仲間の頭を踏み台にして壁をとうとう飛び越えた。


でかゴブリン達は壁を、俺たちの足場さえも飛び越え村の中の地面へと降り立った。せめて落ちた衝撃で足でも折らないかと祈ったが奴らはピンピンしている。村の中へ降り立ったでかゴブリンは計3体。たった3体でも俺たちの注意を移すことは可能だ。その隙にさらに多くのゴブリンが村の中へ…その瞬間俺には終わりを告げる音が聞こえた。


「縛れ世界樹よ。」


しかし俺に聞こえた終わりを告げる音はすぐに勘違いに過ぎないとわかった。そうだ。俺には…俺たちにはこの人がいた。俺たちの命を救い、村の危機を救ってくださった救世主が俺たちには付いているではないか!


「木こりの皆さん。出番ですよ。」


「「「おう!」」」


地面から生えて来た木のツタはゴブリン達の体の自由を的確に奪った。そしてそこに斧を持った3人の村人達が斧を持って走り寄り一撃ででかゴブリンの首をはねる。


「へっ!そうそう簡単に入れると思うなよ!」

「いや…もう入られた後だろこれ。それ言うのはおかしいだろ。」

「強いかと思ったけど木を切り倒すよりか簡単だったな。」


なんともふざけたセリフだがこいつらのおかげでこの村の危機は去っただろう。それにしても…


「お前ら!いつの間にかいなくなったと思ったらそんなとこで休んでたのか!」


「や、休んでいたとは失礼な!」

「そうだぞ!俺たちはこうしていざという時のために…」

「まあさっきの木を切り倒したので腕疲れちゃって槍投げられそうにないからな。」


全く減らず口を…しかし奴らの後方待機ということでゴブリンが飛び越えても問題はなくなった。これで心置きなく戦えるというものだ。


「みんな安心しろ!ゴブリンにこの壁が越えられてもあいつらがなんとかしてくれる!どんどん越えさせてやれ!」


「「「馬鹿野郎!越えさせんじゃねぇ!!」」」


「お、俺も敵を縛れる数に限りがあるからできるだけなんとかしてください。」


そんなやり取りで一度は危うくなった場面も難なくこなすことができた。ゴブリンの数も減り始めている。このままなら勝てる!





そいつは見ていた。先ほどゴブリンに指示を出した通りに奴らは壁を超えて中に入っていった。しかし少しも状況が変わることはない。おそらく失敗したのだろう。


本来ならゴブリン達が中へ入り相手を混乱させてから俺が突撃する予定だった。しかしこうなってしまってはもうダメだろう。多くの仲間がやられたがあの人間達の血肉でその借りを返してもらおう。


撤退という言葉は存在しない。そこに餌があるのならばそれを喰らう。ただそれだけだ。




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