エピローグ01 この世界に戻りて
鳥のさえずりが聞こえる。
雨戸の隙間から微かに日の光が差し込んでいた。
「うーん…!」
俺はぐーっと背伸びした。
そしてふと隣を見ると…。
「う、うぇ…!」
隣には赤い髪の女の子がすやすやと寝息を立てていた。
アルエット…いや、アルフレッドだ。
「ん…」
アルフレッドが寝返りを打った。
「うえぁ! み、見え…!」
服の間からチラッと見えてしまった。
…小さい。
“向こうの世界”では俺が“この体の中”にいたから分かり切っていたことだが…。
さて、何故アルフレッドが俺のとなりにいるかと言うと…。
目覚めてから数日で、俺は医者も驚く程の回復を見せた。
そして2週間程で退院することが出来た。
そしてアルエットになったアルフレッドが一言。
「僕、家無いんだ。」
ええええ、今までどうしてたの? アルフレッド君!
そして母上が一言。
「あら、それならウチに来ればいいじゃない。ねえ、飛鳥!」
な、何をおっしゃってるんですか? 母上!
「うん、娘が出来たみたいで嬉しいわぁ。」
母がご満悦というような顔になった。
そんなこんなでアルフレッドが一緒に住むことになったのだ。
“向こうの世界”では一緒に寝ていたわけだが、逆になってからはどうも慣れない。
というかファンタジーな世界だからOKなわけであってその…。
俺は壁に掛かっている時計を見た。
まだ朝の5時半か。
台所からは料理のにおいがする。
母さんが朝食を作っているのだろう。
俺はアルフレッドを起こさないように起き上がると台所に向かった。
「あら、飛鳥。早いのね。」
「あ、うん。母さん、おはよう。」
俺はまな板の上を見た。
そこにはまだ切られていない野菜が置かれていた。
「それこれから切るやつ? 手伝うよ。」
俺はそう言って、包丁を握った。
「え、危ないわよ? 飛鳥。」
母さんが俺を止めようとした。
「大丈夫だよ。」
俺はトントンと野菜を切り始めた。
「あれ、あんた。いつの間にそんなに包丁使える様になったの?」
母さんが目を丸くした。
「え、それはその…」
“向こうの世界”では女子力を上げるためにアルフレッドに教えてもらってたからな。
でもそんなことを言っても理解できないと思うけど。
「んー、何でかな? でも料理って楽しいよね。」
「そうね。フフフ…。ありがとう、飛鳥。」
母さんがにっこりと笑った。
「な、何だよ…。母さん。」
俺はいきなり気恥ずかしくなった。
「いえね、まさかまたあんたと話せる日が来るなんて思ってもみなかったわ。」
「あ…」
“向こうの世界”に行く前、俺は荒れていた。
母を裏切り、何度泣かせてきたことか。
「その…、ごめん。母さん。」
「良いのよ。今はこうして話せているわけだし。それにしても…」
母さんが俺に視線を俺に向けた。
「アルエットちゃんだけど、あんた達どこで知り合ったの? 私、あんたにあんな可愛い彼女がいるなんて知らなかったわ。あんた達、随分前から知り合いだったような感じだったけど、あんなに目立って可愛い外国人の子が近所にいたら噂になりそうなのに。」
い、いつのまにかお友達から彼女になってるし…。
ま、まぁ“向こうの世界”では恋人だったわけだし、間違いでは無いが。
「うーん、何て説明してよいのやら。」
俺は説明に困ってしまった。
「おはようございまーす!」
元気な声が聞こえて来た。
アルフレッドだ。
「おはよう、アルエットちゃん。まだ寝てていいのに…」
母さんが笑顔で答えた。
「そういう訳にはいきませんよ、ママ。あ、朝ご飯作ってるんですか?」
アルフレッドは母さんをママと呼んでいた。
「僕も手伝いますね!」
「アルフレッドはそこに座ってて! 今日は俺が手伝ってるから!」
アルフレッドを制止した。
「そ、そう? じゃあそうするね。」
アルフレッドは大人しく椅子に腰かけた。
「アルフレッド…? アルエットちゃんのこと…?」
母さんが少し怪訝そうな顔になった。
「いや、あ、あだ名だよ…。ハハハ…」
あ、みんなの前ではアルエットって呼んだ方が良いかな。
俺は苦笑いで頭をかいた。




