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俺・プリンセス  作者: 風鈴P
第10章 王都決戦編
109/121

第101話 終焉、そして(2)

「・・・!」

意識が玉座の間へと戻った。

俺は体を起こそうとした。


体が重い。

“父”に魔力を奪われたからか。

だがそんなことは言ってられない。


「お父様…!」

漸く体を起こし、俺は少し離れた所にいた“父”に話し掛けた。

「む…?」

“父”が俺の方を見た。

「生きておったかアルエットよ。」

「はい。そう簡単には死ぬわけにはいきませんので…」

俺は倒れまいと壁に寄りかかった。

「ククク、殊勝な事だ。ならば命だけは助けてやろう。儂の成すことをそこで見ておけ。」

“父”はそう言うと身を翻そうとした。

「お父様はそんなもので満足なのですか…?」

「何…?」

俺の言葉に、“父”がむっとした表情で俺を見た。

「お父様は私の力の全てを奪えていない。私の魔力の一部を奪っただけに過ぎません。」

「ほう…?」

“父”が歩み寄り、俺の胸倉を掴んだ。

「説明してもらおうか…?」

“父”は厳しい表情で俺を見た。

「レオポルドお兄様の知識を奪ったのであれば、私は“アスカ”と呼ばれる人格を宿しているのをご存知でしょう?」

「それがどうかしたのか?」

「“アスカ”は私の魔力を大きく増大させる魔力増幅(極大)と言う固有スキルを持っています。それを奪えていないお父様は、初代様には遠く及びますまい。」

「なるほど…。だが何故お前は儂にそれを伝えるのだ?」

“父”が俺の首を絞め上げて来た。

苦しい。だがここで怯むわけにもいかない。

「それは…、ようやく私、アルエットが体を奪い返すことが出来たからです。お父様が強大な初代様のような力を持てば、まさにナイザール王国の版図を大きく拡大させることが出来るでしょう。お父様が英雄となる事こそ、偉大な父の娘たる私の喜び。どうぞこの力をお使いください。」

「クク、ハハハ! アルエットよ。お前のような孝行者を我が子に持って儂は幸せだぞ。お前の言う通り、お前を苦しめたアスカとやらの能力を奪ってやろう。」

俺の襟元を掴む“父”の手が光り始めた。

「く…、くは!」

俺の体が弛緩していく。


尊大な“父”の事だ。

これが俺の企みかもしれないと思っていようが、それは取るに足らないものだと考えているだろう。


「ククク、なるほど。これは素晴らしい能力だ。我が力が膨れ上がっていく。ハーッハッハ!」

“父”は俺の力を奪い終えると、俺を遠くへ投げ捨てた。

「アルエットよ。褒めて遣わす。そこで休むが良いぞ。」


薄れゆく意識の中、俺は“父”の姿を目で追い続けた。

俺は死ぬだろうが、最後まで見届けたい。


「ククク…、余興であの魔族の力も奪って行くとするか。」

“父”がその場を離れようとした。

「・・・」

“父”が突然歩みを止めた。

「む、何だこの感じは…? く、くは!」

“父”が吐血した。

そして苦しみながら俺を睨み付けた。

「アルエット…! 貴様何を…!?」



簡単な話ですよ、お父様。魔力の増幅が貴方の限界を超えたんです。



「ぐぉぉ!!!!!」

“父”が苦しみに悶え始めた。

髪の毛を掻きむしり、のたうち回った。

俺(アスカ)の能力でまだまだ魔力が膨れ上がるだろう。

そしてその先には…。

「許さぬ! 許さぬぞぉぉ! アルエットォォォ!」

“父”が手に魔力を纏わせ、俺に殴りかかって来た。



ズドォ!

“父”の拳が俺の腹部にめり込んだ。



ああ、これは内臓が潰れたな。

でももう痛みなんか感じない。

お父様、もうそろそろですね。

これで…お終いです。



“父”がその場にうずくまった。

眩い閃光が辺りを包んだ。

そして激しい衝撃が辺りを破壊していく。

俺の体は吹き飛ばされた。

間もなく俺は意識を失い、ここから消えていくだろう。

ナイザール王家の終焉を、俺は見届けたのだ。





















薄ぼんやりと何かが見え始めた。

窓から柔らかい光が差し込んでいた。

ここは…どこだ?


ぼやけていた視界が漸く定まり始めた。

俺は辺りを見渡した。

「ここは病院…? あれは夢だったのか…?」

ふと窓の方を見ると、燃えるような赤い色をした花が花瓶に活けられていた。

「綺麗…。まるであの子の髪のような赤…」

そうつぶやいたとき、俺はハッと飛び起きた。

「う、いてて…」

暫く寝ていたであろう体が悲鳴を上げていた。

それでも俺は小さな洗面台のほうにある鏡の方へ歩いた。



「な…」

鏡に映ったのはいつもの“俺”じゃない。

背は“俺”よりも少し小さいだろうか。

髪の色は栗毛で、少し幼さを残した整った顔。

…これはアルフレッドだ。

「な、なんだこりゃああああああ!」

俺は思わず大きな声を上げてしまった。

何で鏡にアルフレッドが!?

訳が分からない。



「あ、飛鳥!? まさか目が覚めたの!?」

中年の女性が慌てた様子で病室に入って来た。

「え、あ、か、母さん?」

この女性は俺の母親だ。

「飛鳥、飛鳥!」

母が俺を抱きしめて来た。

「母さん、痛いよ。」

「ご、ごめんなさい。つい嬉しくって…」

母が涙でくしゃくしゃになった笑顔で俺を見て来た。

ああ、こんな母さんの嬉しそうな顔を見るのはいつ以来だろう?

「母さん、目が覚めたばかりで混乱してるんだけど、俺、どうしてたのかな?」

「あなたはね、電車の事故で意識不明だったのよ…」

「そ、そうなんだ…。」

駅のホームで突き飛ばされ電車に衝突したのは間違いなかったらしい。

カレンダーを見るとあの事故の日から半年くらい経っているようだ。

あの世界では1年以上経っていたはずだけど…。

やはりあれは夢だったのだろうか?

でも俺の顔は明らかにアルフレッドになってたし…。

「ねえ、その赤い花は母さんが飾ってくれたの?」

俺は窓際の台の上の赤い花を見た。

「ああ、それはね。1週間くらい前なんだけど、あなたの友達だっていう女の子が持ってきてくれたのよ。あなた、外国人のお友達なんていたのね。でもあの子、あなたの高校の制服を着ていたわね。そうそう、これが一緒に持ってきてくれたカードで…」

母がカードを差し出した。



A・F

カードにはそれだけ書かれていた。イニシャルだろうか?



「そう言えばあの子また来るって言ってたわ。前に来た時はこれくらいの時間だったし、そろそろかも…」

コンコン!

病室のドアをノックする音がした。

「噂をすればあの子かもね。はーい、どうぞ!」

母がドアを開けた。

ドアを開けるとそこには赤髪の女の子が立っていた。

「やっと目が覚めたんだね、アスカ。僕の方が少し早かったね。」

女の子がにっこりとほほ笑んだ。

「え、アルエット…? いや、あなたは…!?」

俺は女の子に駆け寄った。

そしてその華奢な体をぎゅっと抱きしめた。

「た、ただいま! アルフレッド!」

「おかえり、アスカ。」



俺(アスカ)はアルフレッド、アルフレッドは俺(アルエット)に。

どういう訳か入れ替わってしまったが、俺達はまだ再会することが出来たんだ!



その様子を母がにこにこしながら見つめていた。

そして一言。

「ああ、でも飛鳥。あなた達付き合ってもいいけど色々と自重してね。まだ高校生なんだからね?」



― 本編 完 ―


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