異世界の少女(ウリエル視点)
ウリエルが捕まるまでの流れと、陽菜との邂逅です。
「……ミカエル…もう一回言ってくんね?」
引き攣る頬をなんとか抑えつつ、同じ四大天使であるミカエルに聞く。
ミカエルは苦笑し、同じことを言った。
「だから、結城陽菜のところに向かうのはウリエルになったんです」
「何でだよぉぉおおお!?」
机に突っ伏した俺の頭をミカエルは撫でた。
結城陽菜は三年前、巫女とともに召喚された少女だ。
フィアンマータに軟禁されてて、近づけない場所にいる。
けど二ヶ月くらい前。
結城陽菜は脱走したんだけど…。
あいつ自身の魔力は、召喚された時に感じたから分かる。
「でもよー、結城陽菜の通った場所って残留魔力の密度が高いだろ?今は何も感じないけど」
これのせいでなかなか見つけられない。
しかも今は魔力が感じられねーし。
主は生きてるって言ってたし、魂も来ないから信じてるけど怪しくなってきたよなぁ。
ミカエルはそれですが、と資料を渡してきた。
受け取って内容を見て、目を見開く。
「これ…」
「一ヶ月ほど前、スクレッツァに彼女が入国したのがわかりました」
スクレッツァに入国してからの足取りは無いらしい。
だが、だいたいは分かった。
「……行ってくる」
立ち上がって部屋を出る俺にお土産はいりませんよ、と言うミカエルに異常にイラついた。
「…………で、失敗したんだよなぁ」
いつもの癖とかで間違えて来たキアーロ王国。
スクレッツァに行こうとしたら奴隷商人に捕まった。
これ、ラファエルとガブリエルに知られたら笑われる……。
首につけられた首輪を触る。
これはただの鉄の首輪だ。
これに魔法をかけて俺の魔力を抑制してる。
でも完全にではない。
手首には隷縛の腕輪。
……効果無いけどな。
扉を炎で覆う。
溶かしたりはしないように集中。
神から授かった炎は、ただの人間の魔法では消えない。
時折来てはドアノブに触って火傷してるみたいだが、関係ない。
こっちだって仕事があんだよ。
捕まってから一日が経ち、既に誰もこっちに来なくなった。
炎はそのままにして首輪を取れないか試す。
苦しくてうめき声が出た。
不意に誰か来た。
どうせ入れないだろうと思ったら、水属性魔法を使われて炎を消される。
「は…!?」
あの炎は神からのものだ。
それを相殺した!?
すっかり炎を消された扉が開かれ、少女が入ってくる。
「失礼します」
澄んだ綺麗な声が部屋に響く。
扉を閉めた少女は俺の首輪や腕輪を見て眉を顰める。
俺は舌打ちした。
「もう人間が来やがったか」
「いえ、捕まったので情報収集に歩いてたらここから魔力を感じたので、とりあえず入っただけです」
即答で答えられてポカンとする。
しかも呆れるようなことや驚くようなこと言ったり……しかも戦うって何だ、戦うって!
「私、スクレッツァ王国以外、もしくは家族を介した人以外の人はあまり好きじゃないんです。一部を除いて、嫌いでもないですが」
その言葉にもしかしてと思い、結城陽菜か聞くと肯定された。
とりあえず俺も名乗って、羽も見せたら驚かれた。
なんかヘコム……。
「しっかし、アンタはスクレッツァにいると思ったんだけどな」
「黒鈴様から依頼を受けまして…」
「依頼?」
何で依頼なんだ?
された説明に呆れてしまう。
「……ギルド所属の相手なら分かるが、ギルドに所属してない奴にも依頼…」
「行き帰りでの紫凛様の護衛ですからね…」
それでいいのか王族。
陽菜が首輪や腕輪を見る。
腕輪は知ってるのかあまり反応しないが、首輪を鋭い視線で見ている。
俺は首輪を指差した。
「この首輪は魔力を抑制するんだ。これが無かったらすぐに逃げんだけどよ」
「てか、何で天使が奴隷商人に捕まってるんですか?」
「……スクレッツァに行くために降りたんだけど、場所間違えた。目立つからそこから移動しようとして、な」
おい、納得したような表情すんな。
「そういえば、何で主……神様?…神様は、私のことを知ってるんですか?」
「いや、三年前に巻き込まれて召喚されただろ?保護するために探してたんだけどよ…」
「……フィアンマータですか?」
嫌そうに言う陽菜を見て、完全にあの王国はこの少女からも嫌われたなと思った。
こりゃ逃げるわけだ…。
そういえば神狐のハーフな巫女にも嫌われてたっけ。
……王妃達も逃げたから、未来は無いも同然だな…ご愁傷様。
「魔力が強くて駄々漏れなのに隠れに隠れまくってた上、魔力の後が濃厚だからこっちが翻弄されたんだぜ?しかもスクレッツァに入ってからまったく分からねーし」
「なんかごめんなさい」
にしても、可愛いな……。




