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一人の青年(陽菜視点)

眠っているふりをし、品定めしに来ていた男達をやり過ごす。

目を開けて水属性魔法で水を出し、それで触れられた場所を洗う。

洗い終わると風属性魔法で乾かし、『鎌鼬』で両手を縛る縄を切る。

切った縄は破壊属性魔法で消し去る。

そしてそのまま立ち上がった。



「色々探るか」



鍵がかかっていないのを確認し、ドアを開ける。

部屋全体に闇属性魔法を使った強力な幻覚をかけ、縛られたまま眠る私という偽者を作る。

私自身には光属性魔法をかけて光の屈折を使い、姿を消す。

無属性魔法で私を基点にして防音の結界も張る。

これは内側から外側は何も聞こえないが、外側から内側は何でも聞こえる性能だ。


レインさんは私は複数の属性魔法を一度に使うことが出来ると言っていた。

それに今、すごく感謝している。

間違って声を出しても気づかれないし。

にしても、病院みたいに白くて清潔感あるなぁ~……奴隷商人の、多分アジトだろうけど。



「ん?」



なにやら魔力を感じる扉を見つけた。

そこに近づくと、かなりの熱気を感じる。

火でも使っているのかな?

扉に頭を寄せ、耳を近づけると呻き声が聞こえる。

扉もかなり熱く、火のようだった。


結界を消して水属性魔法で扉を温める。

そしたら扉の上の隙間から湯気が現れる。

やっぱり火だったらしい。



「…………」



周りを確認。

誰もいない、気配もしない。

光属性魔法を解く。

風属性魔法で湯気をすぐに消し、水属性魔法をそのままにする。

すると驚いたような声が聞こえた。

……気にしないことにしよ。



「失礼します」



ノックせずに中に入る。

そこには一人のお兄さんがいた。

ただ……人外の、だけど。

人外さんは外見年齢と実年齢が違うことが多すぎて、少し苦手なんだよね…。


短い、黒い髪はところどころ跳ねていて切れ長の瞳は藍色。

整った顔立ちをしている。

ノースリーブの、体にぴったりとした黒いシャツと黒いズボンに包まれた体は体格がいい。

身長は190くらいかな?


扉を閉めて防音の結界を張る。

首にある鉄の首輪と手首にある腕輪を見て、それが何か分かって眉を顰める。

私を見たお兄さんは舌打ちした。



「もう人間が来やがったか」


「いえ、捕まったので情報収集に歩いてたらここから魔力を感じたので、とりあえず入っただけです」



即答で答えたらお兄さんがぽかんとした表情になる。



「私、無いと認識されるくらいに魔力を普段から抑制してるんです。なので私を拉致した人も無力な小娘だと思ってるので簡単な拘束しかしなかったんです」



あ、お兄さん、呆れたような表情だ。



「何だそれ…」


「私としては戦う手段は魔法しかないので、大助かりなんですが…」



「……は?」



変なこと言ったかな?

お兄さん、目を見開いてるし口が開いてるし。

閉めた方がいいよね。



「え、おま、戦うって…」



動揺するお兄さん。

いや、だってね。



「私、スクレッツァ王国以外、もしくは家族を介した人以外の人はあまり好きじゃないんです。一部を除いて、嫌いでもないですが」



月華と一緒に召喚され、来た世界。

拉致と言えることをした世界を好きになれる人は少数だと思う。

……レインさんは、少しずつこの世界を楽しもうなと言ってたけど。



「あ、もしかしてお前が結城陽菜?」



お兄さんがいきなり私の名前を言い当てる。

てか、知ってる!?

何で!?



「俺はウリエル、お前のことは主から聞いてる」

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