ちゅーしてしまいました
「死ねぇぇぇえええ!!」
「ちょっ、待っ…ぎゃああああ!?」
神狐としての神通力と人間としての魔力を混ぜ、威力最大にした火属性魔法『フレイムボム』を無詠唱でアレクさんに放つ。
アレクさんは慌てていたが、そのまま吹っ飛んでいった。
周りからは「団長ー!?」やら「団長に制裁を…!」やら、「ぶっ殺す!!」という声。
今、ぶっ殺すって言った声が陽菜だったような気がするが、それに意識を向けることが出来ない。
「……キス、された…」
顔が真っ赤になったのが、自分でも分かった。
一週間前に黒鈴様が来て、結局は依頼を受けた。
ギルドに行ったらマスターに伝える前に知られてたのは、驚いた。
どうやらあの人はギルドに指名依頼をしたようだ。
指名依頼について説明する。
指名依頼というのは、依頼人が受ける人を指名することが出来る。
受ける人はたとえその依頼のランクより低いランクだろうと、受けないといけない。
あ、ランクについても忘れてたので、ついでに説明。
ランクというのは、階級のようなものだ。
高いのから順にX、SS、S、A、B、C、Eとなる。
私はある事件のせいでX、レインと鈴蒼はめんどくさいからとSS、リアンは一番低いE。
さて、私はアレクさんと睨みあいの最中だ。
アレクさんは私達に護衛依頼を出すのが嫌らしく、黒鈴様はクラークさんに許可をもらってから私達に依頼した。
だからって、何で年長にして家長のレインじゃなくて私に話しに来る、アレクさん。
「何で依頼を受けた」
「王族の依頼は断れないですし、紫凛様の脱走する癖を知ってますので」
ため息を吐き出しながら言うと、アレクさんの表情が険しくなる。
仕方ないと思うんだが……指名依頼には私の名前もあったし。
再びため息を吐き出しそうになった。
「護衛はほとんど男なんだぞ」
「ほとんどなら女性もいるでしょう」
「襲われるかもしれない」
「神狐として相手を殺ります」
「モンスターだって現れる可能性がある」
「ギルド所属なので今更です」
言われた言葉に事実を返す。
神狐は伴侶以外とは行為をしない。
そうじゃない相手に強引に迫られたり、薬を盛られようと反応すらしない。
それ以前に、相手を殺そうとする。
過激だが、それが神狐だ。
険悪な雰囲気になってるからか人が集まってきた。
「陽菜さん呼べー」って聞こえるが、お前は陽菜と話したことないだろ。
私達家族や護衛として騎士団の人達は、先に集まって準備することになっている。
「本当に分かっているのか?」
「分かっていますよ」
む、となって返すと。
「――――これでもか?」
腕を掴まれてアレクさんの方に引っ張られる。
バランスを崩しかけ、さすがに文句を言おうと顔を上げて。
「何す……ん…」
途中で言葉を遮られた。
口には温かくて柔らかい感触、すぐ目の前にはアレクさんの顔。
しかも目を閉じてる。
悲鳴が聞こえる、主に陽菜の。
しかも「接吻した…」と鈴蒼が呟いてる。
…………接吻、て、キス、だよね…?
「俺の言いたいことが、これで分かったか」
口から柔らかいのが無くなり、顔が離れていくのが分かって………………確信。
すぐに神狐の姿になって。
「死ねぇぇぇえええ!!」
「ちょっ、待っ…ぎゃああああ!?」
冒頭に至るのであった。
……ファーストキスな上に、何故か嫌じゃなかったのは言えない!!




