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巫女は炎を受け入れず

ベーデカーに表面上は申し訳なさそうに謝る。

建前の理由としては、「前にも言ったように人前では脱ぎたくないので」。

本音でもあるが。

本当の理由はこいつらに触られたくないから。


にしてもリアン、マーメイドドレスとか嫌がらせか?

私、体の線とか出したくないんだ、基本。

もう着ちゃったから仕方ないんだが。


パーティー会場には既にたくさんの人がいた。

中に入ってその人数を見て、思わず立ち止まる。

ここまでいるとは聞いていない。

私の姿を見た人達は哀れだと言わんばかりの表情。

……この人達はこの王国の王族達のことを、知ってるのだろう。

とりあえず愛想笑いをしておく。

それで私がパーティーでの礼儀作法を知らないと分かったらしい。

一瞬で私を見ていた人達が、国王とフリッツ王子に敵意を向けた。

宰相にもだ。

胡麻擂ゴマスりしてる奴もいるが、どうやらこの国の貴族の中でも上級らしい。

リアンの持ってきてくれた書類に載っていた。



「ツキカ、来てくれたか」



そう言って近づいてきたのはフリッツ王子。


燃えるように赤い髪は腰までで下ろしていて、瞳は金。

甘い顔立ちだが、私を見る目は道具を見るのと同じ。

目潰ししたい。

身長は私よりは高くて細身。

赤をアクセントにした黒の正装をしている。

腰の左側には鞘に納まった剣。


王国の王族は決まって、その国の名前になった属性の色が現れる。

フィアンマータは赤と金、スクレッツァは黒と紫という具合に。

王族じゃない人達は髪や瞳は色々違うけど。



「申し訳ありません、フリッツ王子。ドレスは着慣れていないもので…(あんなド派手なのを普段から着れるわけないだろ)」



ふりっふりなのに露出高いし、真っ赤とかだし。

あ、私の言葉の裏を感じ取ったらしい、同年代のお嬢様方が頷いた。

見たことある……あ、あそこで自分の真っ赤なドレスすごい嫌そうに見てる王女達で納得。



「そうか。なら仕方ないな」



目がめんどくさい女だなと語っているぞ。

この二週間、こいつと会わなかったからかな?

利用される気も飼い殺される気もないけど。

ギルドに所属してるし、紫凛様と陽菜が心配だし。

レインのご飯食べたいし鈴蒼と遊びたいし。

クラークさんの雪香さんへのアタック相談にも乗らないと。

ああ、ジェリーとユリア、ユウと久々に依頼に行きたい。



「行こうか、ツキカ」


「私の名を馴れ馴れしく呼ぶな、フリッツ・バシュ・フィアンマータ第二王子」



差し出されたフリッツ王子の手を払う。

フリッツ王子が愕然としていた。

周りも私の反応に驚く。

多分、私がこの男を愛してると思ったのだろう。



「カール・ベーデカー、よくも私をこの国に拉致してくれたな。それも軟禁した上に隷縛の腕輪…もう壊して私が偽物を使ってるが、忘却の魔法…分からないと思ったのか?」


「な……っ」



ざわつく周り。

「やっぱり」、とか「巫女を奴隷にするなど」、とか聞こえる。

どうやら彼らは私と同じ説明をされたらしい。

陽菜のことを言おうとした時。



「貴様!!」



あの程度の言葉で激昂ゲッコウしたのか、フリッツ王子が剣を抜いて斬りかかってきた。



「愚かな」



格好は普段のものじゃない、動きにくいものだ。

だが、太刀筋が読みやすすぎる。



「フリッツ!?」



国王が叫ぶ。

女性が悲鳴をあげる。


呆れてしまうな。

結界を張るために魔力を解放しようと。



「え?」



出来なかった。

月華の“出来なかった”はどういう意味でしょうか。

次回は大変です。

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