お買い物と騎士団長
「月華……」
苦笑する陽菜の声を無視する。
だって会いたくない奴と会ったんだし。
「無視するな…」
何でそんな泣きそうな声なんです、アレクさん。
陽菜は陽菜で私の肩を叩かないでくれ、頼むから。
仕方なく振り向く。
「…………アレクさんですか?」
「ああ」
一瞬だけ涙目だったのが、即座に涙は消えた。
うわぁ、涙目よりも衝撃的な姿だよ。
アレクさんはいつものポニーテールに銀色の鎧、赤いマントじゃなかった。
髪は右耳の下辺りで緩く結い、黒い無地の着流しという姿。
ちなみに私は着流しと羽織を無くし、いつも下に着ていた白いワイシャツと黒いズボン、ノースリーブの膝まで長い裾がある黒いジャケット。
陽菜はフリルが最小限にだが使われた、淡いピンク色の可愛らしい膝丈の半袖ワンピースにレースの白いカーディガン。
このワンピースは鈴蒼が買ったが、微妙にある場所のサイズが……うん。
おそらくアレクさんは休日なのだろう。
「こんにちは、アレクさん。もしかして今日はお休みなんですか?」
「ああ、それと…」
そう言ってちらりと陽菜を見るアレクさん。
陽菜に惚れたのか?
私の陽菜は簡単には貴様に渡さん。
「彼女は私の友人の陽菜です。陽菜、この人は紅の騎士団団長のアレクシス・バルフォアさん」
「はじめまして。月華の友人の結城陽菜です、よろしくお願いします」
「アレクシス・バルフォアという。アレクと呼んでくれ」
そう言って握手する二人。
……気のせいかな、陽菜がかなり強い力で握ってるように見えるんだが。
陽菜はいい笑顔で、アレクさんは引きつった笑顔だし…。
「(月華に手を出したら……殺す)」
「……」
今、陽菜が何か呟いたらアレクさんが青ざめたような……。
……まぁいいや。
「アレクさん。私達、買い物してるんですが荷物が多くなりそうなので手伝ってくれませんか?」
男組は陽菜の部屋に置く家具とかを買いに行ったし。
「あ、ああ、いいぞ」
陽菜から手を離してアレクさんが頷く。
何故か陽菜はアレクさんを見て笑ってる。
その後の買い物では、陽菜がアレクさんと仲良しだった。
陽菜よ、私は寂しいぞ。
アレクさんには明日とかにお礼としてお菓子とか渡すか。
そういえば騎士団への勧誘が無かったな。
珍しい。




