↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵描きのモーネと傭兵ゴッソ  作者: おしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/13

EP〜藍色の竜編〜 第八話 ゴッソからのプレゼント


「大きいですね……」


 予定より三日遅れて目的地へ辿り着く。

背丈ほどの石壁とその上に鉄の柵が備えられていて、外部からの侵入を防ぐものとして街を囲っている。


 数万人が住む街は、入口から喧騒が抜け出してくるほど賑やかだ。


「あそこから入れる。行こうか」

「はいっ」


 中へ入るための門のそばに、鎧を着た憲兵が左右に立っている。

近づくと憲兵が歩み寄ってきて、ゴッソとモーネを交互に眺めた。



「旅人か?」

「ああ。美術館へ行きたくてな」

「……その子は画家か?」

「そんな感じだ。俺は護衛をしている」

「なるほど。たしかに、絵を描くものを持っているな。身分証はあるか?」

「あいにく、山奥の出身でね」

「ふむ……」


 憲兵はゴッソの瞳を見つめる。

モーネと出会う前のゴッソであれば、この時点で追い返されていただろう。


 瞳には人格が映る。


 おおよそ暴れそうにない、穏やかな輝き。

それを見たあと、憲兵は魔道具を取り出した。


 なんらかの計測をしているそれは、人の悪意を測る代物だ。


 生物には魔力がある。


 その揺らぎや攻撃性を調べ、基準値をクリアした者だけを通すのだ。


 もちろん、他にも通る術はある。


 金だ。


 有無を言わさぬ大金を積めば、街で金を落とすだろうと通してくれる。


 無論、そんなことは一部の者しか知らない。


「通っていいぞ」


 モーネとゴッソは中へ入ることを許され、街の門は引きずるような音を立て左右へ開いていく。


「うわぁ……」


 街の中央へ伸びる大きな道は、道沿いに露店が建ち並び、威勢よく声をだして客を呼んでいる。


 食べるもの、アクセサリー、はては占いまで様々だ。


 行き交う人々も住人から冒険者まで多種多様で、しばらくの間、入口から見える風景をモーネは目に焼きつけていた。


「ふっ。行こうか」


 やがてゴッソは軽くモーネの背を叩く。


「あ……はいっ」


 二人は並んで歩きながら、スパイスを絡ませた肉の匂いにつられたり、キラキラと輝くアクセサリーを品定めしてみたり、まるで観光気分で進んでいく。


「うぅ……お腹がすいてきました」

「何か食べないとな。その前に少し、寄りたい場所がある」

「えっ」


 ゴッソは比較的大きな道具屋を選んで、モーネを待たせて中へ入った。


「いらっしゃいませ」

「買い取って欲しい物がある」

「どういった物で?」

「これだ」


 テーブルの上へ置かれた銀色のネックレス。

蔦を思わすチェーンのデザインを、中央にある赤い宝石が彩っている。


「……しばらくお待ちください」


 店員は手袋をはめ、丁寧にネックレスを布へ乗せると奥へ歩いていく。


 そして、取手にレンズを取り付けたもので、細部まで詳しく調べはじめた。


 いわゆる、鑑定である。


「お待たせいたしました」

「ああ」

「百年ほど前に作られた純銀と朱鉱石ですね。どちらでこれを?」

「護衛のお礼にもらってな。路銀の足しにしたいんだ」

「そうでしたか」


 ゴッソは教会の地下で、さりげなくひとつだけ懐に収めていた。

冒険者ならば、嬉々として全てを持ち出していただろう。


 見つけた宝は発見者のもの。


 これは世界共通の考え方だ。


 しかし、ゴッソは冒険者ではない。

大金が欲しい、いい暮らしをしたい、そんなことはつゆにも思わない。


 旅を続けられるだけの路銀があれば充分だった。


「こちら、百二十万ゴルドでいかがでしょうか?」

「……いいだろう」

「ありがとうございます。では、すぐに用意いたします」


 ゴッソの目の前に置かれた紙幣の束。

想像していたよりも高値で売れ、それはそれで管理が面倒だと息を吐く。


 店内を見て歩くと、マジックバッグを売っていた。

高価なものだと数百万。


 手頃なものだと十万ゴルドほど。


「ひとつ買っておくか」


 ゴッソは百万ゴルドのそれを手に取った。

このクラスから保存機能が追加され、値段が跳ね上がる。

 たすき掛けの鞄は、容量でいえば大きな棚にしまう程度の物を詰め込めるものだ。


 二人旅には充分な容量だ。


 マジックバッグは小型化、容量の大きさにともなって値段が上がっていく。


 腰袋サイズになり、かつ保存機能までついていると一千万ゴルドは下らない。


「これを貰おう」

「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております」


 店員の深々としたお辞儀を背に受けて、ゴッソは店の入口で待っているモーネの元へ向かった。


「あ、ゴッソさん」


 モーネは入口の近くに飾ってあった木彫りの仮面で遊んでいたのか、なんとも言えない見た目で声をかける。


 その奇妙な姿に少しばかり引き攣りながら、ゴッソは購入したマジックバッグを手渡した。


「ほら、これを使うといい」

「これってマジックバッグですか?」

「ああ。安物だけどな。保存機能もついているぞ」

「いいんですか?」

「ああ。長旅になるだろうからな」


 受け取った茶色い鞄を抱きしめて、モーネはひときわ嬉しそうに笑った。

ゴッソが自分のために何かを売ったのだろうと推測したが、資金の出所にはあえて触れなかった。


 ただ、その気持ちだけが嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。