表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

触手って知らないうちに絡まってて、気付いた時にはほどけない

 黒いホブゴブリンとの死闘から三日後。

 薄暗い森の中で、俺は新たに手に入れたスキルを試していた。


 【生命を喰らうもの】、【魔力炉】、そして【風魔法】を始めとする疑似スキル達。


 新たに手に入れたそれらの力は、俺の想像をはるかに超えていた。


「ガァァ」


 目つの前の木――否、トレントが俺の放った風魔法で輪切りにされる。


 それに構わず背後から襲ってくる数匹の蛾の魔物――奴らの繰り出す突風を振り返りもせずに同量の風で相殺した。


 敵の方が数は多いが、魔法の威力も攻撃の手数も俺の方が圧倒している。


 その絡繰りは【魔力炉】というチート能力にあった。

 総魔力量十倍と一秒毎に一割回復するこのスキルのおかげで、俺は魔法を好きなだけ使える。

 当然、【風魔法】はもう手足のように自由自在に扱えるし、戦闘においても出し渋ることなく魔法を放てる。


 その結果が、森の魔物たち相手に繰り広げるこの蹂躙劇だった。


 ホブゴブリンを彷彿させる風の刃の連射により、蛾の魔物もトレントもバラバラになっていく。


 やがて森が静かになり、木々の隙間から差し込んだ光が俺を照らした。


 倒木の影から、ゴブリン程度の大きさの蛾の幼虫達が睨みつけてくる。

 だが、俺がわずかに身じろぎするだけで奴らは背を向けて一目散に逃げていった。


 この薄暗い森のエリアには、もう俺の敵になり得る魔物はいない。


 蛾の魔物もトレントも、大した威力のない魔法しか扱えず、物理的な攻撃力に乏しい。今の俺からしたら一段も二段も劣る実力しかなかった。


 必然的に、得られる生命力も今の俺を満たすには全然足りず、進化ゲージの溜まり方も鈍化していた。


 ……ここらでもう一度狩場移動するべきかもな。


 蛾の魔物からは【風魔法】が手に入るから定期的に戻ってくる必要はあるが、ここに留まっていてもこれ以上得るものはない。


 森の中をゆったりと進む。

 目的地は、この薄暗い森を抜けた先にある山だ。


 ……どんな魔物が生息しているのかはわからない。

 山自体、前に遠目から見つけただけで足を向けるのは始めてだ。

 少しの緊張と、それ以上の好奇心を携えて進む。


 ――その道中のことだった。


 ふいに視界に白い影が映る。

 顔を向けた先にいたのは、通常個体の黒と茶色の組み合わせとは異なる、白い体に青色の斑紋はんもんを携えたイモムシの魔物だった。


 色違いの魔物。

 これまでの傾向からして十中八九レア魔物だ。


 ――今日はツイてるな。


 どんな能力を持っているかわからないが、レア魔物の持つスキルは有用なものばかり。

 手に入れておいて損はないだろう。


 それに、このレア魔物は普通の魔物より生命力に満ち溢れている。

 陳腐な言葉だが、食べた時にめちゃくちゃうまいのだ。


 次のエリアに向かう前に発見出来て、本当に運が良かった。


 イモムシだからそんなに強くないだろう。

 そう思い無造作に触手を伸ばすと……見えない壁に弾かれた。


 防御系のレア能力か?

 確認のため四方八方から触手を伸ばすも、そのどれもが阻まれる。

 ならば力押しだ、と触手を叩きつけるが硬いものを叩く感触とともに弾き返された。


 そのまま連続で触手を薙ぎ払う。

 今の俺の一撃はゴブリンくらい簡単に殺す威力があるのだが、何度叩きつけても弾き返された。


 ……ちょっと手間かかるかもしれない。


 一度攻撃をやめ、イモムシの方を見る。

 奴はその場から移動せず、体を縮こませて短い足を蠢かせていた。


 改めて見ると、俺と同じくらいキモい見た目してるな。


 ブヨブヨとした全身に、短く何本も生えてる足。斑紋は歪で不気味な形をしており、複眼と昆虫特有のあごを持っている。


 ゴブリンと同じくらい体格のイモムシは、その体の大きさに比例するようにキモさも倍増したみたいだった。


「キシィ」


 甲高い声を鳴らし、イモムシが踵を返す。

 うねるように体をくねらせ森の奥へと逃げていくが、その歩みは遅い。

 木の根や地面の窪みに行く手を阻まれながら移動する様子を眺めつつ、一定の距離を保ったまま追いかける。

 もちろん触手での攻撃は継続しているが、何度攻撃しても敵の見えない壁を突破出来なかった。


 このままじゃ埒が明かないな。

 ……手法を変えてみるか。


 俺は距離を詰め、触手で覆うようにイモムシを包囲した。

 そのまま押しつぶそうと力を込めるが、イモムシを中心に半球状の防壁があり、それ以上進まない。地中を掘った触手でさえも途中で阻まれてしまった。


 数分そのまま待機したが、不可視の壁は消え去る気配がない。


 一度触手を解く。

 イモムシは、その場で身を縮こませていた。

 頭を手で覆い、地面にこすりつけるような態勢をとっている。


 ……命乞いのつもりだろうか?

 戦意を喪失し、その場から逃げ出そうともしない様子からは、諦めと懇願のような感情が見て取れた。


 まぁ、それでも俺の対応は変わらないけどな。

 せっかくのレア魔物だ。逃すつもりはない。

 とはいえお手上げ状態なのも事実だが……。


 さらに時間が過ぎていく。


 イモムシはさっきから前足をワキワキと動かしており気味が悪い。

 攻撃の気配は感じないが、時折こちらを伺いながら謎の動きを繰り返していた。


 一体何をしているんだろう?


 その時、何の前触れもなくいつもの電子音声が響き渡った。


 ――ピコン!


 ――通知が一件届いています。


 通知?

 今までと毛色が違うアナウンスに一瞬思考が停止する。

 そのままいつものステータス画面と似た半透明のウィンドウが勝手に立ち上がる。


 そして、俺の目の前に通知内容がでかでかと表示された。




 ーーー

【通知】パーティ申請が届いています。

 差出人:河上静香

 種族:モスキャタピラー

 申請文:お願いします。殺さないでください。


 パーティを組みますか?

 はい / いいえ

 ーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ