こうして、俺はたくさんのスキルを手に入れた
ジュンペイの抵抗が弱まり、瞳から光が消える。
それと同時に、ジュンペイの体から白い光の玉が五つも飛び出した。
光の玉はくるくると宙を舞うと、順番に俺の体へと吸い込まれる。
――ピコン!
――スキル【危機察知】を獲得いたしました。
――スキル【精力絶倫】を獲得いたしました。
――スキル【影潜り】を獲得いたしました。
――スキル【オーバードライブ】を獲得いたしました。
――スキル【ハイパーブースト】と【オーバードライブ】が融合し、【エクストラブースト】へと変質いたしました。
――スキル【骸を糧とするもの】を獲得いたしました。
――スキル【生命を喰らうもの】と【骸を糧とするもの】が融合し、【暴食の権化】へと変質いたしました。
怒涛の通知ラッシュとともに、体に力が満ちる。
だが、急に増えた力に押しつぶされるように体がボコボコと沸き立ち触手が意思とは関係なく暴れ始めた。
――ピコン!
――進化ゲージが100%に到達しました。これより進化を開始します。
さらなる通知とともに、体が光に包まれる。
すると先ほどまでの触手の暴走が収まり、やがて進化の光も消える。
――ピコン!
――アビスローパーへと進化しました
進化した後の姿は、さらに異形度が増していた。
試しに触手を一本持ち上げてみる。
粘液濡れの触手、その先端に牙の生えた口が付いていた。
触手の先に口が生えた。言葉にすればそれだけだが、俺の場合は生命力の吸収速度が何十倍にも加速することを意味する。
もしジュンペイと戦う前にこの進化が終わっていたなら、戦闘の流れも大きく変わっていたに違いない。
……まぁ、過ぎた話を考えてもしかたないか。
今は得た力を確認するよりも先にやるべきことがある。
まずは河上さんの救出だ。
彼女は今も全身を襲う激痛に晒されており、早く助けないとショック死の危険がある。
周囲を探し、先ほどエレノアがジュンペイに吹き飛ばされた際に落とした注射器を拾いあげる。
この中に、河上さんに効く解毒剤が入っているはずだ。
土のドームを割り、河上さんを救い出す。
彼女は苦痛に顔を歪めたまま、全身を縮こまらせて震えていた。
『解毒剤持ってきたよ』
河上さんがうめき声で返事をする。しゃべる余裕も無いのだろう。
触手を蠢かし、急いで解毒剤を投与する。
「あり、がと……う」
河上さんの肩から力が抜け、そのまま彼女は気を失った。しばらく様子を見るが、呼吸は穏やかで表情も柔らかい。
これでひとまずは大丈夫だろう。
次の目的に向けて、振り返る。
視線の先には、崩落した機材の山があった。
触手を引きずりながらそこに近付き、慎重に機材を取り除きながらエレノアを探す。
そうして探索することしばし。
彼女は、機材で下半身が潰された状態で見つかった。
仰向けに倒れたまま口の端から血を流し、眼鏡もひび割れている。だが、胸は上下し喉の奥から掠れた呼吸音が聞こえてきていた。
まだ死んではいない。
「……どうやら、私たちは負けたようだね」
エレノアが、焦点の合わない目で見つめてくる。
「まったく、してやられたよ。……まさか私の薬剤を、利用されるなんてね」
彼女の口から、さらに大量の血が流れ落ちた。
「こんなことなら……研究施設を別に……移しておくべきだった」
そう呟いて、エレノアは静かに瞳を閉じた。
……ここまで激戦だった。
知略も力も、エレノアとジュンペイの二人には負けていた。一歩間違えば倒されていたのは俺の方だっただろう。
だが勝ったのは俺だ。
彼女の【魔に堕とすもの】のスキルがある限り、この先も異世界人はバケモノへと姿を変えられてしまう。
だから、俺がここでその原因を断つ。
目の前で虫の息となっているエレノア。
彼女はこれまで俺が殺してきた魔物達とは違い、意思を持って言葉を交わした人間だ。
その彼女を今から手にかけると思うと、気分が悪くなる。考えないようにしてみても、殺人の二文字が肩に重くのしかかってくる。
……でもここまで来て逃げるのは無しだよな。
これ以上、バケモノに変えられて無自覚のまま殺し合いをする人をなくしたい。
だから――。
触手を使い、彼女の眼鏡を外す。
そのまま、勢いのままに大口を開けて喰らいついた。
乱杭歯が頭蓋を噛み砕く。
血潮が喉を潤し、濃厚な甘みと爽やかな酸味が舌の上に広がった。
……あぁ。なんでこんなに美味いんだろうな。
――ピコン!
――スキル【魔に堕とすもの】を獲得いたしました。




