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轍―WADACHI― 後編



 渦になりだしたこの勢い止められない だろう だが誰も予測不可能



 清蓮がハイキック。


 それをける菊子。


 客席の椅子の上を走り出した清蓮を追いかけだす菊子。


 両者りょうしゃ、空中を走っているかのようなかろやかな動きだ。


 はしまで来てかべり、おうぎを払う清蓮からの衝撃波を受ける舞台の魔物。


 勢いに押され、花道まで戻る。


 二階席まで飛翔ひしょうし、その壁を蹴って、空中で二回転。


 追いかけてきた清蓮と、空中で扇を交える。



 さぁ いま火を灯せ 心照らせ なんびとも集い歌い歌え


 止まない雨など無いんだぜ とこしえに願おう繋いだ手


 いま 火を灯せ 心照らせ なんびとも願えよこの先へ


 止まない雨など無いんだぜ 火の国の光の射す方へ



 一座の中年の女が歌う。


 和の色濃き音色よ響きたもれ うたかたの声とその先照らしておくれ 



 シャンデリアを掴み、反動をつける清蓮。


 そこまで飛翔する舞台の魔物。


 彼女もシャンデリアを掴む。


 かなり揺れるシャンデリア。


 着物の袖を優雅にしなやかに払う菊子の身体。


 にぃ、と笑って見せる清蓮。


 にぃ、と笑い返す舞台の魔物。



 踊っている黒子達にまた歌い手が移る。

 


 さぁ いま火を灯せ 心照らせ なんびとも集い歌い歌え


 止まない雨など無いんだぜ とこしえに願おう繋いだ手



 空中での攻防。


 清蓮は菊子のひ弱な手を叩いた。


 驚いた顔の菊子が落下していく。


 清蓮は手をかざし、気をって、菊子のくずれた態勢たいせい守護結界しゅごけっかいつつんだ。

 

            

 直志が紐を引きちぎった。


「せいれんっ」

 

 

 さぁ いま火を灯せ 心照らせ なんびとも集い歌い歌え


 止まない雨など無いんだぜ とこしえに願おう繋いだ手


 いま 火を灯せ 心照らせ なんびとも願えよこの先へ


 止まない雨など無いんだぜ 火の国の光が射す方へ

 

 

 静かに花道に着地した、清蓮。


 清蓮のまとめた髪が乱れてきた。


 清蓮は自分のかんざしを引き抜く。


 髪の毛がばさりふわりと舞うようになびいた。



 花道にあおむけに倒れた状態の菊子に、清蓮は、ゆっくりとかんざしを示す。


 そのかんざしの先を、首元へと示した。



「ここまでだ」                                     



 曲が終わる。


 ・・・


 数秒の間。



「あはははははははははははっ、おもしろや~っ、おもおしろや~」



 清蓮は手を差し出した。


 菊子の身体を借りて、舞台の魔物が身体を起こす。


 そして、菊子の身体を起こして着物をととのえると、「ありがと」と言って抜け出た。


 それと同時に虚脱して気絶した菊子の身体を、清蓮が抱きとめる。


「きーくーこぉーーーーーーーっ」


 いつの間に目が覚めたのか。


 どうやら腰を抜かした秀春が、泣きながら菊子の側へと這ってくる。



 菊子を秀春に任せ、虚脱した一座や呆然とした直志。



「妖しの術の呪縛、今、解き放たれたり、候」



 台詞かのような言葉で、カーテンコールの仕草をする清蓮。



「お相手していただき、光栄恐悦こうえいきょうえつ


 

 舞台のどこからか、誰かの高笑いが響いた。



 唖然としている一座の者達が、小さく笑い出した。


 清蓮はどこか、嬉しそうだった。



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