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藤大樹





     ❖ ❖  

 



 ―――・・・後日。


 清蓮はその日もスーツ姿だったが、髪はかんざしでまとめてあった。


 花飾りの付いたかんざしだ。


 特等席に、秀春・菊子・直志・清蓮の姿。

 

 演目は『藤大樹ふじたいじゅ』。


 清蓮はふと天井を見上げ、そこにシャンデリアを見つけた。


 歌舞伎御殿でひそかに有名なのが、その豪華なシャンデリアだ。


 豆苗之進は、見事に「やさかひこ」を演じてみせた。


 直志は小声で、舞台を見つめた清蓮に言う。


「清蓮・・・・・・なんだろう、目の奥が輝きはじめそうな、頭に熱がこもってるような」


「すごいな・・・」


「なぁ、豆苗之進、輝いて見えないか」


「ああ・・そうだな」 



 その日の演目も終わり、四人で楽屋に向かう。


 豆苗之進が満面の笑顔で清蓮を迎えた。


「どうでしたかっ?」


「よかったよ」


「やさかひこを、近くに感じました」


「降りて来てたよ」


「『「ええっ?」』」


 座長も含め、楽屋にいる全員が驚いていた。


 座長が言う。


冥利みょうりにつきる、ってやつだなぁ」



 帰り道。



 よろめく菊子。  


「少し、めまいがしますわ・・・」


「大丈夫かい?菊子さん?」


「新しい召使いに着付けさせたんだが。帯のしめかたが悪かったのかな・・・?」


 秀春はうぅん、と唸った。


 おそらく、早々に暇を出そうかな、とか考えているのだろう。


 菊子はふらふらと、舞台に向かった。


 そしてせめて玄関先まで送りたいという一座の、黒子たちもふらふらしている。


「どうしたんでい・・・?」


 菊子がにぃと、笑った。


「あそぶのさぁ」


 みなが、はっとした。


 直志が言う。


「ぶ、舞台の魔物っ」


「また菊子、なにかに憑かれたのかっ?」


 焦り出す秀春。


 菊子は、神がかり体質だ。


 おそらく、何かが憑依して舞台へと呼んでいる。


 清蓮と直志は顔を見合わせた。


 直志は意を察して、うなずいた。


 清蓮が言う。


「あとを、追う」


 一座の者たちに楽屋にいるように言うと、清蓮たちは舞台へと向かった。


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