藤大樹
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―――・・・後日。
清蓮はその日もスーツ姿だったが、髪はかんざしでまとめてあった。
花飾りの付いたかんざしだ。
特等席に、秀春・菊子・直志・清蓮の姿。
演目は『藤大樹』。
清蓮はふと天井を見上げ、そこにシャンデリアを見つけた。
歌舞伎御殿でひそかに有名なのが、その豪華なシャンデリアだ。
豆苗之進は、見事に「やさかひこ」を演じてみせた。
直志は小声で、舞台を見つめた清蓮に言う。
「清蓮・・・・・・なんだろう、目の奥が輝きはじめそうな、頭に熱がこもってるような」
「すごいな・・・」
「なぁ、豆苗之進、輝いて見えないか」
「ああ・・そうだな」
その日の演目も終わり、四人で楽屋に向かう。
豆苗之進が満面の笑顔で清蓮を迎えた。
「どうでしたかっ?」
「よかったよ」
「やさかひこを、近くに感じました」
「降りて来てたよ」
「『「ええっ?」』」
座長も含め、楽屋にいる全員が驚いていた。
座長が言う。
「冥利につきる、ってやつだなぁ」
帰り道。
よろめく菊子。
「少し、めまいがしますわ・・・」
「大丈夫かい?菊子さん?」
「新しい召使いに着付けさせたんだが。帯のしめかたが悪かったのかな・・・?」
秀春はうぅん、と唸った。
おそらく、早々に暇を出そうかな、とか考えているのだろう。
菊子はふらふらと、舞台に向かった。
そしてせめて玄関先まで送りたいという一座の、黒子たちもふらふらしている。
「どうしたんでい・・・?」
菊子がにぃと、笑った。
「あそぶのさぁ」
みなが、はっとした。
直志が言う。
「ぶ、舞台の魔物っ」
「また菊子、なにかに憑かれたのかっ?」
焦り出す秀春。
菊子は、神がかり体質だ。
おそらく、何かが憑依して舞台へと呼んでいる。
清蓮と直志は顔を見合わせた。
直志は意を察して、うなずいた。
清蓮が言う。
「あとを、追う」
一座の者たちに楽屋にいるように言うと、清蓮たちは舞台へと向かった。




