ルルルフ・ナナヤ ▶︎しっぽ。
——あれから1年
たまに手紙が届く。
ホルスからは、北の地域での活動、ナナヤの状態などなど。
ナナヤからは、肉球スタンプが送られてくるだけだ。
「あれ?」
モクレンが今回の肉球スタンプを見て、何か引っ掛かり首を傾げる。
「どうした? 肉球でナナヤの健康でも読めるようになったか?」
ゴルーダが笑いながら訊ねる。モクレンは首を振り、今までのナナヤから送られてきた肉球スタンプを、本棚の一角にしまってある所から取り出してきて、テーブルに並べる。
「ニャ……ナナヤ、肉球だんだん大きくニャってる!」
並べるとわかる成長。
ルルルフが最新の肉球スタンプへ、ぺたりと手を置いてみると、ナナヤの肉球はとても大きいなと感じてしまった。
まさか……と、いちばん最初に送られてきた肉球スタンプへ手を置くと、同じくらいだった。なんならちょっとナナヤの方が大きい。
「ナナヤ、とっても育ってるニャ」
あれからルルルフも少しだけ背が伸びて、だいたい70センチ手前までとなる。
会う人・会うカーチェに、背が伸びたねぇと言われるようになるくらい、育ちはしたようだ。
が、ナナヤの方が絶対に大きいだろうなと、ルルルフだけでなく、ゴルーダとモクレンも思っていた。
「さーて、そろそろ大きな狩りにでも行くかぁ」
「そんニャあっさり言うけど、大変な狩りが転がってくるわけニャいでしょ」
「まぁね」
ゴルーダたちは『大きな』と言うが、ルルルフにとっては『大変な』である。
しかし、大変な狩りといいながらも、心配をしなくなっているルルルフ。
この1年で2度ほど、狩りに同行というか強制連行されたのだ。
あまりにも心配の声をいつもあげるので、自分たちは大丈夫である事を証明するため、超大型モンスターの撃退依頼も入ったことで、ルルルフに見せてやるとカラカラ笑いながら連行。
ルルルフは隠れて怯えて震えながら見ている状態だったが、モンスター相手に怯まず、むしろ楽しんで狩りをする姿をみて、心配することの方が失礼だと理解した。
むしろ、モンスターの心配をするのが正しい気がしてしまうという、意識革命も起きた。
「見てくる」
モクレンはハンターギルドへ、面白そうな依頼を探しに行った。
ゴルーダは家で、帳簿を頑張ってつけ始める。
ルルルフも大きな数字が苦手ながら、ふたりでなんとかベースを整えようと奮闘。
「この、帳簿って意味あるのかニャ……。ハンターさんの収入って、税金かかんニャいよね」
「そうなんだよ。なのに、チームハウス所持者は運営帳簿を出さないといけないっていう、意味わかんない状態だ」
「帳簿専門の人、いニャいの?」
「どこもこの時期は手いっぱいで雇えねぇ。あと、金の持ち逃げが多いんだ……」
「ニャげかわしい……」
帳簿に記す数字より、途中のメモの方に使う紙のほうが多いくらい、数字に強くないふたりは、メモにメモを重ねる。
「続きは明日だな」
「ニャ!」
そう言って頭がオーバーヒート気味のゴルーダは、お昼ご飯まで昼寝をする。
ルルルフはお掃除をして、頭も部屋もスッキリさせようと動き出した。
家の床や窓を磨いて、シーツの洗濯も終えてしぼっていると、そのシーツが手の中から消えた。
「なかった」
面白そうな依頼を探しに行ったモクレンは、空振りで帰ってきて、ルルルフが絞るより自分がやった方が早いので、シーツの水を絞り出してくれた。
「おかえりニャ。シーツありがとニャ」
カーチェに合わせて低く作られている物干し台へ、絞り終わったシーツを広げてお日様をたくさん浴びてもらう。
今日はスッキリ乾きそうだ。
降り注ぐ日差しに、太陽さんお願いしますと、ルルルフは頭を下げる。
家に入り、ゴルーダも昼寝から起きて、なんとか頭をリセットして 昼食をとり、食休みでまったりしつつ、ホルスとナナヤへの返事はどうしようか、わいわいと話をしている。
ルルルフは、ゴルーダのコップが空っぽになっていたので、果実水を持ってきて注ぐ。
「さんきゅー」
「これ、スッキリマシマシなドリンクらしいニャ」
お店のおすすめジュースを買ってきて、みんなの新しい定番も見つけたり、そんな日々楽しんでいるルルルフ。
——ぽてん
静かな落下音が鳴る。
何を落とした? と全員がテーブルの上から下へと視線を動かすも、それらしいものは見当たらず。
「あ、しっぽ」
モクレンが拾い上げる、ルルルフのしっぽ。
「お、ホントだ」
ゴルーダは、モクレンの手の中にある、ルルルフのしっぽを見て頷いた。
=・ω・=・ω・=・ω・=
——北の地域
ホルスの故郷へ、無事辿り着いたナナヤとホルス。
薬を作り、室内で作れる薬草を栽培し、少しずつ薬を増やしていく。そんな生活をしている。
「ホルスー、さっきお散歩してたら、草が生えてたミャ」
「え? どこに?」
「あっちの方の雪に生えてたミャ」
生命力の強い草が雪を破って出てきたのか、雪の上に生えているのかもわからない。ナナヤには薬草なのかすら判別することはできないし、役に立つ草ならナナヤが掘ってしまうのは危険なので、ホルスへお知らせしたようだ。
幸いお散歩程度の距離なので、ホルスも同行して草を見にいく。
「わぁあぁ! ナナヤ、でかしたー!!」
喜びのあまり、ナナヤを抱っこしてくるくる回りだすホルス。訳のわからないナナヤは、とりあえずホルスが喜んでくれているので、ホッと一安心。
「しでかした、じゃミャーならよかったミャ」
その草は滋養強壮に素晴らしい効果を発揮する薬草だそうで、この寒い地域では風邪の予防にも治療薬にもなるという事を説明してくれる。
薬のことはわからないけれど、ホルスの目的、医薬品の普及と発展が叶うならばと、ナナヤも一緒に喜んでいる。
そして、いくつか生えていた草を、慎重に掘り返し持ち帰ると、家にある鉢へ移し育てていく。
昼食を一緒に食べ、今日の予定は無いので、のんびり過ごすようだ。
ナナヤは暖炉に薪を焚べる。
「あ、ナナヤ、しっぽ落ちたよ」
ホルスが笑顔で教えてくれた。




