ウィンドチャイム ▶︎金ランク・特級
「ふぁるうちぇ、ってなんミャ?」
「初めて聞くニャ。ナーチェみたいな種族っぽい気がするニャ」
「あたり」
ヒトヘビ族のナーチェも、村から出てきて初めて知った種族である。といってもクォーターであるパイセーンしか、実物は見たことがないけれど、そういう種族がいると知った。
ホルスがニコリと笑い口を開く。
「ファルーチェは、人やカーチェと同じ言葉を話す、ヒトハヤブサ族だよ」
「強そうミャ!!」
ハヤブサと聞くとイメージは、早い、カッコいい、狩りの名手、といったイメージだ。なのでナナヤは目を輝かせて、ファルーチェに対する期待が高まる。
「あはは、早く飛ぶんだけど、好戦的じゃないんだよ。とくにうちのコは」
「穏やかさんニャ?」
「うん。飛ぶのは早いけど、普段はのんびり屋さん」
ゴルーダはほうほうと頷いて、口を開く。
「じゃあ、たまにでいいから、ウチかハンターギルドに手紙運ばせてくれよ。そうすればこっちの状況も伝えられるし」
「ゴルーダたちが良いならぜひ」
ゴルーダはサラッとお願いをするし、ホルスも応えてくれる。
そして、ルルルフとナナヤの方を見て口を開く。
「あ、ちなみにファルーチェは俺らと同じ言葉を話せるけど、警戒心が強くて他種族と馴れ合うことが少ないんだ。だから町でも見ないし、ましてや交流なんて出来てる奴はほぼ居ない。だから、すごく珍しいことなんだぞ」
「すごいニャ。ファルーチェさんに会えるの楽しみニャ」
「ミャー…ナナヤ、ファルーチェ見たこと無かったミャ」
ナナヤはホルスと一緒に行動することが多かったけれど、見たことがなく、初めて知った存在である。
「あまり実家の方から連絡来ないからね。今回は緊急連絡みたいなもんさ」
普通の手紙では2ヶ月くらい掛かってしまうけれど、ファルーチェなら、人が最短最速で王都やホルスの故郷へ行くよりも、ずっと早く辿り着けるため、ホルスは情報の受け取りが早いそうだ。
故郷で風邪や伝染病が、じわじわ起こり始めていると連絡をもらったため、帰省する事を決めた。
「あ、そうだ。ゴルーダにこれを」
「ん?」
ホルスは荷物の中から箱を取り出して彼に渡す。
「これ、ファルーチェにしか聞こえない素材のウィンドチャイム。ドアベルの反対側あたりに吊るしておいてくれると、目印になるから」
「おぉ、ありがとう」
ゴルーダは箱をパカリと開けると、オシャレなウィンドチャイムに見える物を取り出して、揺らしてみる。
「ね、何も聞こえないでしょ」
「ホントですニャ。棒がぶつかり合っているのに、なーんにも音がしませんニャ」
なので、ドア先に吊るしていても騒音になることもないため、安心してほしいと伝えると、ルルルフは大きく頷いた。
「へー、小さいけど心地いい音だな。外に吊るしていても、家の中まではきこえなさそうだ」
「子守唄みたい」
「なんか、可愛い音って感じミャ」
ホルスやルルルフとは違う答えが、ゴリトリオから返ってきて、ホルスの目はぱっちり開き、ルルルフは驚きで毛が膨らんだ。
「え?」
「ニャ、ニャんにも聞こえニャいよ」
音についての感想も言っているゴリトリオ。
こいつらの聴覚は常人・常猫ではなく超人・超猫のようだ。
だが、騒音のような感じにはならなさそうなので、ホルスは胸を撫で下ろした。
「あー、俺ら感覚鋭いらしいからなぁ」
「おミャーらナナヤよりちょっと鈍いくらいミャから、ニンゲンは超えてるミャ」
なんにせよ渡せた事、音が邪魔にならないこともわかったので、ホルスは胸を撫で下ろす。
そうやって駄弁っているうちに、ドド車屋さんがオープンして、ホルスとナナヤはドド車に乗り込んだ。
乗り込んでも出発まではまだ時間があるので、駄弁りは続く。
「元気でやれよ」
「健康第一」
「ミャ!」
目の前に迫るいっときの別れ。手紙のやり取りは出来る、いつかまたあえる。そうわかっていながらも、今の寂しいを否定したくないルルルフは耳が下がる。
ナナヤもルルルフを見て耳が下がってしまうが、ピンと張ってドド車の上から手を伸ばして握手を求めると、ルルルフもそれに応えぎゅっと握られた。
「次に会うときは、きっと『金ランクの狩猫ナナヤ』だニャ!」
「ミャ……マジミャ? ……わかったミャ!」
しっかり上を目指せ、と激励をもらってしまう。
だが、そんなこと出来ないとは言いたくないナナヤ。出来ることであるはずだ。しっかりルルルフの瞳を見つめ頷きを返した。
「じゃあ、ルルルフ君は、特級家政カーチェ目指さないとね」
ホルスの笑顔付きの言葉に、彼以外の全員が首をガッツリ横に傾ける。
「……え、ちょっと待って、家政カーチェにもランクあるでしょ」
その行動に、ホルスが驚いてしまった。
「ミャ?」
「ニャ????」
どの分野が得意か、程度しかわけられていなかったカーチェギルド内。
説明を受けた記憶もなく、ゴルーダやモクレンも初耳だそうだ。
「えっと、家政カーチェは家政部門で試験があって、合格すると認定証をもらえるんだよ。そこでハンターのランクみたいなものがついて、家政カーチェとして自信にも繋がるんだよ。それで、個別契約のカーチェも試験は受けられるよ」
「……初耳ですニャ。今度家政カーチェギルドに行って、聞いてきますニャ。そして、目指せ特級にしますニャ!」
ルルルフにも目標が見えてきて拳を握る。
専属家政カーチェになったとはいえ、きちんと仕事として技術は磨かないとと思っていたところだ。
「努力家」
「頑張るニャ!」
「ナナヤも頑張るミャー!」
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そして、ドド車は隣の町を目指し走っていった。その姿が見えなくなるまで手を振る。
ゴルーダが肩車もしてくれて、ルルルフに見える果てまで見送る事が出来たので、べそはかきながらも、目標を達成するため頑張ろうと、ゴルーダの肩車上でふんすと息を吐き飛ばす。
「モクレン、どうした?」
「ニャ?」
ゴルーダの隣で難しい顔をしているモクレン。
それに気づいたゴルーダは声をかけると、モクレンはポツリと言葉を落とす。
「金ランク、成猫」
「あ」
「家政ランク、成猫」
「かもなぁ」
珍しくモクレンの言葉のほうが長い。むしろゴルーダの返答は短い相槌のようなものだ。
「ニャー???」
「金ランクってな、仔カーチェじゃなれないんだ。こどもだからな。それと同じ感じで、家政ランク試験ってのも、成猫にならないと受けられない可能性があるかもな、って話だ」
「後でカーチェギルド行ってくるニャ」
「そうだな。とりあえず朝飯どっか食いに行こうぜ」
「賛成」
今の時間でも早朝と言われる時間ながら、開いているお店もあるので、のんびり朝食タイムに洒落込むか。とゴルーダは笑う。
モクレンとルルルフも頷いて、朝ごはんがやっているお店の方へ足を向けた。
ゴリと小ゴリは、家でも朝飯をたべました。




