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国の周辺地図 ▶︎豆つぶとドド車


 ナナヤから発せられた突然のカミングアウトに、ルルルフの毛は膨らみ、ゴルーダとモクレンの目は見開かれている。


「まず、荷物」


 詳しく聞く前に、寮では寝れないナナヤには、荷物を持ってくる時間を先にとった方がいい。モクレンは平静を装いながら言葉を渡すと、ナナヤは頷いてゴリハウスを飛び出して行った。


「ビ……ビックリしたニャ」

「おう、そうだな。なんで辞めたのか、聞きつつ。あれだったら、しばらくここに住んでもらっていいと思ってるが」

「異議なし」

「ニャ」


 とりあえずナナヤを待つ。

 ルルルフはソワソワしてしまう気がしたので、お茶を淹れて待つことにした。香りがいいネコウチャを取り出して、淹れながら心を落ち着ける。


「お待たせミャ!」


 ナナヤは、トランクふたつと大きめのリュックを背負った姿で帰ってきた。

 ルルルフと一緒に来た時に、荷造りしたトランク。これは、ルルルフの家にあったもの。よく覚えている。


「ルルルフ、トランク返すミャ。これ、パパかママのやつミャろ?」

「ナナヤが持っていてニャ。それはナナヤにあげたやつニャ」


 ナナヤは、故郷の家が雷で無くなってしまい、両親の思い出の品はもう手元にはない。

 それならせめて、ルルルフとの思い出の品くらい持っていて欲しいと、ほんのり思ってしまうようで、返すという事を受け入れなかった。


「わかったミャ。大切にするミャ。でもふたつは持っていけミャーから、ひとつだけもらうミャ」

「うん、使ってほしいニャ」


 故郷でルルルフと暮らしてから、物を大切にする事が多くなり、きちんと整頓も覚えたナナヤ。

 トランクも、綺麗な状態で使われている。


「明日、ホルスと街を出るミャ」


 いきなりズバンと言い放つナナヤ。荷物を部屋の隅に置かせてもらい、ソファに座る。


「経緯は?」


 省略っぷりがモクレンを超えているので、誰も何もわからない。話せる内容かわからないけれど、モクレンは質問をしてみた。


「ホルスは故郷である北の地域に、お薬作りに行くらしいミャ」


 北の地域というのがピンとこないルルルフは、首を傾げるが、ゴルーダとモクレンは納得してるのか数度頷いていた。


「あー、北の地域ってのは、この国にあるんだけど、船を使わないといけないし、1年のほとんどが雪の地域なんだ」

「さ、寒そすぎるニャ……」

「寒いよ」


 ゴルーダは棚から地図を出して、テーブルに広げた。


「俺らの住んでいる国は、陸続きじゃなくて、3つのエリアがあってな、他の国とも陸続きになっている真ん中のエリアが、今いるところだ」

「これ、ニャに??」


 国周辺の地図を見た事がないルルルフは、絵本に描いてある宝の地図のように見えて、ちょっとだけ目を輝かせている。


「この国の周辺地図」


 短い言葉で全部わかる答えが返ってきた。

 絵本で見るような物でありながら、実は自分の住んでいるところにも同じようなものがあって、ルルルフは一層目を輝かせて、食い入るように地図を見た。


「あ、ナナヤも地図ちょっとだけ覚えたミャ! 今いる王都がここで、故郷のイーディン村がここミャ!」


 ナナヤは王都レタハトの位置と、イーディン村を爪を出して指し示す。


「ニャ??」


 その距離はそれなりに近く見える。故郷の村からこの街まで、大きなウサギのようなドドが引くドド車で、片道3日掛かる距離だ。


「ニャ???」


 自分では決して移動できなさそうな距離が、地図上で豆つぶを4個くらい並べた距離である。


「ニャ???」


 理解が追いつかないルルルフ。


「そんで、ホルスの故郷はここミャ」


 ナナヤの爪が示すのは、豆つぶ10個以上ある距離だ。


「あー、港町か。ならまだマシだな」


 ゴルーダはうんうんと明るい顔で頷いている。

 モクレンも安心したのか、ホッと息を吐いた。


「ニャ????」


 そんな遠いところへ行くのに、何が安心なのか。

 よくわかっていないルルルフは、頭からぽぽんぽんとハテナしか出てこない。


「んで、ナナヤはホルスの専属護衛になったのミャ」

「おぉ、専属」

「すごいニャー」


 わかる言葉が出てきて、ルルルフは拍手を送る。


「だから、ホルスと一緒に行くんミャ」


 ハンターギルドを通しての護衛依頼でも良かったのでは、と思ったためゴルーダはその事を訊いてみると、ナナヤは首を振る。


「ナナヤは、ホルスにご飯の面倒を見てもらうのミャ」

「あー、そーゆーことかー」


 ゴルーダ、モクレンは納得の顔だが、やはりルルルフはハテナを大量生産だ。


「ル、ルルルフにも、わかるように説明してニャー!」


 半分目を回しながら、なんとか出した声。

 ゴルーダは一瞬ポカンとしたが、ルルルフは家政仕事をするカーチェで、ハンターに関してはほぼ何も知らない事を思い出す。 


「わりぃ、わりぃ。まず、何から説明しようか。そうだな、ナナヤがこれから行く場所は、ドド車を乗り継いでも1ヶ月は掛かる場所だ」

「……乗り継ぎって、どういう意味ニャ??」

「この街から出ているドド車は、隣り合っている町までしか運行してないんだ」


 この街から2つ隣の町まで行くには、隣の街で別のドド車に乗らないと、2つ隣の町までは行けない。

 街をいくつか渡るような、人・カーチェらを運搬するドド車は、ほぼ出ていない。

 荷物に関しては、それなりの量の荷物が集まれば、町をいくつも越えて運搬はする。


 そのため、ナナヤとホルスは、街から街へ村へ町へと、様々な町を通り、ホルスの故郷へ行くため、とても時間がかかる。


「と、遠くへ行くのって、大変ニャのね……」

「ハンターは町から町へ流れる奴も多いから、あまり気にしてないんだけどな」


 ルルルフとナナヤが王都に来た時は、故郷イーディン村の商猫が所有するドド車に乗せてもらったので、他の町や村に立ち寄る事なく直通だったが、もっと遠くの村にいる人やカーチェは、町から町へのドド車を乗り継いで、ここにやってくる事を教えてもらった。

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