温かな激励 ▶︎絶妙なバランスの。
たくさんのプレゼントは、部屋の隅へ積み上げられた。
元々プレゼント置き場として一角が空いていたようで、何かとみんな準備がいいようだと、パイセーンは感心とやや放心が入り混じる。
「さて、そろそろ……って、アネイゴさんどこ行ったニャッチ?」
辺りを見回すも、アネイゴが見当たらない。
幹事であるアネイゴに、始まりのコールをしてもらいたい。そう思っていたところに、アネイゴが階段を上がって戻ってきた。
きっとトイレにでも行っていたのだろうと、どこへ行ったのかなどとは問わず、パイセーンはアネイゴへ進行をお願いする。
アネイゴも頷いて、乾杯のコールをあげる。
「みんにゃー、ルルルフのために集まってくれて、ありがとうございますにゃー! ルルルフ、これからもプロの家政カーチェとして邁進するにゃーよ! かんぱーい」
「「「かんぱーい」」」
「みニャさん、ありがとうござますニャー!!」
主役はルルルフという仔カーチェであるため、この場のアルコールは禁止である。
ジュースやお茶などが木のコップに注がれていて、木の当たる音が響いた。
ビュッフェ形式なので、皆好き好きに料理をとり、なくなったものは店員によって補充される。
「このパスタ美味しいですニャ」
「そうニャッチ。ここのエビクリームパスタを超えるところに、オイはまだ会ったことが無いニャッチ」
初めて来たお店なので、いろんな料理をちまちま楽しんでいる。
お店の通常メニューをビュッフェ形式にして出してくれているので、参加者は普段食べないものも気軽に楽しんでいる。
「ルルルフ、家政カーチェギルドにずっといればよかったのに。アネイゴちゃんみたく」
「そう言ってくださり、嬉しいですニャ。でも、ニャんか契約してしまうのがいいかニャって、ピンと来たんですニャ」
「カンならしょうがないわね」
決めたのがカンだなんて、迷信じみている感じもしなくもないが、カーチェのカンは、結構信じている人が多い。
そのため、カーチェにカンと言われると、何故かその方向の方がうまくいくのだろうと思いがちだ。
「みニャさん、よく言いますニャよね」
「そうなんだよ。なんでかわかんないけど、人間のカンより、当たりやすい感じがするんだよなー」
変わるがわる、いろんな人と話をするルルルフ。
思い出話、カーチェの話、お掃除の話、お店の話……色々な話題が飛び込み、楽しいひとときを、たくさんの人と過ごした。
そして、3時間ほどでお開きとなる。
喋って食べて飲んで、あっという間であったが、ルルルフへの激励を送りたい人々は嬉しそうだった。
いくらこの街にいて、また会えるとはいえ、新たな旅立ちであることには違いなく、しっかりとおめでとうと頑張れを伝えたい。そんな温かな思いを、ルルルフはしっかり受け取った。
お開き後、おとなたちはこっそり飲屋街へ。子連れの人は帰路へ。
各々の時間を過ごしに戻っていった。
「プレゼント、なんとか荷車に載ったミャね」
「手伝ってくれてありがとニャ。荷車も借りてきてくれて、助かったニャ」
「あいつら、渡すだけ渡して、帰りを考えてミャーのも、どーかと思うミャ」
アネイゴからの開始コール前に、彼女を呼び出して荷車を一緒に借りにいってもらったナナヤ。
ナナヤはまだ仔カーチェなので、レンタル品を借りられない。
ハンタータグを見せて借りる手もあるけれど、どうせならおとなであるアネイゴについてきてもらった方が、何もかも早そうで、協力を依頼したそうだ。
荷物は崩れそうで崩れない、絶妙なバランス状態でなんとか載り切った。
ナナヤが前で、ルルルフが後ろから押す。いつものスタイルで、ゴリハウスまで慎重に歩く。
「ゴリー!」
ドアベルではなく、ゴリベルを使うナナヤ。
そんな都合よく出てくるわけもないだろうと、思いつつも、今の状態は、ふたりとも、むしろどちらか片方でも手を離すと、荷物は雪崩を起こしてしまいそうで困っていた。
「ゴリじゃねぇーってーの!」
都合よく出てきてくれて、ルルルフとナナヤはホッと一息だ。
「ゴルーダって呼んでも、絶対に出てこないミャ」
「ドアベル使えっての」
「今、この荷物、ぜつみょーなバランスで頑張ってるんミャ。助けてくれミャ」
「それなら、しゃーねーな」
ゴリベルも止むをえず。と思ってもらえたようだ。
ゴルーダは上に載っかっている絶妙なバランスの荷物をヒョイヒョイ取り、家の中へ運び入れていく。
モクレンもいつの間にかやってきて、テキパキ運び入れてくれた。
「ありがとうニャ、ありがとうニャ」
「助かったミャ……マジで。家にいてくれてよかったミャ。ありがとうミャ」
荷物を載せたはいいが、運ぶことで頭がいっぱいになり、降ろす事を考えていなかったルルルフとナナヤは、ゴルーダ・モクレンへ、たくさんありがとうを伝える。
「大丈夫」
荷車という面積の限られたエリアに、必死に頑張って詰めていたのだろう。
往復する手もあったが、お店から出ないとと焦っていた事が容易に想像できたモクレンは、焦りに満たされていたルルルフの頭を撫でる。
「あ、お片付けしニャきゃ」
「明日でいいだろ」
「ダメニャ!」
今日の荷物は今日のうちに。
いつもゴルーダたちに言ってるのに、自分は明日に回していい理由はない。と、ルルルフは立ち上がる。
「ルルルフ、明日にしてミャ。いまこの荷物ルルルフの部屋に入れたら、ナナヤ泊まれミャい」
泊まるつもりのようだ。よくある事なので、当日言われても誰も何も気にしない。この家には、ナナヤ用のお泊まりセットもあるくらい、ナナヤは高頻度で泊まっている。
「ん? 寮には帰らないのか?」
そこまで遅い時間でもないから、寮はまだ開いているはずだが、と疑問に思ったゴルーダは、首を傾げつつ問う。
「ギルド職員辞めてきたから、寮から出ないといかんミャ。荷物はまとめてあるから、今から取りに行くけど、もう寝れないミャ」




