送別の原因 ▶︎プレゼント爆撃
月が変わり、ルルルフが俗称ゴリハウスの専属カーチェになった。もともと通いの仕事をしていたのもあり、不便もなく勝手知ったる職場である。
「雇用ってより家族」
モクレンはトーストを頬張りながら頷く。
通いカーチェの頃は、朝ごはんを一緒に食べることが無かったし、寝る直前のおやすみの挨拶もしなかったが、今はおはようからおやすみまで、同じ屋根の下だ。
「じゃあ、モクレンはお兄ちゃんで、ゴルーダはお父さんかニャ」
「ちょっと待った!! 俺、モクレンとそんな年変わらないからな?!」
「ニャーーーーー?!!!?!」
ルルルフのつぶらな瞳が、頑張ってそれなりに開くほど驚いた顔を出す。
ゴルーダはどちらかというと、渋めの顔立ち。
モクレンは、やや幼めの顔立ちだ。
雇用主の年歴など気にして無かったルルルフは、ここ最近での1番の驚きにぶち当たった。
「あ、今日は夕方からお出かけするニャ」
「お? 珍しいな」
「カーチェギルドで、送別会してくれるのニャ」
送別会参加希望者の都合が合わない状態で、今日まで延び延びになっていたらしい。
カーチェだけでなく、人間も参加するそうで、希望者はかなり多いそうだ。
「ルルルフ、人気」
「いろんな人とご縁が出来た、嬉しい証ニャね」
人徳ならぬ猫徳による多くの参加希望者は予想され、それに付随した日程調整だろう。モクレンはニコニコと笑顔を見せる。
「俺ら、呼ばれてないな」
「送別会の要因」
みんなでとなると、自分たちも交じりたいものだが、ゴルーダたちは、ルルルフがカーチェギルドを退職する原因である。
送別するのもおかしな話だろう。と、納得した。
むしろ歓迎会しなきゃな、と目配せで会話中だ。
毎日毎日アクセク働いてコキ使われるわけでもなく、週に2回くらいはのんびりしている日もあり、住み込みハウスキーパーといえども、無理のないペースで働けている。
ルルルフは怠けているわけもないため、こういったおやすみ宣言も、快諾してもらえるのだ。
職場への報告というよりは、帰りが遅くなるけど、ここに行ってるよ。という連絡である。
仔カーチェという事もあり、少し遅い時間まで出歩いた日、帰ってきた時めちゃくちゃ心配された事があった。
心配かけないよう、きちんと行き先を伝えるルルルフ。やっぱり自分はまだまだこどもなのだぁと思ってしまい、ため息を落とした記憶がここ最近ある。
「ルルルフ、そんニャに頼りニャーの?」
「違う。カーチェ」
短い言葉だが、ルルルフは納得した。
モクレンの言葉には、"カーチェは基本的に人間より小さく力も少ない。オトナのカーチェでさえ、簡単に連れ去れるのだから、心配して当然。"という言葉が込められていた。
ゴルーダが同じ言葉を発しても読み取れないが、モクレンのときは読み取れる不思議を感じてしまうルルルフ。
「楽しんでおいで」
「はいニャ」
隠された意味はない、短いだけの言葉の時に至っては、深い読みが起こらないのもまた不思議である。
=・ω・=・ω・=・ω・=
夕方、ルルルフは指定された場所に来た。
チームハウスのある場所からそう遠くなく、ルルルフに配慮したカタチとなっている。少し遅くなっても、近くだから帰りやすそうなお店を選んでくれたようだ。
「ルルルフ、こっちミャ〜!」
お店の前でナナヤが待っていてくれて、手を振っている。
「ナナヤー!」
トテトテとかけ寄り、合流だ。
寮を出たルルルフは、久しぶりにナナヤに会った嬉しさで、しっぽがぴこぴこ動く。
ナナヤも同じようで、でかいしっぽがブンブン動いていた。
送別会の会場は飲食店の2階。そこはフロア貸切となっていた。
「すんごい人数ミャね」
ルルルフがお世話になった人たちなのに、送別会に来てくれてありがたい気持ちである。
「縁ってありがたいニャ」
研修期間で泥棒扱いされたお家の、奥さんと息子(兄)も来てくれていた。
あれから幾度か指名をもらい、お掃除指導し母と兄は家の中をしっかり片付けられるようになる。
夫と息子もみるみる綺麗になるお家で心が洗われたのか、次第に威圧的な態度はなくなり、その後ルルルフとカーチェギルドへしっかり謝罪し、ルルルフは受け入れた。
弟とはたまに公園で遊んだりする仲となっていた。
「すんごい参加希望者人数だったにゃーよ」
「ほんと、ギルドのみニャさん以外にも、お客様もいらっしゃるニャ」
「ナナヤの知らん人もたくさんいるミャ。ルルルフが作った縁ミャね」
幹事のアネイゴは、取りまとめや会場押さえなどに奔走したようだ。
ルルルフのご贔屓さんへ声をかけると、あっという間にルルルフご指名者たちへ広がり、私も私もとどんどん膨らんでいった参加者。
最初は家政カーチェギルドの会議室あたりでと思っていたが、一般人の参加が多くなり、飲食店でコースでもと思ったら収容人数を超えて、最終的に貸切となったことをナナヤはこっそり聞いていた。
「あ、アネゴ」
「なんだい、ナナヤ」
「ちょっと来てミャ」
ナナヤがアネイゴを連れ出してしまって、どうしたのかと思ったルルルフだが、すぐ送別会参加者に囲まれて、お世話になったからとプレゼント爆撃を浴び始めた。
「ニャーー! ダメですニャー」
「何ってるんだい、カーチェギルド所属じゃないんだから、賄賂とかじゃないんだよ」
「そうそう。ギルド所属の間は渡せなくてヤキモキしてたんだから!」
箱に入っていたり、袋に入っていたりで中身はわからないし、たくさんのプレゼントをその場で開ける訳にもいかず目を回していたルルルフ。
「待つニャッチ! ルルルフが困っているニャッチから、順番に渡すニャッチ。あと誰からもらったかわかるように箱や袋に名前書いてないやつは、きちんと書くニャッチ」
パイセーンが助けてくれる。しかし、その内容は受け取れということのようだ。
「ダメだよ。ルルルフは名前書いたら絶対にお礼しようとするじゃん。何のために、みんなで似たような包み紙や箱にしたと思っているんだよ」
参加者の人間がパイセーンに抗議。
ルルルフからの返礼を阻止する策もみんな用意していた。
そして、そのプレゼントの中身は、持っている人と送り主は違うそうだ。
「ニャー!! ニャんでそんな事するんですかニャー!」
「ただ、受け取って欲しいっていうだけだよ」
「ダメですニャ。これは誰誰さんからもらった物、って思い出も欲しいですニャー」
「みんなを思い出してくれればいいんだよ」
沢山のプレゼントは、送り主みんなからとして、まとめられてしまう。たくさんの温かい気持ちに嘘はないので、ルルルフはみんなにお礼を言いながら受け取り始める。
パイセーンは聞いていなかったサイドの者なので、ルルルフと一緒に毛を膨らませて驚きの顔をしていた。




