待っていたお昼 ▶︎お薬できますように。
時忘れ草の、カーチェによる採取法を教えてもらうホルス。
ホルスの耳に届いた情報とは違い、思っていたよりも手間がかかる。
プチリともいで終わりではない。
「時忘れ草の根っこは、風邪予防にもニャルので、常備菜として作り置きしておいた方がいいんですニャ」
自然の中で暮らしてきたカーチェの知恵を、こどものうちから受け継ぎ覚えているルルルフへ感心の思いが止まらないホルス。
「一応、根っこもお薬にできますが、あまりオススメできニャいんです」
「美味しくないのかな?」
「違うんですニャ。煮物が美味しすぎて、お薬よりご飯で食べたいんですニャ」
ほっこり理由に思わずホルスの口角が上がってしまう。
そして、根の薬は即効性はなく、普段から飲んで体に取り入れる使い方が推奨されているそうだ。
「ルルルフはお薬作れニャいので、薬師さんであるホルスさんは、もしかしたら研究をしていいお薬作れるかもしれニャいですし、そこはホルスさんの領分ニャので」
「うん、ありがとう」
村に伝わっているものこそ全て、とは思っていないためガツガツ押し付ける真似はしないし、普段いろんな物を研究している人々の探究心は素人なりに理解をしているため、ルルルフはきちんとその辺りも説明する。
あたりにモンスターがいないのを、ナナヤが確認してきてくれたので、ふたりは安心して時忘れ草を掘り出した。
「ミャ!! 根っこお芋みたいミャ!!」
見た目はでかい生姜のような根っこだが、お芋のように見えたナナヤには、美味しそうなご飯の素に見えるようだ。
「村で食べてた、ホコホコ煮のお芋がこれニャーよ」
「……そうミャったのか」
そして、ホルスが採取情報を得た場所まで行く間に、それなりに採取できた。
「思っていたより、いろんな場所に点在していた……んだね」
「そうニャんです。自然の中の時忘れ草って、鳥さんの食べこぼしの根っこが地面に落ちるんですニャ」
根っこを拳ひとつ分切って植えれば、鉢で栽培できるし、プランターで育てた方が根っこが大きくならないので、葉っぱの効果が強まるそうだ。
「これも、村の薬師さんから教えてもらったことですニャ」
「助かるよ。私は大きな町で薬の研究をすることが多いから、自然のことをあまりよくわかっていないんだ」
来年からは、時忘れ草を自分で栽培して使うことができるようになることも、今日カーチェたちとのピクニックがなければわからなかっただろう。
親切な彼らにホルスは感謝の意を伝えると、ルルルフとナナヤは照れながら礼を受け取った。
そして、待ちに待ったお昼ご飯。
敷物、なんて洒落たものはなく、草むらに腰を下ろしてのご飯だ。
しかし気にしないで、お弁当箱の蓋を開ける。
「ニャぁぁぁ!」
「ミャーーーーッッッ!!」
2口サイズくらいのオムライスおむすび、卵で巻かれたウィンナー卵焼き、ピーマンの肉詰めなどなど食べやすい大きさで、手が混んでいて、ルルルフやナナヤのようなこどもが喜ぶ中身であった。
「こ、これはわかるニャ! ナナヤが食べてみたいって言ってたの、わかるニャ!」
「そうミャよね! すんごい楽しい見た目で美味しそうで、ワクワクするお弁当なんミャ」
ナナヤが欲した理由を理解したルルルフ。見た目はもちろんのこと、味も優しい味が多くて食べやすい。
「これ、薬膳料理みたいニャ感じに思えますニャ。薬草の香りがしたりアクセントに苦さを感じますニャ」
「わ、ルルルフくんの味覚すごいね!」
薬師というだけあって、体に優しいものを作るようだ。それを感じ取ったルルルフの味覚に驚くホルス。
一方ナナヤは納得顔だ。
細かい味の説明はないながらも、トータルで美味いと感じている。ざっくりながら食にうるさいハンターたちと過ごして、培われたのは狩りの実力のほか味覚もだった。
=・ω・=・ω・=・ω・=
街に戻ってきた。今日の成果は十二分というほどだ。
「本当にありがとうね。これでいろんな薬を届けられやすくなるよ」
作っても日持ちしない薬だってある。それらをもしかしたらもう少し遠くへ届けられる可能性もあるので、ホルスは薬を必要としている人を大事にしているようだ。
その優しさを感じ取れて、ルルルフとナナヤは嬉しい気持ちになるし、ホルスの気持ちが多くの遠くの人へ届きますようにという思いを抱く。
「いえいえですニャ。ピクニック楽しかったですニャ」
「やっぱ、ナナヤのカンは間違ってなかったミャ! ホルスの弁当うますぎたミャ」
ホルスの家まで今日採取したものを一緒に運び、あとは洗って1日天日干しにしたら、葉っぱと茎と根を分けてそこからまた更に乾燥が必要な葉と根は干す。根は陰干しにする。と、ルルルフの故郷での処理を伝えた。
そして、寮へ帰るため歩いていると、何やら騒がしい音が少し遠くから聞こえる。
ルルルフとナナヤは耳をピンと張り、音の方へ集中する。
「……だめミャね」
「だめニャ」
残念そうな顔を浮かべるふたり。
「何がだめなんだ?」
その声にルルルフは振り向くと、人間が後ろに立っていたので、視線を更に上へ。
「あ、ゴルーダさん、こんにちはニャ」
「おう、昨日ぶりだし、元気そうだな」
「元気ミャ。あっちの方で、今日はエール半額だって言ってるミャ」
「何、マジか!!」
「それで、喜んでいる人の歓声が聞こえたニャ」
情報をもらったゴルーダは、ちょうど飲みに行こうと思っていたので、今日の飲み屋が決まったと喜んで、情報をくれたルルルフとナナヤへお礼を行って走って行った。
「おとなにニャった時、一緒に行きたいニャ」
「そうミャね。でも、ナナヤもうちょっとこどもでいたいミャ」
「うん。ルルルフもまだこどもでいいニャ。覚えることまだまだ足りてニャい」
手を繋いで再び寮の方へ、トテトテ歩いて行く仔カーチェたちだった。




