ニューチームハウス ▶︎ゴリベル
——3ヶ月後。ゴルーダたちの新しいチームハウス前
「やっとお引越しがしっかり終わったようミャね」
荷車を引いたナナヤが、聳え立つお家を前に言葉を落とす。
「不用品撤去、新しいチームハウスの清掃と事前整頓、家具搬入ニャどもあったから、お家が完成してもすぐに住むことはできニャいって知ることができたニャ」
「寮はお部屋がすぐにあったし、家具もあったもんミャ」
まっさらな状態からのお引越しを自分がしたわけではないが、身近で見ることができて勉強になったと、荷車を押していたルルルフは喜んでいた。
「あ、新しいおうちには、ドアベルがあるニャ!」
「ドアベルってなんミャ?」
前のお家にはドアベルが無くて、訪問をお知らせできず困っていたが、新しいお家にはあるようだ。
「ごめんくださいニャーってお伝えする道具ニャ」
「へえー、そんミャことするんか……」
ドアベルを使うことがなかったナナヤは、初めて知った。そしてルルルフが前にゴルーダたちの家に行った時、それがなくて困っていたこともようやく理解した。
「でも、ナナヤは思うんだミャ」
「ニャ?」
キリッとした顔を向けるナナヤ。ナナヤの言葉をちょっとワクワクして待つルルルフ。
「ゴリー! 来たミャー」
さほど大きくはない声で、ナナヤは扉に向かって声をあげる。
「ゴリじゃねぇ!!」
バーンと扉が開いた。
「これでゴリが出てくるから、ドアベルいらなさそうミャ。ゴリベルで十分ミャ」
「ほんとだニャ!!」
「ゴリじゃねぇ!」
ゴルーダの性質を利用した呼び方のようで、モクレンに用事がある人には、ゴリベルでは通じなさそうだと思ったルルルフ。
それをナナヤに伝えてみると、ナナヤがニヤリと笑う。
「それミャら、小ゴリって呼べばいい……んミャ?!」
ナナヤの上着の首の後ろが持ち上がって、ナナヤは浮いた。
「小ゴリ断固拒否」
「ほら、来たミャ」
友達ならではの、気さくなやりとりであることも理解しているので、ルルルフはニコリと笑って頷いた。
ゴルーダとモクレンは、ルルルフとナナヤを招き入れて、歓迎する。
「あ、引越し祝い、受け取ってミャ」
「ありがと」
荷車に4つくらい積んである木箱を、ゴルーダとモクレンとナナヤで運び入れる。
ゴルーダの持っている箱は、蓋はされておらず、木材が飛び出ていた。
「ところで、これなんだ?」
「食い物と家具ミャ」
「家具ぅ?!??」
木片にしか見えないけれど、家具と言われてゴルーダは首を傾げる。
「組み立てて完成させる家具ニャ。モクレンが本好きだから、ルルルフからは、本棚を贈らせてもらうのニャ」
いつの間にか親交を深めていたのか、モクレンが本好きということを知っていたルルルフ。
本棚を作るために、家具屋さんへ行ったり、モクレンの理想な本棚をリサーチしていたらしい。
お家にバラバラの状態で運び込んで、組み立てて完成させるそうだ。
「嬉しい」
事前に聞いていたが、いざ目の前にすると嬉しさは増すようで、モクレンはニコニコしてくれている。
モクレンの部屋に本棚の材料を運んで、ルルルフと一緒に組み立てた。
「おぉ、楽」
事前にネジ穴を開けてあったり、紙に組み立て順を書いてあったりしたので、簡単な作業で本棚が組み上がる。
モクレンは早速本を棚にしまう。
「うん、素敵」
「よかったニャ」
「ありがとう」
「いえいえニャ」
モクレンとルルルフが家具組み立てをしている間、ゴルーダとナナヤは、別の引越し祝いをしまっている。
酒のつまみになる干し魚や干し肉が多い。が、ゴルーダは時折首を傾げてしまう。
「なんか、見たことない干物が多いぞ……」
「ルルルフと釣りに行くと、面白い魚が釣れたり、面白い美味しいモンスター狩れたりするんミャ」
きちんと食べられるものであることは、ギルドで確認してもらっているので、問題ないことも伝える。
「まぁ、毒がなけりゃ食えるよな」
「食えても美味くなきゃ意味ミャーよ」
「確かになー。美味い方がいいよな」
棚にしまう際も、きちんと整頓されて収納される。どこに何があるかわかりやすいように、ナナヤが整えた。
「よくこんな綺麗にしまえるなぁ」
「ナナヤ、探すの苦手ミャから、探しやすいようにしまう方法覚えたミャ」
「なるほどなぁ」
ナナヤもゴルーダたちに負けず劣らずだった散らかし魔の過去があるため、ダメ猫に戻らないように気をつけていることを言うと、ゴルーダもダメ大人に戻らないように気をつけようと唇を結んだ。
モクレンとルルルフが戻ってきて、リビングのソファへ全員が腰掛けて、木のコップにはジュースが注がれて、テーブルにはおやつがたくさん。
「引越しおめでとうニャー」
「おめでとだミャー!」
「「ありがとう」」
ルルルフがいるので、コップは優しくコツリと当てられる。
ルルルフがいなかったら、木のコップとは思えないような音が響いていたことだろう。
ゴリ・小ゴリ・猫ゴリトリオと、ハンターギルドでこっそり呼ばれている規格外な奴らだが、対ルルルフでの加減は知っている。
「このジュース、美味しいニャ!」
「ボリーボリーベリーのジュースだぞ」
「ドライフルーツのやつと全然味違うミャね」
「生の実、瑞々しい」
スライス野菜のチップスや、ホットビスケット、クッキーやミニロールケーキなど、片手で手軽に食べられるものが並んでいて、甘味パーティー状態でもある。
ナナヤはパリパリ食べていたチップスを飲み込んだ後、口を開く。
「他のパーティーメンバー、戻ってこミャーのな?」
「あぁ、ちょっと前に1回帰ってきたけど、1日でまた別のとこ行っちまった」
「忙しないミャー」
「モンスターの体内でごく稀に精製される、なんたら石ってのがないと、装備に欲しい性能がつかなくて、それを出すために駆け回ってるんだとよ」
「獄氷石、レア」
「レアな物狙うって大変そうミャ」
今いないパーティーメンバーには、引越しをすること、新しいチームハウスの場所は教えておいたから、そのうち会えるだろうとゴルーダが教えてくれた。




