たまごさん ▶︎譲渡
「あっ、忘れてたニャ。お時間あるなら、たまごさんのところ行きますかニャ?」
ここにいる全員、本日は稼業をお休み中だ。暇といえば暇だろうが、この後は休むという予定も入れている可能性もある。
ルルルフは、ゴルーダの方を見て訊ねると、彼は頷いた。
「いいのか?」
「構いませんニャ。もしかしたら、お探しのたまごさんとは違う可能性もありますニャ」
今の所、特徴が一致している可能性があるだけで、探しているたまごではない可能性もある。
「大きさは?」
モクレンが訊ねると、ルルルフはあたりを見回して、ちょうどいい大きさを目にした。
「ナナヤが丸まったくらいの大きさより、少し大きいですニャ」
「ミャ? たまごにしてはデカくミャーか?」
「大きいたまごさんニャ」
ルルルフの知るたまごさんは、ルルルフやナナヤが両手で抱えようとしたら、手を回して抱えても指先同士は届かない大きさだ。
ゴルーダとモクレンは、話に聞いていた大きさに近いと頷いた。
「行きましょうニャ」
ルルルフはモクレンからぴょいっと飛び降りて、まずお片付けを始めた。
ナナヤもゴルーダの肩車を終わりにし、ルルルフの邪魔にならないところを片付け始める。
「デリバリーのお皿は、洗わニャきゃですニャね」
「ニャームクーヘンの空き箱は、全部ひとまとめにするミャ」
お客さんが率先して片付けている状態で、慌てたゴルーダとモクレンも片付けを始める。
あっという間におやつ・お昼の食べた痕跡は片付いて、入ってきた時の綺麗な状態になった。
そして、ニャームクーヘンの空き箱を、隣のニャームクーヘン屋へ持って行く。綺麗な状態の空き箱はリサイクルするそうだ。いくらか返金してくれるらしい。
「だから、ニャームクーヘンは蝋引き紙に包まれてたミャんね」
「お店のカウンターに、テイクアウト時のご案内あったニャよ」
モクレンが買っているので、返金分はモクレンへ渡し、一同はたまごがいる研究所へ足を向けた。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「こんなとこ、あったんだな……」
ゴルーダは初めて来たこともあり、びっくりしている。
一応王都暮らしながらも、足を運んでない場所はたくさんあるだろう。と心の中で自分を納得させる。
「マーナ食堂の裏」
飲食店で覚えているモクレンは、建物の位置を頭の中の地図と照らし合わせて、ゴルーダに現在地を伝える。
「すごい覚え方してるミャね」
「すごいニャ」
食堂は裏手にあるので、研究所から見えないが、きちんと場所を把握していることに、ナナヤとルルルフは少し驚いていた。
ルルルフは、前に来た時と同じように、受付へトテトテ足を運び手続きをする。そして、今日はフリールームではなく、個室にして欲しい旨を伝えた。
たまごを持ってきてもらい、係の人は退出して行った。
「たまごさん、こんにちはですニャ」
毛布の上に置かれたたまごはゆらゆら揺れて、挨拶を返しているようである。
「たまごさん、初めましてミャ。ナナヤだミャ」
初めて聞く声なのでたまごはビクッと縦揺れしたが、ナナヤが近づいて撫でるとゆらゆらし始める。
周りの誰にも聞こえないような小声で呟くハンターたち。
「……間違いねぇな。依頼の卵だ」
「手紙送ろう」
そして、ルルルフは所有権をゴルーダへ移す手続きもした。
学者たちは何かを言いたそうにしていたものの、所有者が絶対である。
新たな持ち主となったゴルーダは、たまごを連れ帰ってしまった。学者たちはルルルフの善意で観察・研究していたに過ぎない。
「たまごさん、お家に帰れそうでよかったですニャ」
「たまごから出て来ミャーから、迷子のままだったミャ」
ゴルーダが抱えるたまごを見上げながら、ルルルフとナナヤは急ぎ足でついていく。
モクレンがルルルフを持ち上げて抱っこし、空いている手でナナヤを掴んでゴルーダの肩車位置にセット。
「しっかし、よく見つけれたもんだなぁ」
「ルルルフ、お手柄」
「不思議な縁ですニャ」
偶然拾ったたまごは、偶然今日友達になった人たちが探していたもの。
重なる偶然がもたらす縁を、ルルルフは面白く感じていた。
ゴルーダたちは大きな街に立ち寄った時は、闇市へ足を運んだりしたが空振りだった。
依頼人はついでに探してくれれば、と軽い言い方だったものの、暗く沈んだ表情だったことも思い出したので、見つかってよかったと胸を撫で下ろす。
「それにしても、たまごからどーして出てこミャーの、こいつ」
「こいつは卵のまま50年は過ごすらしい。飲まず食わずに過ごせるそうだ」
モンスターの生態は自分と同じような測り方をすると、とてつもない驚きをもたらす。ナナヤとルルルフは、驚きで毛が膨らんでいた。
「手紙出す」
「あぁ、わかった」
モクレンは途中の道で曲がる。その際にルルルフを、ゴルーダの空いているもう片方の腕に預けていった。
「たまごさん、お家に帰れますニャ」
ルルルフの安心と嬉しさが混ざる声に、たまごもゆらゆら揺れている。
カーチェギルドの寮があるところまで来た。見慣れた景色だと思ったが、ルルルフとナナヤは視界がいつもと違って高いこともあり、寮の前に来て、ようやく気づいた。
ゴルーダが送ってくれたようで、ルルルフをおろし、ナナヤはぴょいっと飛び降りた。
「わわっ、送ってくれてありがとうニャ」
「チームハウスから遠回りミャん。ありがとうミャ」
「気にすんな。こっちのクエスト達成に協力してもらったんだし」
そして、今日は解散。
「あ、間違ってもあのバッチィところに、たまごさん置いちゃダメだからミャ!」
「ナナヤ、バッチィってより、危険物だらけって言った方がいいニャ」
「わーってるよ!」
こどもに注意される、ダメダメなエリアがある事には変わりない。
ゴルーダはカーチェたちと別れ、チームハウスへたまごを置いた後、片付け屋と家政屋・家政カーチェギルドへ足を運んだとか運んでないとか……。




