ごわごわ ▶︎もふ
ゴルーダとルルルフが真剣な話をしているので、ナナヤはモクレンへ声をかける。
「ところで……このご飯、めっちゃ、うミャすぎ。どこのお店ミャ?」
声に力が入っている。とてもナナヤの好みにあったのだろうと、モクレンは心の中でガッツポーズをして頷いた。
絶品デミグラスソースの鎧を纏った、大ぶりのミートボール。ソースも美味しいが、ミートボールにも野菜の旨みが染み込んで丁寧に作られている、看板メニューの一品だ。
おにぎりも、ルルルフやナナヤの故郷の村のお米には及ばないが、さっぱり美味しく、濃い味の海苔を引き立てている。
「桃モモンガ亭」
「どこミャ……」
ナナヤはお店の名前を覚えるほど、この街に住んでいないので、ピンとこない。
しばらくは、この街についての、お勉強の日々になるだろうと口をへの字にする。
また、モクレンは席を立ち、戻ってくる。手にはやや分厚い冊子。お手製冊子のようでちょっといびつだ。
「あげる」
「ミャ?」
お手製冊子を開くと、この街の名前が書いてある。ナナヤは覚えていないが。
「この街」
名前の部分を指さして、街の名を伝えるモクレン。
「ミャ……。レタハトってのが、ここの名前ミャか」
「王都レタハト」
そして次のページを開くと、王都の簡易地図のような絵が出てくる。
地図の中には番号が振ってある。そして、見開きで隣にあるページには、番号と名前が書いてあった。
① エッダの酒場
② マーナ食堂
③ 桃モモンガ亭
・
・
といった感じで、地図に番号と名前が記されてある、お店マップだ。
「モクレン……字キレイミャ」
「ありがと」
まずナナヤは、教科書よりキレイな字にビックリした。
「もらっていいんミャ?」
「うん」
「ありがとミャ!!」
「いえいえ」
そして、食事を再開する。
「やっぱりうミャい」
「推し」
「ミャ」
テーブルの上のお皿は、どんどん空になっていく。
ゴルーダは、気づいたら思っていたより減っていたテーブルの上にあるご飯を視界に入れて、慌ててルルルフの皿にもおかずを載せる。
「あっ、ルルルフも食え、無くなるぞ!」
「ルルルフ、さっきニャームクーヘンも頂いたので、そんニャに食べられニャいです」
ナナヤの食べっぷりと、ルルルフの食べなさっぷりを交互に見比べる。
しかし、狩猫と家政カーチェという差を考えて、納得した。
ルルルフは丁寧に切り分けて、小皿に取り、ちまちまといろんな種類を食べると、もうお腹いっぱいとフォークを置いた。
その残りをナナヤがもらっていいか訊ねて、許可を受けるとお礼を言い、モッシャモッシャ食べる。食べ終わったところで、カッと目を見開いた。
「ハッ!! ナナヤ、また食べ過ぎてる気がするミャ! 狩りは明日までお休みするのに、いっぱい食べちゃったミャ」
「また、狩りに出れば大丈夫だろ」
休みの日だからといって、ご飯をセーブしてお腹を空かせ過ぎておくなんてのは、よくないと思っているハンター組。
ナナヤにも伝えると、単純なナナヤはそれもそうかと納得安心して、自分の満腹を不安に思わなくなる。
=ˊ͈ ᐞ ˋ͈=ˊ͈ ᐞ ˋ͈=ˊ͈ ᐞ ˋ͈=
「チームハウス新しくなったら、また遊びに行くミャ」
「おう、来い来い!」
「大歓迎」
ハンターならではの狩りの話、家政カーチェからの生活情報、色々聞きあって楽しく過ごせた今日。
ルルルフは面白い1日を送れた実感をする。
「本日は楽しい時間をありがとうございましたニャ」
「ルルルフ、そんな丁寧に堅苦しいこと言わなくていいんだ。俺ら友達なんだからもっとフランクにな!」
ゴルーダはにかっと歯を見せて笑い、友達と言ってくれた。
「ミャ、楽しかったミャ!! また遊んでミャ」
「もちろん」
フランクにやり取りする様を見せて、あんな風でいいんだよとルルルフに伝えるも、ルルルフはカーチェ以外の友達がいなかったのと、こどもながらおとなと同じ場所で働き始めたため、周りの人へ丁寧に接することに慣れていた。
「お、お友達ニャ?」
「そ、友達だ」
「うん」
こどもと大人ながらも、線引きせず友達としてみてくれているようで、ルルルフは嬉しさと戸惑いが混ざり、少し混乱していたが、ナナヤが自然体で接しているのを見て納得する。
「わ、わかったニャ!」
まだぎこちないが、丁寧な口調から砕けた口調へ言葉を改め、にっこり笑った。
モクレンがさっとルルルフを抱っこした。
「ニャ?」
「抱き心地、イイ」
「えー?! ルルルフより、フサフサなナナヤの方がいいと思うのニャ」
「ナナヤ、ごわごわ」
モクレンは、ルルルフへ通じるような単語を発してくれる。
「ごわごわとは失礼ミャ! 毛パックしてサラサラツヤツヤだミャ!!」
「ほー? どれどれ」
ゴルーダはひょいとナナヤを放るように持ち上げて、そのまま肩車位置へ。
ナナヤも慣れているのか、ゴルーダの首の後ろへ貼りついた。
「あっ、ほんとだ!! なんか毛の当たり方全然違うぞ!!」
「ルルルフが、カーチェサロンってのを教えてくれたんミャよ!」
「意外」
ごわごわ・もごもごの毛と認識されていたナナヤだが、情報が上書きされた。
「でも、ルルルフ」
モクレンはルルルフ派を訴える。
「いやぁ、でもよぉ……ナナヤのこの毛、めっちゃくちゃ良くなってるぞ」
毛をカットしたので長毛猫ほどではないが、中毛猫状態の手入れされたフワモフを、ゴルーダは堪能している。
ナナヤはしっぽを伸ばして、モクレンを撫でてみた。
「お、もふ」
『ごわ』ではなく、『もふ』を頂いた。ナナヤとゴルーダはニヤリとしたり顔。
「でも、ルルルフ」
普段から手入れされている柔らかな毛の方が肌当たりがよく、ルルルフの小ささと丸さが好きな事をモクレンは単語で伝えるも、伝わったのはゴルーダとナナヤだけだ。
「ゴリの髪の方がごわごわだミャ」
「ゴリじゃねぇ! きちんと頭は洗ってるからな!」
「ナナヤだって、洗ってたミャ! でもごわごわしてたミャ! たまにお手入れしミャーとゴワるって、ルルルフが教えてくれたミャ」
「ほんのちょっと手をかけてあげると、髪も少し喜んでくれますニャ」
ルルルフには、ここにいるハンター・狩猫たちにはない、暮らしを丁寧にする心構えが標準装備されているようだ、とハンター組は認識した。




