スカウトの返事 ▶︎たまごさん
「お断りしますニャ」
バッサリスッパリと断ったルルルフに、ゴルーダも、モクレンも、ナナヤも、口をあんぐり開けて驚きの顔を出した。
知り合ってほぼ1日目状態だけど、ナナヤという友達がいての、ある程度信用されそうな状態だと思っていたこと、家政カーチェは契約先があると嬉しいと、ほんのり聞いたことがあることなども含めて、断られることはなさそうだと思っていたゴルーダだったが、現実はお断りだった。
「ルルルフ……こいつら嫌いミャんか?」
ナナヤから遠慮ない言葉が放たれる。
肯定されたら居た堪れない状態にしかならないから、やめてくれとゴルーダはぎゅっと目を瞑って唇を噛む。
「違うニャ。だって、ルルルフ見習いだニャ」
「「へ?」」
ゴルーダとモクレンは、先ほどとは違うポカーン顔になる。
「まだ1猫前の家政カーチェじゃニャいのに、お仕事契約は結べませんニャ」
しっかりもので真面目なルルルフらしい答えに、ナナヤはホッと息を吐いた。
「ニャので、家政カーチェギルドでルルルフと期間契約して、きちんとお仕事を見たうえで決めて欲しいですニャ」
毎日もしくは決まった日にち毎に通うスタイルで、ルルルフの仕事ぶりを見てから決めて欲しいと、真面目のテンプレートのような返事をした。
「おミャーらみたく、カンで突っ走ることは、ルルルフはしないんミャよ」
なぜかナナヤがドヤ顔で言うので、その額をゴルーダがデコピンする。
「んミャっ!」
ゴルーダのデコピンなので、それなりに痛い。子供は泣くレベルではあるが、頑丈なナナヤには、ただの軽めデコピンレベルに感じる。
「ナナヤ、砕けた?」
モクレンが心配そうに覗き込むが、言葉が物騒だ。
「あー、砕けたミャー。めっちゃ痛いミャー。ニャームクーヘンホールで食べミャーと治らんミャー」
「超無事」
そして、お昼を少し過ぎた頃、デリバリーがやってきて、お昼ご飯がテーブルに所狭しと並べられた。
みんなでワイワイしながら飲んで(ノンアルコール)食べてと、楽しいランチタイムだ。
ほぼ初めましてながらも、気さくなゴルーダが会話を引っ張り、ルルルフが退屈にならないようにしてくれている。
「ハンターさんって、やっぱすごいですニャ」
「こいつらより強いハンターって、なかなかいないミャ。よその国でもハンターランクはおんなじようにあるんミャけど、虹星までいけるやつはいないらしいミャ」
「でも、俺は採取が割と下手くそだからなぁ」
「大雑把」
狩りの話題の次は採取の話題。
「採取は楽しいですニャ。半年前にお出かけした時は、たまごを拾ったんですニャ。学者さんたちも、ニャんのたまごかわからニャい珍しいたまごで、この間会ってきたんですが、卵のまま元気そうでしたニャ」
ルルルフが採取した中で、一番珍しかったたまごの事を話ししてみると、モクレンが反応した。
一旦退室し、再び戻ってくるその手には、少し古ぼけた紙が握られていた。
「こんな卵?」
絵に描かれてあるたまごには、注釈で特徴が書いてあった。
「そうですニャ! 光に当たると殻の色が変わる、シャボン玉みたいニャたまごさんですニャ!」
「ど、ど、ど、ど、どこに、ある、そ、それ!!」
ゴルーダはなんとか言葉を出して、ルルルフに問う。
「学者さんが研究してますニャ」
そして、ルルルフが所有者になっている事、いつでも施設に行っていいと言われている事を伝えると、ゴルーダもモクレンもソワソワし始めた。
「ゴリと小ゴリがプルプルソワソワとか、似合わないミャ。いつも通り遠慮なく用件言えミャ」
「ゴリじゃねぇ!」
「小ゴリ断固拒否」
ゴホンとひとつ咳払いをして、ゴルーダは古ぼけた紙を示しながら、口を開く。
「この卵は、3つくらい離れた国にのみ生息しているモンスターの卵で、秘密裏に捜索を依頼されていたんだ。積極的に探さなくていいが、どこかで見つけたら……って言う軽い感じでな」
そのモンスター自体も、3つくらい離れた国の国内でさえ秘匿されていて、一部の者にしか知られていないという。
なので、この国でのモンスター図鑑などにも載っておらず、誰も知らないそうだ。
「じゃあ、たまごさんは迷子って事ですニャ?」
「まぁ、平たく言うとそうだな。たまごを移す際に不手際で別の荷に紛れ、その荷馬車がモンスターに襲われて、たまごが拐われた状態だ。人間と違って、モンスターは身代金とか要求してこないから、行方なんて掴めたもんじゃねぇ」
ルルルフはパチパチと瞬きをした後、うんうん頷いてゴルーダの手を取る。
「たまごさんの所に行きましょうニャ。ルルルフが所有者ニャので、引き取ること出来ると思いますニャ」
よその国から依頼されたシークレットクエスト。
そんな重大な秘密を教えてもらったうえに、手がかりかもしれない事を自分が知っている可能性があり、お手伝いできるなら、協力したい。それに、たまごも元いた場所に戻した方がいいだろうと、ルルルフは頷いた。
「い、いいのか?! お前が採取したたまごで、その……」
よその国の事情なんて、ルルルフには関係ないだろうし、その気になれば高値で売りつけられるものだ。ルルルフはまだ口にしていないが、なんの見返りも要求せずに、たまごを渡してきそうである。
「たまごさん、故郷に帰して欲しいですニャ」
「わかった」
よその国から、モンスターに拐われて、置き去りにされてしまったという事を知ったので、ルルルフはたまごにも故郷があると理解した。
ゴルーダに渡せば、たまごも帰れる。色々わかってホッとした。




