お片付け屋さん ▶︎ニャームクーヘン
「人間のお片付け屋さんってのは、家政カーチェと違って家事ではニャく、お引っ越しとか模様替えとかの、大きな運搬をする際に頼むことが多いんですニャ」
「あー、なんとなくわかった」
大きな運搬というので、向かい側の扉の中にある武器の残骸集団を想像したゴルーダは納得した。
鍛冶屋の武器引き取りも、そういった職種の方々を手配しているのだろう。
いつも鍛冶屋に言って、後日引き取りの日にちを教えてもらっていた理由も、ほんのり理解した。
「そのあと、人間の家政屋さんとか、家政カーチェが入ってお掃除する感じにニャルと思いますニャ」
粗大ゴミ引き取り後でなければ、掃除の意味がないのだ。
ルルルフはお引っ越しをする人のお宅へ、お仕事にいった際の出来事を思い出して伝える。
「それって、事前に予約の話をしに行った方がいいやつだよな……」
「もちろんですニャ。お片付け屋さん、家政屋さん、家政カーチェ、それぞれご予約を頂いていて、出勤の予定を組んでいますニャ」
家政カーチェは、指名や班を組んでいない状態のフリーなカーチェもいるし、指名のない依頼も来ているのだが、予約客優先で能力に合った仕事を選択し、現場へ向かうこともお伝えするルルルフ。
大きな荷物の片付けなどは、ご飯屋さんのように、当日行って食べて帰る、というすぐ終わる用事のジャンルではない。
「事前にご相談して頂ければ、お家の状態を見た上で、最適ニャ班を組んでの日程計算や、スムーズニャお片付け・お掃除ニャどをご提供できますニャ」
家政屋さん、家政カーチェなどを利用したことがないため、タメになることを聞けたゴルーダは、ほうほうと感心の声を出している。
「あ、それじゃあ、新しいとこ引っ越したら、家政カーチェ雇おうと思っていたけど、それらの相談も事前の方がいいってことだよな」
「ですニャ」
今のチームハウスは人間用の台所設備だが、新しいチームハウスはカーチェ対応で作っている事を思い出したゴルーダ。
一度、雇用するカーチェを探しに、家政カーチェギルドへ行かないとダメだと理解した。
「明日にでも行ってくるかぁ」
「早めに言ってくだされば、雇用したいカーチェの条件を聞いて、該当するカーチェを集めてくださると思いますニャ」
今日は酒を飲まないで、おとなしく寝る予定を組んだゴルーダ。
「ありがとうな、色々わかったよ」
「お役に立てて嬉しいですニャ」
お勉強したことを、きちんとわかるように伝えられたことに、ルルルフはほっと胸を撫で下ろす。
「ただいミャー」
「ただいま」
ナナヤとモクレンが箱を持って帰ってきた。
テイクアウトもやっていたようで、モクレンの顔がホクホクしていた。
「おう、おかえりー」
「おかえりニャさい」
ナナヤとモクレンの方を見たルルルフは、固まってしまった。
片手ずつ、箱を重ねて持っている。ナナヤもモクレンも。
「全種、半ホール」
モクレンの短い言葉だが、ルルルフでも理解できた。
ニャームクーヘンの輪っかの半分を、全種類買ってきたのだろう。
とても満足そうな顔をしている。
「モクレン、甘いのすげー好きなんだよ」
「そ、そうニャんですね……」
両手が塞がっているのに、扉が開いて入ってきた。開けてくれる人もいないのに。とルルルフは頭にハテナをいっぱい浮かべていた。疑問は訊くに限る、とルルルフは口を開く。
「両手塞がっているのに、どうやって入ってきたニャ?」
「ナナヤがしっぽで開けたミャ」
ナナヤのしっぽは長い。直立状態でしっぽを上に伸ばせば、先端はナナヤの頭より高い位置にあった。背が伸びてもその位置関係は変わらない。
胴が伸びた分、しっぽも伸びているのだろう。ナナヤの身長の成長を実感するルルルフ。
「お皿持ってくる」
「待てミャ。フィニャンシェ載せていた空き皿があるミャろが。買ってきたものを全部広げず、食べたら箱からおかわり取ってって、やっていけミャ。洗い物が増えるミャ」
テーブルいっぱいの、ニャームクーヘン広場を作ろうとしたのをナナヤは見抜いて、ツッコミと共にモクレンの野望を阻止。
「ちぇ……」
なぜバレたのか疑問に思いつつも、洗い物が増えるという言葉で納得したため、阻止を受け入れたモクレン。
とりあえず、買ってきたニャームクーヘンの箱を開ける。
「あ、切らなきゃ」
買ってきたものは半ホールのため、リング型のハーフカット状である。
「モクレンなら、そのままペロリと食えるミャろ?」
「みんなで分けたい」
甘いものが好きだが、みんなにも楽しんでもらいたくて、たくさんのニャームクーヘンを買ったようだ。
ルルルフがカットを申し出て、みんなに分けられるよう切ってくれた。
引っ越しのことについて、モクレンも交えてルルルフから再び色々教えてもらうゴルーダ。
ナナヤは、ニャームクーヘンを1枚ずつ剥がして食べたい衝動を頑張って抑えていた。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「うんうん、そうか。ありがとうな」
「理解した」
「いえいえですニャ」
ティーカップに入っていた、ぬるく冷めてしまったネコウチャをゴルーダはぐいっと飲み干した。
「ところでルルルフ、うち専属の家政カーチェにならないか?」




