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引越し ▶︎だらしミャー男2人


「美味しい」

「良かったですニャ」

「天才」

「ありがとうございますニャ。美味しく飲んでもらえて嬉しいですニャ」


 ルルルフに淹れてもらったネコウチャは、渋みがなくすっきりとした香りだった。

 モクレンはホゥっと息をつく。


 ナナヤと一緒に行動していた時、存在だけは知っていたので、狩りの後に街でネコウチャ屋へ約束通りナナヤを連れて行き、モクレンもネコウチャデビューはしていた。

 そして、この街に戻ってきた時に、紅茶より渋みが少なく、あっさりすっきり飲めるのに香りがいいネコウチャの虜になったものの、自分で淹れても茶屋での味にならずにいた。

 店ならではの秘訣でもあるのだろうかと思っていたが、ルルルフが美味しく淹れてくれたので、また思っていた通りのネコウチャを味わえて嬉しいようだ。


「すごいミャよね。ナナヤはお店のか、お店から買ってきた淹れてあるネコウチャしか飲んでミャーよ。自分でやったら火傷したミャ」

「ティーポットの取っ手を持たニャいから、火傷するのは当たり前ニャ」


 すっきり香り良く飲めるネコウチャと、ルルルフからの手土産のフィニャンシェを茶菓子にまったり過ごす。



「あー、だりぃなぁ。引っ越し準備ー」


 ソファにだらりと体を預けたゴルーダが、ため息を落としながらぼやく。


「なんミャ。お家をばっちく使いすぎて、追い出されるミャんか?」


 からかいまじりではなく、マジトーンで質問するナナヤに、ゴルーダは体をガバッと起こして否定した。


「ちげーよ!」

「多分違う」

「多分じゃねーだろ!!」


 モクレンからの多分にもツッコミを入れる。ツッコミたくさん忙しそうだ、とルルルフはフィニャンシェを口に詰めながら見ていた。


「チームハウスを建ててたんだよ」

「ニャ?」

「ミャ?」


 お家を建てることは経験したことがないルルルフとナナヤは、よくわからないので首をコテーンと横に倒す。


「ここのチームハウスは、もともとあったものを格安で買ったんだけどよ、昔からあったやつで、何十年も使っているのもあって、ボロボロになってきたんだ」

「散らかしすぎて、ボロボロにしたんじゃミャーのか」

「もともとだっつーの!」

「追い討ち」


 片付けが少々苦手なこともあり、雑に家を使っている自覚はあるモクレンが、こっそり自分たちでもボロボロにしていることを暴露。


「そんで、1年くらい前から、チームハウスを造ってもらっていてな。チームハウスを建てるのって結構金掛かるから、最近までずっと狩りばっかしてたんだ」

「お金欲しかったミャら、なんで特殊個体の依頼蹴っていたんミャ?」

「あいつらと戦うと、武器がすぐ壊れるから、実は大した実入りにならないんだ。それなら素材の値段が美味しいやつ狩りたいし」


 後続の後輩のためと言いつつも、黒字の割合も考えていたらしい。


「それ、ナナヤ連れていかミャー方が、お金になったミャろ」


 クエスト成功時の報酬金は、一緒にクエストを受けた者らで山分けだ。

 トップハンターたちなら、ソロ活動をしていた方が稼げるのに、行動の矛盾が気になったナナヤ。話を聞いていて、ルルルフもそれは理解した。


「俺ら2人だと、絶対にダレる」

「否定しない」


 そんな中で見つけたのがナナヤだ。仔カーチェなのに突出した能力、なのにやる気のなさそうな顔、ボサボサな姿。

 何かビビビッとくるモノがあり、臨時パーティーを組もうと思ったらしい。

 後は、仔カーチェというこどもながら、そこまで手を掛ける必要はないという、ハンターギルドの面々の言葉も、後押しになったと告げられた。


「アケスケに言い過ぎミャ」

「ナナヤは、おメメをきちんと開くのが面倒なだけですニャ」


 ルルルフがフォローを入れてみるも、フォローになっていなかった。

 頑張ってフォローする姿が、仔カーチェらしくてかわいいなと、ゴルーダは豪快に笑う。


「いやいや、面倒な時点でやる気ねぇだろ」

「あニャ……そっか」


 ルルルフはモクレンのティーカップが空になっていたので、ネコウチャを淹れに、ソファから降りて台所へ行った。


「あ、ナナヤもおかわり欲しいから、お願いするミャ!」

「わかったニャー」

「ありがとミャ!」

「いえいえニャ」


 自分で淹れるのは危険なので、淹れ上手なルルルフにお願いする。


「って、お引っ越しあるのに、遊んでていいんかミャ。むしろ二日酔いになってる暇はないミャろが」

「まだ完成してねぇからいいんだよ」


 あと2週間ほどらしいので、すぐと言えばすぐだ。


「2週間であのばっちいエリアが、片付くと思ってるミャんか?」

「なんとかなるだろ、男2人いるんだし」

「だらしミャー男2人だから、散らかるだけミャろ」


 図星なのか、ゴルーダとモクレンは反論できず黙ってしまった。


「多分、あのお部屋は、家政カーチェではニャく、人間のお片付け屋さんに頼まニャいとムリですニャ」


 ルルルフが追い討ちをかける。

 淹れ終わった紅茶をお盆に載せたところで、モクレンがそれを運んでくれた。


「ん? お片付け屋さんってなんだ?」


 言葉としてはわからなくもないが、聞いたことがないので、ゴルーダはルルルフの方へ顔を向け質問した。


「ナナヤ、ニャームクーヘン」

「買いに行くかミャ」


 モクレンは、隣の家がある方角を指して告げる。

 テイクアウトでいくつか買えそうなら欲しいと思ったし、そろそろお店が開く時間あろうと、チラチラと時計を見ていたようだ。

 隣のニャームクーヘン屋は、カーチェがいないと入れないので、ナナヤに同行を願い出たモクレン。


 なんの事かわからないゴルーダは、あとで聞くとして……と、先にルルルフから話を聞きたいので、彼らには視線だけ一瞬向けたが戻して、ルルルフからの答えを待つ。

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