お友達のお家 ▶︎お友達の汚家
ゴルーダとモクレンが住んでいるチームハウスの前にやってきた、ルルルフとナナヤ。
「あニャ……ドアベルがニャい……」
家政カーチェのお仕事をするときに、紐を引っ張ってベルを鳴らし、訪問を伝えるアイテムだが、チームハウスには無かった。
大きな大きなお家であるチームハウス。ドアをノックしても音は届かなさそうである。
ガチャ
ドアを開ける音がして、ルルルフはびっくりしてその方向を見ると、ナナヤがドアを断りなしに開けていた。慌てて注意しようとしたら、ナナヤが首を傾げている。
「ミャー??」
「……ニャ?」
ルルルフに猫好奇心が働き、諌めの言葉よりも、ナナヤと同じようにドアの中を覗いてしまった。
「ニャ……??」
ドアを開けると、廊下があった。
訪問しているお宅は、ドアを開けると玄関があったり、リビングがあったりで、お家らしい何かがあったが、玄関もなく廊下が伸びているお家は初めでだ。
同じようなドアが4つほど向かい合わせでついていて、どういうお家なのだろうかと困惑してしまった。
ナナヤは手を口の横に当てて、大きく息を吸い声を上げる。
「ゴリー!」
「ゴリじゃねぇ!!」
バンっとドアが開くとゴルーダが現れた。
「何ミャ、この家」
「チームハウスってのは、複数パーティーが住めるようになってる家だから、家がいくつか入った家みたいなもんだ」
「そうなんミャ。ゴリのパーティーのお家はそこかミャ?」
「ゴリじゃねぇ! 一応うちのパーティーで全部の家所有って扱いだ。ここはちょっと散らかってるから、こっち」
そういって、ゴルーダは向かい側の扉を開ける。
「ホントに……ちょっとなんミャ?」
「な、ナナヤ! 失礼ニャよ!」
ニヤニヤしながら訊ねるナナヤを諌めるルルルフ。
ゴルーダはカラカラと豪快に笑う。
「いや、スッゲェヤベェ散らかり方してる」
「見せろミャー!」
「おうよ、ドン引け!」
気さくなやり取りをする間柄なのだとよくわかる和やかな空気に、ルルルフはホッとしながらも、まずご挨拶をしないとと、ゴルーダの前に行ってぺこりと一礼した。
「ほぼ、初めましてニャ。ナナヤの友達のルルルフですニャ。本日はお招きありがとうございますニャ」
「おう、ゴルーダだ。よく来たな!」
「こちら、つまらニャいものですが」
「しかも手土産まで! ありがとうな! こどもなのに礼儀正しいなぁ」
挨拶もできた。手土産のフィニャンシェも無事渡せて、ルルルフはホッと一安心だ。
ゴルーダはしゃがんで、ルルルフの頭をガッシガッシ撫でる。
「やめろミャ〜! ルルルフの頭が砕けるミャ〜!」
ゴルーダの腕をペシーンと払い上げるナナヤ。その顔はニヤニヤしているので、からかいまじりのやり取りだとわかる。
ナナヤは背負子を下ろして、背負子に乗っているカゴをゴルーダに渡す。
「あげるミャ」
「おう、サンキュー!」
背負子は部屋の隅に置かせてもらうか、と、散らかっている部屋を覗き込んだナナヤ。
「きっっっっっっったミャーーーー!!」
「汚れてねぇよ! 散らかってるだけで……」
散らかっている部屋の感想を、遠慮なく言われてしまい、ゴルーダは言葉を返す。
お家の人がいいと言っているので、ルルルフもそーっと覗き込んだ。
「んニャーーーー?!?!」
全身の毛が逆立つレベルで驚いている。
「モンスター見た時より驚いてるミャ」
「おいおい、モンスターの方が怖いだろうよ」
トップハンターで、モンスターの脅威はさほど感じないながらも、一般人や一般猫にとっては、モンスターは脅威の対象であることを知っているので、カラカラ笑いながらルルルフに声をかけると、ルルルフはカッカッカッとクラッキングをしてしまった。
「獲物認定……」
ポツリと聞こえた声に、ナナヤとゴルーダが目を向けると、廊下の突き当たりにモクレンが立っていた。
さっき見た時は居なかったので、突き当たりにあるドアから入ってきたようだ。
「あ、モクレン。おはよーミャ」
「おはよう」
「汚家危険。こっち」
やはり、モクレンも向かい側の扉を指し示す。
「壊れた装備品が、山にニャってる……。食べ物のカスとかはニャいけど……。壊れた武器によって床も傷んでるニャ……」
ブツブツとルルルフが呟いていると、その目をモクレンの手が覆う。
「ニャ」
「こっち」
そう言ってルルルフを抱っこして、ソファとテーブルしか置いてない部屋へ連れて行った。
「家政カーチェに、きったミャーお家見せるのは、だめミャーね」
「ちょっと物が多いだけだっつーの」
ナナヤからの、からかい混じりの言葉に、少し口を尖らせるゴルーダ。
汚部屋製造猫だったナナヤには、慣れている視界でも、綺麗好き・整頓上手のルルルフには衝撃ものだろう。
ナナヤですら、汚部屋時代のお家をルルルフに見せることは無かったため、ザ・汚部屋の衝撃は大きそうだとナナヤは思った。
「あ、あのお家、あぶニャいですニャ……。あ、モクレンさん、おはようございますニャ。お邪魔しておりますニャ」
「いらっしゃい」
抱っこのままソファに腰掛けたモクレン。そっと手を離すと少し落ち着いたルルルフから挨拶をもらう。
「大丈夫」
「け、怪我しちゃうニャ……」
部屋に置いてある雑然を通り越して、芸術的に積まれてあった壊れた装備品の数々。
ちょっとでもバランスが崩れると雪崩を起こしそうだ。
装備品なので硬いし、刃も見えたのもあり、ルルルフはプルプル震えてしまっていた。
「あー、来月になったら、装備品引き取りに来てもらうから大丈夫だぞ」
モクレンの大丈夫では読み取れない部分を、ゴルーダが教えてくれた。
「来月って、今月始まったばっかりミャろが。二日酔いしてた暇あったんミャから、鍛冶屋に持って行けミャ」
「二日酔いで動けるかってーの」
「遊びに行くって言ってたんミャから、酒飲まずに、片付けておけミャ!」
ワイのワイのと賑やかになる。
モクレンはルルルフを下ろして、お茶の準備をし始める。
「あ、お手伝いしますニャ」
「お願い」
そう言って、モクレンはネコウチャの茶葉を差し出した。
本来なら、「お客様」と言って制するところだが、モクレンはその言葉に甘えることにした。
「渋くなる」
「ネコウチャは、お紅茶より渋くニャりやすいんですニャよね」
ソファとテーブルしか家具が設置されていないけれど、お家としての設備は入っているので、台所設備はきちんとあるし、この部屋で客を迎え入れるつもりだったので、ティーセットやお皿、カトラリーなどの最低限の品は用意してあったようだ。




