隣のモクレンさん ▶︎お散歩
ニャームクーヘンを堪能したルルルフとナナヤは、ニマニマしながらお店を出る。
「ミャ〜〜! まだまだ種類あったミャね!」
「わけっこして、4つのニャームクーヘン食べたけど、他のお味も気にニャる〜」
「トッピングもあるから、組み合わせたくさんミャ!」
そして、来た道を戻るべく、お店を出て右に曲がる。
お店の隣にあるお家のドアが開くと、そこにはナナヤの見知った顔があった。
「ミャ! モクレン! こんちミャ!」
「こんにちはですニャ」
かけられた声の方向へ首を横に向けたモクレンは、見知ったカーチェがいて、コクリと一つ頷く。
「こんにちは」
「モクレン、こんなとこでどしたミャ?」
「ここ、チームハウス」
自分の背にある家を指差して、短く答える。
「ミャ、ここだったミャんか!」
「どした?」
「明日、ルルルフと遊びに行こうと思ってたミャ!」
「いいよ」
そして、ナナヤはルルルフを紹介する。
「ルルルフは、このカーチェの事ミャ!」
「ルルルフですニャ。この間ハンターギルドのお部屋では、ご挨拶できずに失礼致しましたニャ」
「僕、モクレン」
モクレンは、ルルルフと近い位置まで体を屈めて、握手をする。
「パイセーンに説教されてたから、挨拶と言えども、横槍入れたら、巻き添え喰らうミャ」
「不服」
「5ヶ月半の遅刻じゃ、怒られて当然ミャ」
「ナナヤ、逃げた」
「ナナヤは、トップハンターに連れられていたから、意見できミャーって見てもらえたミャ。そもそも期間覚えてミャかったし」
「忘れた、同罪」
「おミャーら、おとなミャろが!」
短い言葉と、普通の言葉で会話が成り立っているのを、ルルルフは不思議そうに眺めている。
「あ、モクレンは言葉足りミャー奴だけど、いい奴ミャ」
「足りないってか、短いニャ」
「うん、いい奴」
「自分で言うかミャ……。こんミャ感じで、冗談もちゃんと言えるミャ」
面白いやりとりだなぁとニコニコしつつ、ふと思い出したことを訊いてみるルルルフ。
「この人がゴリさんニャ?」
ルルルフから見ると、モクレンはめっちゃでかい。
説教を受けてた時は2人とも正座していたし、仁王立ちのパイセーンが視界に真っ先に入っていたので、しっかりとハンターたちの姿を見ていなかった。
「ゴリ、拒否」
まだ開いているドアから、微かに聞こえた声。
苦しそうな声に、ルルルフは飛び上がってビックリする。
「ニャっ?! 中に苦しそうニャ人がいるニャ?!」
「二日酔い」
そして、モクレンは扉を閉めた。
「ゴリはゴルーダって名前のハンターミャ。こっちは小ゴリの方ミャ」
「小ゴリ、断固拒否」
「そんで、ゴルーダは二日酔いでバテてるだけミャから、ほっといていいミャ」
「放置」
モクレンは、ナナヤとルルルフが出てきた隣の家を見て、首を傾げる。
「隣……?」
「あー、お隣のお家、美味しいニャームクーヘンのお店ミャんか」
「初耳」
「隣ミャのに知らんかったミャか」
「すごい隠れ家って感じニャね」
お隣に住んでいる人ですら知らない、美味しいニャームクーヘンのお店というので、ビックリしつつもひっそりやっている穴場のようで、嬉しくなるルルルフとナナヤ。
「誘って」
「無理ミャろが。おミャーらのチームハウス、今知ったミャんよ」
「そうだった」
「ちなみに、隣のニャームクーヘン屋さん、人間のみお断りで、カーチェ必須ミャ」
「次、誘って」
「わかったミャ」
ほぼ単語の会話が成り立つので、やはり不思議だ。最初の言葉の意味が理解できないと、お話をできづらい。ルルルフはそう思いながら眺めていた。
「あ、そーいや、モクレン、おでかけミャんか? 引き止めて悪かったミャ」
「あ、そうですニャ。すみませんニャ」
「違う」
「あー、ゴリが酒臭いミャか」
「そう」
そして、とりあえず散歩とのことで、歩き出す。モクレンはルルルフに両手を差し出す。
「抱っこ」
「ニャ?」
「モクレン歩くの早くて、ルルルフついてこれミャーから、抱っこさせてってことミャ。一緒にお散歩ミャ」
「わかりましたニャ」
「モクレンは、ナナヤのペースに合わせろミャ」
「ナナヤがね」
そう言いつつも、モクレンはいつもの歩くペースよりは落として、ゆっくりめに歩く。
= ॑꒳ ॑ = ॑꒳ ॑ = ॑꒳ ॑ =
「ニャー……高いニャー」
モクレンに抱っこしてもらうと、視界がぐんと上がる。
脚立に登るのとは違って、ぐんぐん進む景色も不思議である。
「ナナヤは、よくゴルーダに肩車してもらってたミャ。ゴリはモクレンより大きいミャ」
「すごい高そうニャ」
そして、少し歩くと公園に着いた。
「ミャー!! これ、もしかして!」
「公園」
「ルルルフ! ナナヤ、公園ってのをしらミャくて行ってみたいって、前にモクレンに言ったことあったミャ」
「……この公園は、ルルルフも初めて来たニャ!」
住宅街の中を歩きたどり着く公園は、近所の人じゃないとわからないだろう。
散歩道があったり、ベンチがあったり、遊具があったりと、バラエティに富んだ公園で、この街ではそこそこ大きめの場所だ。
周辺に店もないため、何かのついでではなく、この公園に来るという目的がないと、近所の人以外は来ないであろう場所だ。
色々覚えたつもりでも、初めてが多い今日。新しい初めましてに、ルルルフとナナヤは頭を下げた。




