カーチェサロン ▶︎ルルルルとナナナ
「ルルルフ、とりまーってなんミャ?」
「毛を整えてくれるお仕事をしている方の事を、トリマーさんって言うニャよ」
「カーチェさろん、ってなんミャ?」
「トリマーさんが働いているお店ニャ。コックさんとレストランみたいニャ感じニャ」
ルルルフがナナヤの手を引き、人が多い街の中を縫うように歩く2匹。
「そのサロンってやつ、ルルルフはお手入れちゃんとしてるから、行く必要あるようには思えんミャ」
「ルルルフは、パック風呂に入りに行ってるニャ」
カーチェ用パックは、一般家屋では使用禁止らしい。
そのため、専用施設があると教えてもらった。
カーチェ用の住居は下水管が細いため、油分の多い一般排水は細かく規制されている。と、教えてもらうがナナヤはよくわかっていない。
「ミャー??」
「寮ではパッククリーム使うの禁止ニャ」
「わかったミャ」
トリートメントは聞いたことがあるけれど、パックはよくわからなかったナナヤ。
村にいた頃に聞いたことが無い言葉で、ルルルフが知っているという事は、街に来てから覚えたのだろうと理解した。
そして、ナナヤ自身が進んでパックをすることはないので、寮の決まり事から違反することはなさそうである。
「多分、ナナヤは実際に見た方がいいと思うニャ」
「ナナヤも、そんな気がするミャ!」
=・ω・=・ω・=・ω・=
いろんなお店が並んでいる通りの一角に、カーチェサロンはあり、ルルルフはそこへ入っていく。
オシャレな外観の建物。内装もオシャレで、ナナヤはちょっと気後れする。
「ルルルフが、すっかり街カーチェになってるミャ……」
「そんニャんじゃニャいよ、ここは……」
ルルルフは受付に向かってトテトテ歩みを進める。
受付のカーチェはルルルフに気づいて、顔を上げる。
「あんら! ルルルルじゃみゃみゃんかぁ」
恰幅のいいカーチェがにっこり笑って、声を上げる。
「こんにちはニャ、今日はお友達も一緒ですニャ!」
「あんら! ルルルルのお友達? まぁまぁまぁまぁ、よく来てくれたみゃみゃんねぇ! お名前はー?」
「な、ナナヤだミャ」
「まぁまぁまぁまぁ、ナナナね、可愛らしいみゃみゃーよ」
この受付カーチェなおばあちゃんは、人の名前に限り、同じ音が続いたあと、別の音を出すのが苦手らしい。
そのため、ルルルフやナナヤの名前はそれに当てはまり、同じ音になってしまう。
「ルルルフは毛パック風呂を、こっちのナナヤはトリミングスタンダードコースと毛パック風呂をお願いしたいですニャ!」
「わかったみゃみゃーよぉ」
ルルルフはナナヤの分も料金を支払う。
「ミャ! ナナヤのは自分で払うミャ!」
「ルルルフが誘ったから、ルルルフが払うニャ。ポイントももらうニャ」
ルルルフは財布からポイントカードも出して、スタンプを押してもらう。
「ポイント……???」
「そうニャ。お店によって変わるけど、ここはスタンプが5個貯まったら、ボタニャカル石鹸をもらえるんだニャ」
「ぼたにゃかる??」
ルルルフはすっかり街の施設をマスターしているように見えて、ナナヤはついていけなくなりそうになる。いや、ついていけてない。
「はーい、ルルルルのポイント貯まったから、石鹸渡すみゃみゃーねぇ。帰りに受付寄って欲しいみゃみゃーよぉ」
「わかりましたニャ!」
奥から人間が出てきて、挨拶をする。
「あ、ルルルフくんいらっしゃい。今日も毛パック?」
「はいですニャ。よろしくお願いしますニャ」
馴染みの店員さんらしい人と、丁寧ながらも気さくに言葉を交わすルルルフ。
店員さんはルルルフへの挨拶が終わると、ナナヤを見る。
「こちらがトリミング希望のナナヤさんだね」
「……ミャ」
よくわからず、口から音が漏れるだけのナナヤ。
「ナナヤ、トリミング初めてニャんです」
「あら、じゃあ不安いっぱいだよね。ルルルフくん、ついていてくれるかな?」
「もちろんですニャ」
そして、店員さんの後をついていく。
途中で店員さんと別れ更衣室に寄り、服をカゴに入れて、カゴを扉付きの棚に入れる。
「あ、これお風呂屋さんでみたロッカーだミャ」
「ここは、お手入れ付きお風呂屋さんみたいなとこニャ」
知っている物を目にして、少し安心度が上がったナナヤ。
同じロッカーに服をしまい、ルルルフが木札の鍵を持ってくれた。
入った扉と違う場所から出るが、お風呂屋さんもそうなので、ナナヤはビクビクすることなくお風呂屋さん気分になっている。
扉の先には先ほどの人間がスタンバイしていて、その前には広めの桶が置いてあって、ナナヤを桶の中へ促す。
「ミャ……」
桶の中に入ると、15センチほどお湯が張ってあった。
「座っていいですよー」
「ミャ!」
「まず、全体にお湯をかけて毛を濡らしますね」
「わかったミャ!」
毛を濡らしたら、シャンプーが始まる。ひとつひとつ丁寧に声掛けしてくれるので、ナナヤは次の行程が分かり、安心しながら身を任せている。
ルルルフが目の前に座って、見守ってくれているからさらに安心感があり、毛が膨らむこともなく、リラックスした様子に、店員さんも安心している。
「ブラシかけながらシャンプーしていきますねー。多分、ちょっと引っ張る感じが強いので、桶のふちを持っていてください」
「わかったミャ」
ぎゅっと桶のふちを握って、ナナヤはスタンバイ。その上にルルルフの手がやってきて、ナナヤの手の甲をポンポン叩いている。
「んミャミャミャーーー」
絡まっている毛をブラシで梳いていると、どうしても引っ張られがちになるので、後ろに倒れそうになりながらも、踏ん張るナナヤ。
「痛かったら、言ってくださいね」
「大丈夫ミャーミャミャミャー」
頭、背中、尻尾のブラッシングシャンプーが終わり、お腹や腕、足も同じように引っ張りに負けないように、踏ん張りながらやってもらった。
ナナヤは力持ちなため、ビクともしないけれど、引っ張られるビックリは感じているようだ。
「一旦シャンプー流しますねー」
「わかったミャ」
桶についている栓を抜くと、お湯と泡が流れていく。そして空っぽになったところで再び栓を閉じ、シャワーをナナヤへかけていく。毛についている泡が落とされ、そのお湯が桶に溜まっていく。
「んミャー!?!」
「ニャー!!」
桶の中を見たルルルフは、驚きで毛が膨らんだ。
ナナヤも驚いたけれど、ベシャベシャの毛なので、ほぼ膨らまなかった。




