ルルルフ ▶︎馴染みのお得意様
家政カーチェとして働き3ヶ月が過ぎ、ルルルフの指名もちらほら出てくる。
本猫はまだまだ見習いだと思っているが、仔カーチェにしてはマルチで能力が高めという、対応できる業務が多岐に渡る家政カーチェは、ギルドにとって、とてもありがたい存在である。
「ルルルフは、この家政業専門でやりたいー、とか希望はないニャグ?」
「特にニャいですねー……」
先輩家政カーチェと、業務前のおしゃべりをするルルルフ。
お裁縫、炊事、お洗濯、簡単な大工作業を受け持つルルルフ。そろそろ好きなジャンルが出てくるかと思い、訊いてみた先輩カーチェは、びっくりする。
「ルルルフ、突出して得意ですって言えるのがニャいので、専門的にってのは無理ですニャ」
まだまだ自己評価が低めに思える発言。先輩カーチェが口を開こうとすると、ルルルフは言葉を繋げる。
「でも色んなこと出来る家政カーチェって評価をしてくれた、家政カーチェギルドのおかげで、ちょっと自信つきましたニャ。それなりに出来るので、色んなお仕事につけますニャ」
お仕事をする場では、村のおとなのようにお世辞・贔屓目が発生してしまうなんて事はないため、ルルルフはきちんと能力が認められる働きをしているようだと、自信を持てていた。
「そうニャグね、色んなジャンルでお仕事も楽しいニャグよね」
「はいですニャ!」
始業時間になり、先輩と今日の依頼を確認しに行く。
指名カーチェ無しの依頼が束ねてある依頼書を見ようとしたら、ルルルフはアネイゴに引っ張られた。
「ルルルフは指名が入ってるにゃーよ。そろそろ指名側から見る癖つけにゃーさい」
「あ、アネイゴ先輩おはようございますニャ。クセつけるように頑張りますニャ」
「おはようにゃーよ」
ルルルフは指名依頼の紙を手渡され、中身を確認する。
「あっ、ホルスさんですニャね」
「この人の指名、けっこう入るけど、お気に入りにゃーのかな……?」
「ホルスさん、お部屋も綺麗だし家事もそれなりにしてるし、家政カーチェはいらニャさそうな感じニャんですけどね……」
そう言いながら、ルルルフは大工道具を取り出して準備する。
「迷いなくその道具を取るって、どういうことにゃーよ?」
「ホルスさん、家具付きのお家を借りてて、家具も前の住人さんの物のまま使っていて、手入れが出来てニャいんです」
粗悪まではいかないけれど、それなりに質の悪い家具で、ルルルフがその家具を手入れしているそうだ。
「大工さんや家具屋さんに頼むまでもニャい、面取りとか表面のカンナ掛けとか、ヤスリとか、ちまちま整えるやつを、ルルルフがしていますニャ」
本職に頼むには気が引ける家具ということで、素人仕事で構わないと家庭大工が出来るカーチェを依頼したら、ルルルフが来てくれたので、そのまま様々な家具のメンテの依頼が、指名で入るようになったそうだ。
「あたいには出来にゃーお仕事内容でも、ルルルフは出来るんにゃーね、すごいにゃーよ! しかも指名!」
「えへへ……ルルルフ指名でのお仕事もらえて嬉しいですニャ」
オトナより出来る事があったら、こどもは嬉しくなるし、頑張りたいとも思えるだろう。褒められたら尚更だ。
しかも、指名依頼だ。やる気もわいてくるだろうと、アネイゴや周りの先輩たちも、ニコニコしてうなずく。
ルルルフは天狗になるタイプではないため、周りも安心してルルルフの喜びを見守っていた。
「それじゃあ、行ってきますニャ!」
「「「行ってらっしゃい」」」
ルルルフが短めの尻尾をゆらりゆらり振って歩いて行くので、みんな安心して見送った。
「さて、あたいも行くかにゃー」
「うちも行くニャグ」
そして、バタバタと家政業務に出かける家政カーチェたち。家政カーチェギルドは閑古鳥が鳴く事はなく、それなりに忙しい。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「ホルスさーん、おはようございますニャ! 家政カーチェギルドのルルルフですニャ」
ドアベルを鳴らして声をかける。
依頼主のホルスが扉を開けて出迎えようとしたが、今日はなかなか扉が開かない。
「あ、あれ? え?」
いつもは外側に向かって開いてくる扉が、ガタガタと縦に揺れる状態ながら、扉を挟んで会話する。
「あニャ……扉の枠がひしゃげていますニャ。流石にこれは、ルルルフじゃ直せないですニャ」
「えー?! こっちから見たらなんともないのに……。流石にこれは大家さんに言わないとだね」
ガタガタ扉を揺らしていたが、諦めたようで扉からの音はなくなる。
「ルルルフくん、庭に回ってもらっていい?」
「わかりましたニャ」
窓は開くため、庭にて合流するルルルフとホルス。
「大家さんの所に行ってきてもらっていいかな……」
「わかりましたニャ。おうちの扉が使えニャくて窓からの出入りだと、お留守にするのは怖いですニャよね」
「うん……」
大家さんの家の地図や手紙を用意してもらい、言伝の内容を確認しあう。
「それでは、大家さんのところ行ってきますニャ」
「ごめんね、依頼内容変わっちゃって……」
「おうちのこと、ですニャ。家政業務にニャります」
ルルルフは大工道具を置かせてもらって、お使いに出た。
そして、大家さんにホルスからの手紙を渡して、大家さんはすぐ大工を手配してくれるという。
「わざわざありがとうね」
「いえいえですニャ。それではルルルフは戻りますニャ」
大家さんの大工手配は、ホルスからの依頼ではないため、ルルルフは依頼主の元へ戻る。
そして、今日の予定通りである、家具メンテナンスをして、時間になったら業務終了だ。
「依頼追加・変更届けも確かに受け取りましたニャ」
「うん、間違いないか確認よろしく」
「大丈夫ですニャ」
事前の依頼内容から、著しく異なった状態となっており、変更届が必要な場合は、こうして書類を書いて貰えば、お得意様なら料金の増減をギルドで計算してくれる。
イレギュラー対応も覚えてきたルルルフ。
きちんと届出書を忘れずにいた事に安堵する。
=・ω・=・ω・=・ω・=
「戻りましたニャー! 依頼追加・変更届けの処理をお願いしますニャ」
「おかえり、ルルルフ。おや、なんかトラブルあったのかい?」
「依頼主さんのおうちのドアが壊れましたニャ。そこで、今日の業務にニャかった、大家さんへのお言伝てが発生しましたニャ」
ルルルフに危険が生じたものではなく、安心して事務方は変更届を受け取った。
「あ、そうそう。差し入れが届いてね、ボリーボリーベリーっていう、この街では手に入りにくいドライフルーツを頂いたんだ。ルルルフも持って帰って食べな」
「はーいですニャ。ありがとうございますニャ」
差し入れが置いてある休憩室へ行くと、大きな木箱が鎮座していて、先輩カーチェが紙袋にザバザバとベリーを入れて、お持ち帰り用として、みんなの分を取り分けていたので、ルルルフはお手伝いをする。
休憩室の棚に、たくさんの紙袋が詰め込まれて、ルルルフもその紙袋をひとつもらって帰ってきた。
「ただいまでーすニャ」
寮に帰ってきたルルルフは、管理カーチェさんから荷物が届いているので、部屋に運んでおいたと言われ、お礼を言って部屋に戻ると、部屋には大きな木箱が鎮座している。
既視感のある大きな木箱――と思いながらも、ナナヤからの手紙がついていたので、先に読む。
「……紙袋いっぱいにもらったやつよりも、もっとたくさんなベリーが届いたニャ……」
【手紙の中身】
ルルルフへ
ボリーボリーベリー、あげるミャ! とっても美味しいミャん!
半分、ナナヤに取っておいてほしいミャ。
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ルルルフ「半分ですらとっても多いニャ……」
【tips】
木箱の大きさ→1メートルの立方体
(31話 ナナヤ ▶︎気がつけば……より)
ルルルフの身長→50センチメートル
(20話 ルルルフ ▶︎実地研修1)




