ナナヤ ▶︎タグ払い
「おミャーら、本当にハンターなんミャ?!」
間違いなく実力はトップクラスで、そこらのモンスターなんて無傷で倒せるくらいの強さを誇る、ハンターたちの憧れでもある2人。
だが、ナナヤはそこではなく、ハンターギルドの仕組みを知らないことに驚いて出した声だ。
「「ほら」」
国に2人しかいない虹星ハンターのタグが、キラリと輝く。
資格証の事では無いながらも、それを説明するならゆっくり腰を落ち着けたいと思ったナナヤは、シャカシャカと頭をかいて一息吐いてから、次の言葉を出す。
「ちょっとご飯食べながら説明するミャ」
「「おう」」
「おすすめはどこミャ?」
「こっち」
どうせなら美味しいご飯を食べたい。この2人の選ぶご飯屋さんはハズレた事がない。
それに、いくつもあるオススメの中でも、カーチェ用の椅子が置いてあるお店を選んでくれる優しさもある事に気づいている。ナナヤが信頼するのは、当然であった。
おすすめのお店にやってきて、着席すると店員さんが注文を訊きにやってくる。
「いらっしゃいませー、お決まりですか?」
「ここ、ハンタータグ使えるミャ?」
「できますよー」
「じゃあナナヤの、もりもりピッピバーガーと、お肉ゴロゴロヴォルルフサラダは、タグ払いをお願いするミャ」
「かしこまりましたー、タグ拝見しますねー」
ナナヤはハンタータグを出して、店員はハンター証に書かれてあるハンター証番号を控える。
その様子を、ゴルーダとモクレンは目を瞠り見ていた。
「ギルドにお金預けていると、こういうこともできるミャん」
ナナヤは自分のハンタータグを見せる。
「ハンター番号の下に、ゼニゼニのマークあるミャ。これがギルドにお金預けているやつの証ミャ」
ゴルーダとモクレンは自分のハンタータグを見るも、ゼニゼニのマークはない。
お金を預けると、マークを刻んでくれるそうだ。
「もちろん、ギルドにどのくらいのお金を預けているか、ぼんやり覚えておかミャーといけないけど、銅ランクのナナヤは、1度に使えるお金が2000ゼニゼニまでミャ。ギルドには、1回2000ゼニゼニ以上預かってもらうから、使いすぎることはないミャ」
もし、預け金よりも多くタグ支払いをしてしまった場合は借金となり、ギルドに立ち寄った際に支払う、もしくはクエスト完了時の報酬から引いてもらうなどで、きちんと精算しなければならない。
細かな計算ができないが、お金を預けたら、お買い物するのは3回まで、1度に使うのは最大1000ゼニゼニまで。とざっくり自分の中でルールを設けているナナヤ。
次にお金を預けるときまで、お買い物はしない。こうやって大雑把ながらも、お金の管理をしていた。
「知らなかった」
「うん」
そんなシステムがあったのか……と、ゴルーダとモクレンは驚いていた。
「きっと、このシステムは最近できたんだな……。俺らがハンターになった頃には、無かったんだろう……」
ゴルーダの言葉にモクレンも頷くが、ナナヤはふるふるっと顔を振る。
「30年前にできてる制度ミャ。おミャーら30歳にもなってミャいだろが!」
きちんとお勉強はしているナナヤ。簡単な言葉でゆっくり教えて貰えば理解できる。
わからないことは、もっと噛み砕いた説明をしてもらうよう、自分が理解できるまで質問をするようになっていた。
「すげーな……そんなシステムあったなんて……」
「驚き」
後輩ハンターの方がしっかりしている。そんな面もハンターをやっていたら出てくるが、今まで知り合った者たちは、誰もタグ支払いをしてこなかった。
ゴルーダ・モクレンはハンターになって10年以上経つが、未だに学ぶこともあるんだなぁと感心してしまった。
「あんまりタグ払いする奴いミャーのよ、って言われるミャ。説明聞き逃してるやつ、いっぱいいそうミャ……」
「多分ね」
ゴルーダとモクレンは現金払いで注文して、みんなでご飯タイムだ。
= 'ч' = 'ч' = 'ч' =
「ナナヤ、銀ランク」
モクレンが短く言う。
「ナナヤにはまだ無理だと思うミャ。まだ仔カーチェで、バカにされることも多いミャ」
一緒にいる時間が長くなり、モクレンの単語が放つ意味も理解できることが増えたナナヤ。
問いの答えを返す。
「あー、王都に戻る頃には、銀になれてるかもしれねぇぞ」
「ミャー??」
ゴルーダの言葉に首を傾げるナナヤ。
自動で上がるものではないし、昇級実績を作った覚えもない。
「クエスト達成時とかに、色々報告しているんだ」
「初耳ミャん」
先ほど、ベベベルガを単独狩猟したことも報告してある。虹星ハンターというランクの報告という信頼のもと、処理されているらしい。
「もちろん、俺らは嘘をつかないから、疑われることもない」
「実力に正直」
この2人、仔カーチェだからと甘やかすことはないのだ。
一応先輩としての指導も、一般ハンターから見るとスパルタレベルでしている。難しい説明をしないぶん、ナナヤには分かりやすく、色々吸収しているのだ。理論や理屈ではなく、体で覚える方だが。
「まだ、足りないミャー。……追加で頼むミャ!」
「サイブロス丼」
「よし、そうするミャ!」
モクレンからオススメを教えてもらって、ナナヤはまた注文をする。1度ハンタータグは見せているので、店員さんは、これもタグ払いでいいかという、口頭確認だけだった。
「便利そうだな、タグ払い」
「お金預けよ」
後輩から学ぶ。それもまた生活の中であるだろう。
己が知らない事も、受け入れるゴルーダたち。
「うミャー!! モクレン、こんな秘蔵メシ知ってるミャんて! 教えてくれてありがとミャ!」
「とっておき」
サイブロス丼はメニューにはない、いわゆる裏メニュー。
ナナヤに裏メニューも教えるほど、心を許している証でもある。
寡黙なモクレンだし、単語会話が多いが、ナナヤと行動するようになってからは、発する言葉が増えていて、変化を感じているゴルーダは、嬉しくなり口角を上げる。
「ゴリの笑顔、なんか不気味ミャ」
「キモゴリ」
「ゴリじゃねぇ!!」




